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第8章 冬が来る前に
エピソード47-32
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ワタルの塔 2階 応接室――
メルクが消滅する前に、静流のUSBメモリーに何かを残した。
ノートPCのスロットに、静流のUSBメモリーを挿しすと、液晶画面が眩く光ったのち、見慣れないアイコンが出来ていた。
「こんなアイコン、さっきまで無かったわよね? 起動してみて?」
「は、はい」カチカチ
アマンダに言われ、アイコンをダブルクリックした静流。
ソフトが立ち上がった。ソフトの名称は、『ポケットクリーチャー シャイニングブラックパール』とあった。
「ポケクリ? シャイニングブラックパールなんて、シリーズにあったかな?」
とりあえずデモ画面を見ていると、表面がゴツゴツした岩系ポケクリがひょこっと出て来た。
〈よう静流! また会ったな!〉
「あ、しゃべった。今、何て?」
〈まだわからんか? ワシじゃ、メルクリアじゃ!〉
「「「ええ~っ!!」」」
静流を始め、みんなが度肝を抜かれた。
「メルク、消えたんじゃなかったの?」
〈そう思ったのじゃが。未練があったのじゃろうな〉
「未練?」
〈うむ。お主じゃ。ワシはお主の行く末を見とうなった〉
「でも、何で『ポケクリ』なの?」
〈お主が言っていたであろう? 昔遊んだ、とな〉
ココナの夢の中で静流が語っていた事を、メルクは覚えていたらしい。
「何でもイイや。また会えて嬉しいよ。メルク」パァァ
〈これからは、ワシが全力でサポートする。ブラムなんぞよりはるかに頼りになるからの! ホッホッホ〉
画面にいるメルクはお腹を押さえて爆笑していた。
それを見ていたブラムは、ブチ切れる寸前だった。
「ぐぬぬ、メルクめぇ! うりゃああ!」パァーッ
ブラムの全身が光ると、身体が小さくなり、液晶画面に吸い込まれて行った。
画面の中に入ったブラムは、デフォルメされたブラックドラゴンであった。
〈シズル様はウチのましゅたーなの!〉
〈来やがったな、ブラ公! やるか!?〉
見ている者を置き去りにして、いきなりバトルを始める二匹。
ゲーム関連に詳しいリナが、静流に聞いた。
「静坊、ブラムって、何系ポケクリなんだ?」
「属性はブラックだと、『闇』かな?」
「ポケクリに『闇属性』なんて、聞いた事無ぇぞ?」
とうとうバトルに発展し、ブラムが先手を取った。
〈先手必勝! 行くぞぉ、【ホルム・アルデヒド】!〉
〈ぬるいわ! どこを狙っておる?〉
ブラムが口から放射した毒霧を、すんでの所でかわすメルク。
〈ワシのターンだ。食らえ!【メルクビーム】!〉
〈そんなの当たらな、ウギャ!? 曲がった!?〉
メルクが放った光線は、屈折してブラムの尻尾を焼いた。
〈あちちち、やってくれたな? 次はウチのターン!【トリクロロエチレン】!〉
〈くっ! やりおるな、ならばこうだ!〉
最早、格闘ゲーの様な展開になっている。
「長そうだから、食堂で朝ごはんにしましょうか?」
「そうですね。仲良く遊んでるみたいですし」
ギャラリーがいなくなっても、暫くバトルは続いていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ワタルの塔 2階 食堂――
ノートPCの中で遊んでいるブラムたちを放置し、朝食を摂る面々。
ココナはまだ目が覚めないので、手術台に寝かせておいた。
「ぐひひひ、ふにゃぁ、スー、スー」
ココナは緩みっぱなしの顔で、時折奇妙な薄笑いを浮かべて寝ていた。
ケイの呟きに、カチュアと忍がくだを巻いた。
「姫様、また変な病気にかかったんじゃないの?」
「あり得るわね。だって『実物』にあんな事しちゃったんだもん」
「天罰。イイ気味」
呆れ顔のアマンダが、ため息混じりに言った。
「意識レベルは正常。大丈夫よ」
静流が気になった事をアマンダに聞いた。
「アマンダさん、メルクが消滅しちゃったら、ココナさんの義足はどうするんですか?」
「そうね。とりあえず一般兵士用のものを使ってもらう事になるわね……」
そんな事を話していると、アマンダはふと思った事をカチュアに聞いた。
「姉さん、欠損した部位の再生って、そう難しくは無いわよね?」
「確かに。ただ欠損部位の修復は時間との勝負なの。この子のは時間が経ち過ぎてる。数年前となると、かなり難しいわね」
「欠損部位の再生なら、ケイちゃんの十八番よね?」
アマンダとカチュアの会話に、ジェニーが割り込んだ。
「ケイちゃんの【復活】はスゴいんですよ! 『無』から細胞を再形成出来るんですから」
「ほう。それは興味深いわね」
ルリの説明に、アマンダは手を顎にあて、何か考え始めた。
「で、でも太刀川から帰って来てすぐに試したんです。結果は失敗でした……」
ルリに持ち上げれてたケイだったが、もう試して失敗している事を告げる。
「オチビ、アンタの【修復】は、時間をさかのぼって復元するのよね?」
「そうだな。それが何か?」
暫く考え込んでいたカチュアが、ニヤリと微笑した。
「フム……オチビの【修復】と、これまたオチビの【復活】か。ミックスしたら、面白い事になりそうね?」
「何ぃ? 本気か?」
「ナイスよ姉さん! 試してみる価値はありそうね。そうだ、シズルカ様の【祝福】でさらにブーストを掛ければ……」
うんうんと頷きながら、アマンダはポンと手を叩いた。
「イケるかも知れない! そうと決まればすぐに準備よ!」
「了解!」
◆ ◆ ◆ ◆
ワタルの塔 4階 医務室――
食堂から戻って来た面々は、直ちにココナの治療にかかる。
「よく寝てる。やるんだったら今よ!」
「「「了解」」」
先ずは静流がシズルカに変身する。
「静流、折角だ。気合の入ったアレ、見せろ」
「ええっ!? 変身ポーズ、ですか?」
郁は静流に無茶ぶりした。
「私も見たぁい!」
「是非、お願いします」
部下たちは、デパートの屋上でやるアトラクションを見ている子供の様に、目をキラキラさせている。
「しょうがないですね、では」
静流は構えをとり、呼吸を整え目を閉じる。
その後、ぱっと目を開き、腕を振って風を腰のベルト付近に送るような動作を行う。
ポーズが決まり、【セタップ!】と叫んで腕の操作盤をいじった。
パァァァ!
桃色のオーラに包まれて、ビキニアーマーを装着した『戦乙女神シズルカ』が顕現する。
「コレが生の女神様ですか……素晴らしい」
「見てるだけでも、心が浄化されていくみたい」
シズルカを肉眼で初めて見る夏樹と瞳は、小さく感嘆の声をあげた。
「そう、コレなの! 太刀川で会った時とおんなじ!」
そう言ってケイは、脇をパタパタさせた。
静流の準備が整ったので、アマンダが指揮を執る。
「静流クン、準備はイイわね。そしたら二人に【祝福】を与えて!」
「はい! 【メテオ・ブリージング】!!」ファァァ
静流は手を三角に結び、二人に桃色のオーラを放射した。
「魔力がふつふつと沸き上がっていく……」
「スゴい! 今なら何でも出来そう!」
【祝福】を浴びた二人は、ココナの右足に集中した。
その間も静流から桃色のオーラを浴び続けている。
「よし、先ずは郁、【修復】を掛けて!」
「行くぞ!レストレーション【復元】!!」パァァ
郁の掌から金色のオーラが放出され、右足付近に照射される。
「次にケイ、【復活】を掛けて!」
「行きます! レザレクション【復活】!!」パァァ
ケイの手から、水色の霧が発生し、右足付近にその手をかざす。
すると、ココナの右足付近が金色に光り出した。
この状態が数分続き、二人に疲労の兆候が見えて来た。
「くぅぅ!」
「まだか!? 少佐!」
「まだよ。もう少し頑張って!」
静流は二人の頑張りに応えようと、【祝福】にさらに魔力を注いだ。
「うぉぉぉぉ!」パァァァ!
すると桃色のオーラがココナの右足に届き、金色の光がさらに増し、やがて部屋中が光り出した。
パァァァァァ!
「くっ!眩しい」
「目視出来ない! 状況はどうなってるの!?」
数分後、光が収束し始めた。収束していく先は、ココナの右足付近だった。
視力が戻り出したアマンダが、ココナの右足付近を見た。
「足が……再形成されている。 成功よ!!」
メルクが消滅する前に、静流のUSBメモリーに何かを残した。
ノートPCのスロットに、静流のUSBメモリーを挿しすと、液晶画面が眩く光ったのち、見慣れないアイコンが出来ていた。
「こんなアイコン、さっきまで無かったわよね? 起動してみて?」
「は、はい」カチカチ
アマンダに言われ、アイコンをダブルクリックした静流。
ソフトが立ち上がった。ソフトの名称は、『ポケットクリーチャー シャイニングブラックパール』とあった。
「ポケクリ? シャイニングブラックパールなんて、シリーズにあったかな?」
とりあえずデモ画面を見ていると、表面がゴツゴツした岩系ポケクリがひょこっと出て来た。
〈よう静流! また会ったな!〉
「あ、しゃべった。今、何て?」
〈まだわからんか? ワシじゃ、メルクリアじゃ!〉
「「「ええ~っ!!」」」
静流を始め、みんなが度肝を抜かれた。
「メルク、消えたんじゃなかったの?」
〈そう思ったのじゃが。未練があったのじゃろうな〉
「未練?」
〈うむ。お主じゃ。ワシはお主の行く末を見とうなった〉
「でも、何で『ポケクリ』なの?」
〈お主が言っていたであろう? 昔遊んだ、とな〉
ココナの夢の中で静流が語っていた事を、メルクは覚えていたらしい。
「何でもイイや。また会えて嬉しいよ。メルク」パァァ
〈これからは、ワシが全力でサポートする。ブラムなんぞよりはるかに頼りになるからの! ホッホッホ〉
画面にいるメルクはお腹を押さえて爆笑していた。
それを見ていたブラムは、ブチ切れる寸前だった。
「ぐぬぬ、メルクめぇ! うりゃああ!」パァーッ
ブラムの全身が光ると、身体が小さくなり、液晶画面に吸い込まれて行った。
画面の中に入ったブラムは、デフォルメされたブラックドラゴンであった。
〈シズル様はウチのましゅたーなの!〉
〈来やがったな、ブラ公! やるか!?〉
見ている者を置き去りにして、いきなりバトルを始める二匹。
ゲーム関連に詳しいリナが、静流に聞いた。
「静坊、ブラムって、何系ポケクリなんだ?」
「属性はブラックだと、『闇』かな?」
「ポケクリに『闇属性』なんて、聞いた事無ぇぞ?」
とうとうバトルに発展し、ブラムが先手を取った。
〈先手必勝! 行くぞぉ、【ホルム・アルデヒド】!〉
〈ぬるいわ! どこを狙っておる?〉
ブラムが口から放射した毒霧を、すんでの所でかわすメルク。
〈ワシのターンだ。食らえ!【メルクビーム】!〉
〈そんなの当たらな、ウギャ!? 曲がった!?〉
メルクが放った光線は、屈折してブラムの尻尾を焼いた。
〈あちちち、やってくれたな? 次はウチのターン!【トリクロロエチレン】!〉
〈くっ! やりおるな、ならばこうだ!〉
最早、格闘ゲーの様な展開になっている。
「長そうだから、食堂で朝ごはんにしましょうか?」
「そうですね。仲良く遊んでるみたいですし」
ギャラリーがいなくなっても、暫くバトルは続いていた。
◆ ◆ ◆ ◆
ワタルの塔 2階 食堂――
ノートPCの中で遊んでいるブラムたちを放置し、朝食を摂る面々。
ココナはまだ目が覚めないので、手術台に寝かせておいた。
「ぐひひひ、ふにゃぁ、スー、スー」
ココナは緩みっぱなしの顔で、時折奇妙な薄笑いを浮かべて寝ていた。
ケイの呟きに、カチュアと忍がくだを巻いた。
「姫様、また変な病気にかかったんじゃないの?」
「あり得るわね。だって『実物』にあんな事しちゃったんだもん」
「天罰。イイ気味」
呆れ顔のアマンダが、ため息混じりに言った。
「意識レベルは正常。大丈夫よ」
静流が気になった事をアマンダに聞いた。
「アマンダさん、メルクが消滅しちゃったら、ココナさんの義足はどうするんですか?」
「そうね。とりあえず一般兵士用のものを使ってもらう事になるわね……」
そんな事を話していると、アマンダはふと思った事をカチュアに聞いた。
「姉さん、欠損した部位の再生って、そう難しくは無いわよね?」
「確かに。ただ欠損部位の修復は時間との勝負なの。この子のは時間が経ち過ぎてる。数年前となると、かなり難しいわね」
「欠損部位の再生なら、ケイちゃんの十八番よね?」
アマンダとカチュアの会話に、ジェニーが割り込んだ。
「ケイちゃんの【復活】はスゴいんですよ! 『無』から細胞を再形成出来るんですから」
「ほう。それは興味深いわね」
ルリの説明に、アマンダは手を顎にあて、何か考え始めた。
「で、でも太刀川から帰って来てすぐに試したんです。結果は失敗でした……」
ルリに持ち上げれてたケイだったが、もう試して失敗している事を告げる。
「オチビ、アンタの【修復】は、時間をさかのぼって復元するのよね?」
「そうだな。それが何か?」
暫く考え込んでいたカチュアが、ニヤリと微笑した。
「フム……オチビの【修復】と、これまたオチビの【復活】か。ミックスしたら、面白い事になりそうね?」
「何ぃ? 本気か?」
「ナイスよ姉さん! 試してみる価値はありそうね。そうだ、シズルカ様の【祝福】でさらにブーストを掛ければ……」
うんうんと頷きながら、アマンダはポンと手を叩いた。
「イケるかも知れない! そうと決まればすぐに準備よ!」
「了解!」
◆ ◆ ◆ ◆
ワタルの塔 4階 医務室――
食堂から戻って来た面々は、直ちにココナの治療にかかる。
「よく寝てる。やるんだったら今よ!」
「「「了解」」」
先ずは静流がシズルカに変身する。
「静流、折角だ。気合の入ったアレ、見せろ」
「ええっ!? 変身ポーズ、ですか?」
郁は静流に無茶ぶりした。
「私も見たぁい!」
「是非、お願いします」
部下たちは、デパートの屋上でやるアトラクションを見ている子供の様に、目をキラキラさせている。
「しょうがないですね、では」
静流は構えをとり、呼吸を整え目を閉じる。
その後、ぱっと目を開き、腕を振って風を腰のベルト付近に送るような動作を行う。
ポーズが決まり、【セタップ!】と叫んで腕の操作盤をいじった。
パァァァ!
桃色のオーラに包まれて、ビキニアーマーを装着した『戦乙女神シズルカ』が顕現する。
「コレが生の女神様ですか……素晴らしい」
「見てるだけでも、心が浄化されていくみたい」
シズルカを肉眼で初めて見る夏樹と瞳は、小さく感嘆の声をあげた。
「そう、コレなの! 太刀川で会った時とおんなじ!」
そう言ってケイは、脇をパタパタさせた。
静流の準備が整ったので、アマンダが指揮を執る。
「静流クン、準備はイイわね。そしたら二人に【祝福】を与えて!」
「はい! 【メテオ・ブリージング】!!」ファァァ
静流は手を三角に結び、二人に桃色のオーラを放射した。
「魔力がふつふつと沸き上がっていく……」
「スゴい! 今なら何でも出来そう!」
【祝福】を浴びた二人は、ココナの右足に集中した。
その間も静流から桃色のオーラを浴び続けている。
「よし、先ずは郁、【修復】を掛けて!」
「行くぞ!レストレーション【復元】!!」パァァ
郁の掌から金色のオーラが放出され、右足付近に照射される。
「次にケイ、【復活】を掛けて!」
「行きます! レザレクション【復活】!!」パァァ
ケイの手から、水色の霧が発生し、右足付近にその手をかざす。
すると、ココナの右足付近が金色に光り出した。
この状態が数分続き、二人に疲労の兆候が見えて来た。
「くぅぅ!」
「まだか!? 少佐!」
「まだよ。もう少し頑張って!」
静流は二人の頑張りに応えようと、【祝福】にさらに魔力を注いだ。
「うぉぉぉぉ!」パァァァ!
すると桃色のオーラがココナの右足に届き、金色の光がさらに増し、やがて部屋中が光り出した。
パァァァァァ!
「くっ!眩しい」
「目視出来ない! 状況はどうなってるの!?」
数分後、光が収束し始めた。収束していく先は、ココナの右足付近だった。
視力が戻り出したアマンダが、ココナの右足付近を見た。
「足が……再形成されている。 成功よ!!」
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