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第8章 冬が来る前に

エピソード47-47

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国分尼寺魔導高校 生徒会室――

 オークションが終わり、睦美の計らいで絵を落札したココナとその関係者たちが、生徒会室に通されていた。
 静流はHR後に生徒会室に行くよう、ムムちゃん先生に言われていた。

「「「失礼しまぁす」」」

 ドアが開き、静流、シズム、真琴が入って来た。

「「「きゃあん♡ 静流様ぁ~!」」」

 静流の顔を見た萌たちが、黄色い声を上げた。

「あれ? ミオ姉、佳乃さん、萌さん、美紀さん、真紀さん……イク姉、ルリさんに、ココナさんまで!?」

 ひとりひとり顔を確認し、ココナたちが来ている事に違和感を覚えた。 

「や、やぁ、静流殿。 また会ったな」
「ん? 待てよ、そんなはず……」

 静流は腕を組み、今の状況を整理した。

「やっぱおかしいよ。イク姉、どうやってココに来たの?」
「そう! そうなのよ静流クン! 私もそこに気付いた。 ダーナオシーとココじゃ時差があって、【ゲート】を使っても、オークションに間に合うはず無いのよ!」

 澪は、静流と意見が合った事で、ドヤ顔で疑問点を指摘した。

「ミオ姉が言った通り、ありえないんだよ、 イク姉!」
「それはな、静流。 私たちは『時空』を超えて来たのだ!」ビシッ!

 郁はそう言って、校庭の方を指し、決めポーズをとった。

「『時空』って、まさか……」
「そう。私たちは【ワープ】を使い、時間をもさかのぼって来た、と言う事だ!」ビシッ!

 郁はまた決めポーズをとった。

「静流様、こちらに注目ですよ。むふぅ」

 ルリはノートPCを立ち上げ、静流の方に画面を向けた。

〔よう静流! 任務達成だぞ、喜べ!〕
「メルク? って事は、組み上がったの? MT」
〔おう! バッチリ組み上がったぞ!〕

 画面に二体めのメルクが出て来たのに、静流は驚いた。

「あれ? メルクが二体いる?」
〔ああ。都合上分離した。 今はメルクとリア、そう名乗っている〕

 そんなやり取りをしていると、首に巻き付いて休止状態だったオシリスが、いきなり不可視化を解いた。

「ん? おかしな反応があると思ったら、何なのコイツら」
〔お前こそ何じゃ? いきなり現われおって〕
「私は有能な静流の相棒、オシリスよ」
〔何じゃ、ブラ公と同じしもべか。ワシは静流の親友、メルクとリアじゃ!〕

 メルクたちは、画面の中で両手を腰に当て、ふんぞり返っている。

「親友、ですって? 本当なの? 静流?」
「二、三日で親友レベルに昇格出来るかは置いといて、それに近い関係だとは思うよ」
「その根拠は?」
「だって、『主従契約』してないから。オシリスとブラムは契約したでしょ?」
「た、確かに……」

 静流に論破され、うかつにも納得してしまうオシリス。

〔それ見た事か。ワシはな、お前やブラムとは違う。五分の盃じゃぞ! ホッホッホ〕
「メルク、物騒な表現止めて。盃なんて交わしてないから」

 静流はすかさず否定した。

「何かむかつく、きぃー! ん? よく見るとアナタ、ドラゴン族の子かしら?」
〔元、な。肉体はとうに滅びた〕

 オシリスは何かを思い出そうとしている。

「ちょっと待ってよ、遠い昔、ブラムちゃんから聞いた事がある。岩みたいに硬いドラゴンがいるって……」
〔フン、知っておったか。いかにも、ワシは……〕
「そう! 岩石イワオ! アナタそうでしょう?」

 ブラムは手をポンと叩き、思い出してスッキリした顔をした。

「違う! ワシはメルクリアじゃ!」

 オシリスとメルクたちは、勝手に話を始めた。

「私も魂だけになって、この器に受肉したクチなのさ。ちなみに元、精霊族なの」
〔精霊族だと? 絶滅危惧種じゃろうが?〕
「色々あってね。静流がお世話になった様ね。ありがとう」
〔そう言う事だ。これからもよろしく頼む〕

 どうやら打ち解けたようだ。

「メルク、じゃあここにはあの機体で来たの?」
〔うむ。自分の目で見るがイイ。そこの運動場にあるじゃろ?〕

 メルクにそう言われ、静流は校庭を見渡すが、それらしき物は見当たらなかった。

「ん? ドコにあるの? わかんないよ」
「無理も無い。『不可視モード』で待機させているからな」

 キョロキョロ見ては首を傾げている静流に、ココナが声をかけた。

〔静流、お主のメガネに、『光学迷彩キャンセラー』が付いておろう? 使ってみろ〕
「そんな事、何で知ってるの? これかな?」クリ

 静流がそれらしきボタンを操作するが、特に変わった事は起きなかった。 
 依然キョロキョロしている静流に、メルクが言った。

「んと、何も見えないけど?」
〔上じゃ、上!〕

 メルクに言われ、上を見た瞬間、静流は度肝を抜かれた。

「えっ上? うわぁっ!? う、浮いてる?」

 空中に、大小二機のドラゴン型MTが空中で待機していた。
 ココナの機体は、全高6mの静流の機体より一回り大きく、10m程の大きさであった。

「うわぁ……思ってたのより、大きいな……」
「何分目立つのでな。領空に入る許可は少佐殿がとってくれたが、それが有効になるのはあと数時間後だろう」

 ココナの補足を聞きながら、食い入るようにMTを見つめている静流。

「壮観だな……見たまんま、メカドラゴン、ですね」

 目をキラキラさせながらMTを見ている静流に、ココナが声をかけた。

「そうだ静流殿、アイツに名前を付けてくれないだろうか?」
「えっ? 機体の名前、僕が付けてもイイんですか?」
「是非ともお願いする。好きにするがイイ」

 ココナにそう言われた静流だが、悩む様な仕草は無く、真っ直ぐにココナに向かって言った。

「これを見た時、ピンと来たんです。『ラプロス』一択でお願いします」
「ふむ。由来を聞いても?」
「大昔の漫画に、陸海空のしもべを従えた超能力ヒーローものがありまして、そのイメージが浮かんだんです」
「ああ、『ビビル4世』からひねったのですね? 空を守護する者『ラプロス』イイじゃないココナちゃん、頂いちゃいましょう♪」

 静流の提案に、ルリがノリノリで賛成したので、ココナは大きく頷いた。

「よし! 静流殿の機体は、私の機体より前に製造されたものであるから『ラプロス零号機』とし、私の機体は『ラプロス壱号機』としよう」

 自分の案があっさり通ったので、静流は満面の笑みを浮かべた。

「うわぁ、素直に嬉しいです!」パァァ

「「きゃっふぅぅ~ん♡」」

 ココナとルリは、静流の渾身のニパをまともに食らい、大きくのけ反った。

「くはぁ、たまらん」
「はぁぁ。癒されるぅ……」

「よかったじゃない静流。アンタのネーミングセンス、壊滅的だもんね」
「べースがあったからよかったんだ。一発で採用なんて、信じられないよ」

 真琴にそう言われ、後頭部を搔きながら照れる静流。
 和やかなムードだった生徒会室であったが、突然ドアが勢いよく開いた事で、一同に緊張が走った。バァン!

「むっ、何者だ!?」

 入って来たのは、フード付きローブに身を包んだ、四人の女性らしき者たちであった。
 その一人が、ココナを指さし、叫んだ。

「エロ将校! どうしてアンタがココにいるの!?」
「ん? お前は……」

 フードからチラッと見えた顔に、ココナは見覚えがあった。 
 静流はこの四人がすぐにわかった。

「忍ちゃん!? と、お姉様たち?」
「静流ぅ、やっと会えたわぁ♡」むぎゅ

 薫子は、静流と目が合った瞬間に静流に飛びつき、抱きしめていた。
 あまりの早業に、真琴は驚愕した。

「薫子さん!? いつの間に?」
「薫子お姉様、く、苦しい……」
「ああ、ずぅっとお預けだったのよぉ? 暫くこのままでお願ぁい♡」むぎゅう

 静流の抵抗もむなしく、薫子は周りにお構いなしに静流を抱きしめた。

「静流ぅ、静流ぅ」
「薫子!? ズルい!」

 忍は薫子に負けじと、静流に抱き付いた。

「ふぐぉ!?」

 睦美は四人が入室して来た事に、特に驚いた様子もなく挨拶した。

「お姉様方、ようこそ生徒会室へ」
「おうムッツリーニちゃん! さっきの司会、サマになってたぜ!」
「お褒め頂き、恐縮です。リナお姉様」
「睦美、静流さんの『自画像』、この方が落札されたの?」
「はい、雪乃お姉様。こちらの竜崎ココナ様が落札されました」

 睦美は雪乃にココナを紹介した。
 もがいていた静流が、驚きの声を上げた。

「ええ!? あの絵をココナさんが!?」
「ああ買ったぞ! キミの絵を!」
「正確には、自画像じゃなくて、似顔絵なんですけどね……」

 静流は、恐る恐るココナに聞いた。

「それで、いくらで買ったんです?」
「なぁに、ほんの一千万円だ!」


「「「へ? ええ~っ!?」」」


 落札金額を知らなかった、静流、真琴、シズムは、一千万円という金額に驚きを隠せなかった。
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