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第8章 冬が来る前に
エピソード46-11
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ワタルの塔 二階 応接室――
塔にアマンダやカチュアたちが到着した。
郁たちがカチュアと話していると、後ろから奇声が上がった。
「むほぉぉぉ!……これはこれはミスター・イガラシ、御機嫌よう」
「ど、どうも。ジル神父。僕の事は『静流』って呼んでくれて構いませんよ」パァ
そう言って静流は、苦笑いに近いニパを神父に送った。
「はぐぅ、で、では、静流様、とお呼び致しましょう」ハァハァ
「そうきますよね……やっぱ」
「ミス・ミナトノたちがそうお呼びしていたので。何か?」
「いえ……何でもありません」
静流は少し引き気味にそう答えた。
続いて、郁とルリがジルに挨拶した。
「これはこれは神父。ご苦労であるな。フン」
「神父様。ご無沙汰しております」
「あなた方は……ミス・サカキバラに、ミス・トウドウですね。お変わりなく」
「静流めから聞いたぞ? 神父の高校時代の同級生に、思い当たる事は無いか? ん?」
「高校時代? はて……」
ジルは天井を見ながら、記憶を探っている。
時折、静流をチラチラと見ながら。
「随分昔の話ですからね……ん? ま、まさか、そう言えば髪の色が……」
「ん? 何か思い出しました? ジル神父?」
静流の顔を見て、ジルの目は大きく見開かれ、興奮気味に言った。
「朔也! 朔也でしょう? ああ。何で今まで気付かなかったんでしょう。私のバカッ!」
ジルは頭を抱え、左右に振って悶えた。そんな仕草をするヒグマが、どこかの動物園にいたような……。
静流を見て、朔也の面影と重なったのだろうか。
「はぁ? 誰よ、朔也って?」
興奮してクルクル回っているジルを見て、カチュアはうっとうしそうに聞いた。
その問いに、静流が答えた。
「荻原朔也さん。芸名は『七本木ジン』僕の親戚らしいって、先生には前に話しましたよね?」
「へ? 七本木……ジン様ぁ?」
以前、シレーヌの件で少し触れた筈であったが、カチュアは忘れていたのだろうか?
カチュアは、口をあんぐりと開けたまま、呆然としていた。
「道理でこの、何とも言えない甘美な香り……朔也を思い出します」ムフゥ
「神父とジン様が、高校の同級生!?」
カチュアはジルをガン見した。
「そうですか……朔也の。これも何かの縁。主のお導きに他ありません。おお主よ。感謝致します」
「ソッチに驚いてたのか。なるほど」
「そりゃあ驚くわよ。コイツがジン様と同級生なんてね」
◆ ◆ ◆ ◆
ジルの興奮が収まり、場が静けさを取り戻した頃、ルリはジェニーをカチュアに紹介した。
「ルリちゃん? こ、この方が?」
「ん? 誰よアナタ?」
「先生、いえ、如月ドクター。こちらは太刀川駐屯地で軍医をされています、宗方ドクターですっ」
「む、宗方ジェニーです。お初にお目にかかりますっ」
「ああ、軍医様ね。どうもご苦労様」
ジェニーが興奮気味に挨拶しているのに、素っ気無い態度を取るカチュア。
「お会い出来て光栄ですっ! 医大にいた頃、先輩に聞いたんです! 『黒孔雀』の伝説を!」ハァハァ
「ああ、多分それね、話が大袈裟になってる。かなり脚色されてるわよ?」
「でも、物凄く難しい手術を、いとも簡単に成功させたって……」
「今日的に見れば、医療技術なんかあっという間に進んじゃう。私なんかが出る幕じゃないのよ、もう」
「そんな、ご謙遜を……」
「私はね、今回は報酬目当てで参加するの。ねぇ? 静流クゥン♡」
「はは。そんなに期待しないで下さいよ……」
カチュアの報酬は、冬休みに軍の保養施設に静流と行く事である。
当然二人きり、とはいかない事は、カチュアはわかっているとは思うが。
◆ ◆ ◆ ◆
応接室で、簡単なブリーフィングを行う。
「先遣隊として、私と如月ドクター、神父様、シズルーであちらに向かい、クランケの状態を確認後、塔の診療所に移送を行います」
「アマンダ、クランケの状態は?」
「薬を使って一日のほとんどをベッドで寝かせているみたい」
「何でまたそんな事を?」
「古傷からくる痺れで、ほとんど身体を動かす事が出来ないって言ってたけど、他の理由も考えられる。例えば我を忘れて奇行に走る、とか?」
それを聞いて、静流はふと思う事があった。
「忍ちゃん、薫子お姉様のケースと似ていると思うんだけど?」
「フム。確かに」
ドラゴン族とのハーフである薫子は以前、意図しない獣化に苦しみ、自分を制御出来ずに仲間を襲った過去があり、その際に薫によって睡眠カプセルにて長期の冬眠状態になっていた。
正常な薫子の精神は思念体となり、学園で地縛霊の様になっていたのを静流に助けられた。
「とにかく、クランケの状態を確認しないと、ね」
「アマンダさん、ちょっとイイですか?」
「何? 静流クン」
「今のメンバーだと、初顔合わせのひとばかりですよね? 面識のある人を入れた方が、ココナさんも安心するかと」
「そうね。じゃあオチビ、来なさい!」
「は? 私が? 何故?」
「元、相棒でしょう?」
「ぐぬぬ……」
アマンダに付いて来るように言われた郁だったが、どうも気が乗らないらしい。
「アマンダさん、ルリさんに付いて来てもらっては?」
そんな郁を見て、静流はルリの同行をアマンダに薦めた。
「へ? 私、ですか?」
「そうね。じゃあお願い」
「は、はい! 了解しました」
「お願いしますね? ルリさん」
「が、頑張ります! フンッ」
静流にそう言われ、ルリに緊張が走った。
そうこうしている間に、先遣隊がダーナ・オシー駐屯地に行く時間となった。
「じゃあ静流クン、スタンバイよろしく」
「はいっ」シュン
アマンダの指示を受け、静流は腕のパネルを操作し、シズルーに変身した。
黒を基調にしたクラシカルな軍服姿で、制帽からのぞかせる桃色のストレートヘアはサラサラであり、目は金と赤のオッドアイに、ざぁますメガネを着用している。
「ああ、シズルー様だわ……ムフゥ、素敵」
「ムフゥ。数年後の静流クンって感じ?」
シズルーを見たルリがきゃいきゃい言っている。
カチュアはシズルーを見て、満更でもない様子であった。
「むほぉ、何と凛々しい……欲しい」
「ムキッ! 変な目で静流を見ないで!」
うっとりとシズルーを眺めているジルに、忍がちょっかいを出した。
「いつでも行けます。少佐殿」
「よろしい! 付いて来なさい!」
(ムハァ。たまらないわぁ。)
格好良く言ったつもりのアマンダであったが、顔が若干緩んでいる。
「少佐殿、やらしい顔になってますよ?」
「しょうがないわよ。あんな部下がいたら、堅物のあの子だって、ああなるでしょうね」
「皆様、お待ちくださぁい」
先頭を切って勇ましく【簡易ゲート】に向かうアマンダに、シズルーが付いて行く。
その後ろをカチュアとルリ、そしてジルがワタワタしながらその後を追っている。
◆ ◆ ◆ ◆
ダーナ・オシー駐屯地 正門――
アマンダたちは、約束の時間を少し早めに到着した。
正門には一人の隊員が気を付けの姿勢でアマンダたちを迎えた。
「おはようございます! 如月少佐殿!」
「ご苦労様。早速で悪いけど、マルタイの所に案内して頂戴?」
「は、かしこまりました!」
守衛で手続きを手早く終えた隊員は、一行をエスコートする。
「自分は独立混成旅団 独立遊撃部隊 副隊長 村上 夏樹曹長であります!」
アマンダ以外の初顔に対し、夏樹は自己紹介をした。
夏樹は、金髪をポニーテールにしている、ややつり気味な青い目が特徴の隊員であった。
「ささ、こちらに」
夏樹はアマンダたちを、少し歩いた先の診療所に案内した。
診療所に入ってすぐにある客室には、司令である尾崎クリスティーナをはじめ、ココナ率いる『カラミティ・ロージーズ』の隊員である植木瞳と谷井蛍がアマンダたちを迎えた。
「よくいらして下さいました。指令の尾崎です。そして竜崎の部下の、村上、植木、そして谷井です」
「「「よろしく、お願いいたします」」」
三人の部下が最敬礼した。
「どうも。私が如月アマンダです。そしてここにいるのが、今回の任務に当たる主なメンバーです」
アマンダに促され、自己紹介を始める。
「『ギャラクティカ・ミラージュ』所属、シズルー・イガレシアス大尉です」
「太刀川駐屯地所属、藤堂ルリ少尉です」
「医者の、如月カチュアよ。よろしく」
「聖アスモニア修道魔導学園の神父、ジルベール・ハクトーでございます」
お互いの紹介が終わると、アマンダはクリス司令と話し始めた。
するとシズルーの前に、てててーっと小走りで近付いて来る者がいた。
「大尉! お疲れ様です!」
「おお、谷井ケイ君ではないか! 日々、鍛錬に励んでいるか?」
「はい! 毎日欠かさず鍛錬しております!」
そう言うとケイは、頭をシズルーに向けた。
少しの沈黙のあと、察したシズルーはケイの目線までかがみ、頭を撫でてやった。
「そうかそうか。エラいぞ、ケイ君」
「へへぇ。褒められちゃったぁ」
「「「むっ!!!」」」
夏樹たちがこのやり取りを見て絶句している。
「ど、どう言う事!?」
「ケイの奴、何て羨ましい……けしからん!」
「大尉殿とあの子が、あんなに親密に……」
他の者に混じり、ルリもその光景にいらだっていた。
「……にゃろめぇ、調子に乗りやがって、キィ~!」
そしていよいよ、今回のマルタイである、竜崎ココナの病室に案内される事となった。
塔にアマンダやカチュアたちが到着した。
郁たちがカチュアと話していると、後ろから奇声が上がった。
「むほぉぉぉ!……これはこれはミスター・イガラシ、御機嫌よう」
「ど、どうも。ジル神父。僕の事は『静流』って呼んでくれて構いませんよ」パァ
そう言って静流は、苦笑いに近いニパを神父に送った。
「はぐぅ、で、では、静流様、とお呼び致しましょう」ハァハァ
「そうきますよね……やっぱ」
「ミス・ミナトノたちがそうお呼びしていたので。何か?」
「いえ……何でもありません」
静流は少し引き気味にそう答えた。
続いて、郁とルリがジルに挨拶した。
「これはこれは神父。ご苦労であるな。フン」
「神父様。ご無沙汰しております」
「あなた方は……ミス・サカキバラに、ミス・トウドウですね。お変わりなく」
「静流めから聞いたぞ? 神父の高校時代の同級生に、思い当たる事は無いか? ん?」
「高校時代? はて……」
ジルは天井を見ながら、記憶を探っている。
時折、静流をチラチラと見ながら。
「随分昔の話ですからね……ん? ま、まさか、そう言えば髪の色が……」
「ん? 何か思い出しました? ジル神父?」
静流の顔を見て、ジルの目は大きく見開かれ、興奮気味に言った。
「朔也! 朔也でしょう? ああ。何で今まで気付かなかったんでしょう。私のバカッ!」
ジルは頭を抱え、左右に振って悶えた。そんな仕草をするヒグマが、どこかの動物園にいたような……。
静流を見て、朔也の面影と重なったのだろうか。
「はぁ? 誰よ、朔也って?」
興奮してクルクル回っているジルを見て、カチュアはうっとうしそうに聞いた。
その問いに、静流が答えた。
「荻原朔也さん。芸名は『七本木ジン』僕の親戚らしいって、先生には前に話しましたよね?」
「へ? 七本木……ジン様ぁ?」
以前、シレーヌの件で少し触れた筈であったが、カチュアは忘れていたのだろうか?
カチュアは、口をあんぐりと開けたまま、呆然としていた。
「道理でこの、何とも言えない甘美な香り……朔也を思い出します」ムフゥ
「神父とジン様が、高校の同級生!?」
カチュアはジルをガン見した。
「そうですか……朔也の。これも何かの縁。主のお導きに他ありません。おお主よ。感謝致します」
「ソッチに驚いてたのか。なるほど」
「そりゃあ驚くわよ。コイツがジン様と同級生なんてね」
◆ ◆ ◆ ◆
ジルの興奮が収まり、場が静けさを取り戻した頃、ルリはジェニーをカチュアに紹介した。
「ルリちゃん? こ、この方が?」
「ん? 誰よアナタ?」
「先生、いえ、如月ドクター。こちらは太刀川駐屯地で軍医をされています、宗方ドクターですっ」
「む、宗方ジェニーです。お初にお目にかかりますっ」
「ああ、軍医様ね。どうもご苦労様」
ジェニーが興奮気味に挨拶しているのに、素っ気無い態度を取るカチュア。
「お会い出来て光栄ですっ! 医大にいた頃、先輩に聞いたんです! 『黒孔雀』の伝説を!」ハァハァ
「ああ、多分それね、話が大袈裟になってる。かなり脚色されてるわよ?」
「でも、物凄く難しい手術を、いとも簡単に成功させたって……」
「今日的に見れば、医療技術なんかあっという間に進んじゃう。私なんかが出る幕じゃないのよ、もう」
「そんな、ご謙遜を……」
「私はね、今回は報酬目当てで参加するの。ねぇ? 静流クゥン♡」
「はは。そんなに期待しないで下さいよ……」
カチュアの報酬は、冬休みに軍の保養施設に静流と行く事である。
当然二人きり、とはいかない事は、カチュアはわかっているとは思うが。
◆ ◆ ◆ ◆
応接室で、簡単なブリーフィングを行う。
「先遣隊として、私と如月ドクター、神父様、シズルーであちらに向かい、クランケの状態を確認後、塔の診療所に移送を行います」
「アマンダ、クランケの状態は?」
「薬を使って一日のほとんどをベッドで寝かせているみたい」
「何でまたそんな事を?」
「古傷からくる痺れで、ほとんど身体を動かす事が出来ないって言ってたけど、他の理由も考えられる。例えば我を忘れて奇行に走る、とか?」
それを聞いて、静流はふと思う事があった。
「忍ちゃん、薫子お姉様のケースと似ていると思うんだけど?」
「フム。確かに」
ドラゴン族とのハーフである薫子は以前、意図しない獣化に苦しみ、自分を制御出来ずに仲間を襲った過去があり、その際に薫によって睡眠カプセルにて長期の冬眠状態になっていた。
正常な薫子の精神は思念体となり、学園で地縛霊の様になっていたのを静流に助けられた。
「とにかく、クランケの状態を確認しないと、ね」
「アマンダさん、ちょっとイイですか?」
「何? 静流クン」
「今のメンバーだと、初顔合わせのひとばかりですよね? 面識のある人を入れた方が、ココナさんも安心するかと」
「そうね。じゃあオチビ、来なさい!」
「は? 私が? 何故?」
「元、相棒でしょう?」
「ぐぬぬ……」
アマンダに付いて来るように言われた郁だったが、どうも気が乗らないらしい。
「アマンダさん、ルリさんに付いて来てもらっては?」
そんな郁を見て、静流はルリの同行をアマンダに薦めた。
「へ? 私、ですか?」
「そうね。じゃあお願い」
「は、はい! 了解しました」
「お願いしますね? ルリさん」
「が、頑張ります! フンッ」
静流にそう言われ、ルリに緊張が走った。
そうこうしている間に、先遣隊がダーナ・オシー駐屯地に行く時間となった。
「じゃあ静流クン、スタンバイよろしく」
「はいっ」シュン
アマンダの指示を受け、静流は腕のパネルを操作し、シズルーに変身した。
黒を基調にしたクラシカルな軍服姿で、制帽からのぞかせる桃色のストレートヘアはサラサラであり、目は金と赤のオッドアイに、ざぁますメガネを着用している。
「ああ、シズルー様だわ……ムフゥ、素敵」
「ムフゥ。数年後の静流クンって感じ?」
シズルーを見たルリがきゃいきゃい言っている。
カチュアはシズルーを見て、満更でもない様子であった。
「むほぉ、何と凛々しい……欲しい」
「ムキッ! 変な目で静流を見ないで!」
うっとりとシズルーを眺めているジルに、忍がちょっかいを出した。
「いつでも行けます。少佐殿」
「よろしい! 付いて来なさい!」
(ムハァ。たまらないわぁ。)
格好良く言ったつもりのアマンダであったが、顔が若干緩んでいる。
「少佐殿、やらしい顔になってますよ?」
「しょうがないわよ。あんな部下がいたら、堅物のあの子だって、ああなるでしょうね」
「皆様、お待ちくださぁい」
先頭を切って勇ましく【簡易ゲート】に向かうアマンダに、シズルーが付いて行く。
その後ろをカチュアとルリ、そしてジルがワタワタしながらその後を追っている。
◆ ◆ ◆ ◆
ダーナ・オシー駐屯地 正門――
アマンダたちは、約束の時間を少し早めに到着した。
正門には一人の隊員が気を付けの姿勢でアマンダたちを迎えた。
「おはようございます! 如月少佐殿!」
「ご苦労様。早速で悪いけど、マルタイの所に案内して頂戴?」
「は、かしこまりました!」
守衛で手続きを手早く終えた隊員は、一行をエスコートする。
「自分は独立混成旅団 独立遊撃部隊 副隊長 村上 夏樹曹長であります!」
アマンダ以外の初顔に対し、夏樹は自己紹介をした。
夏樹は、金髪をポニーテールにしている、ややつり気味な青い目が特徴の隊員であった。
「ささ、こちらに」
夏樹はアマンダたちを、少し歩いた先の診療所に案内した。
診療所に入ってすぐにある客室には、司令である尾崎クリスティーナをはじめ、ココナ率いる『カラミティ・ロージーズ』の隊員である植木瞳と谷井蛍がアマンダたちを迎えた。
「よくいらして下さいました。指令の尾崎です。そして竜崎の部下の、村上、植木、そして谷井です」
「「「よろしく、お願いいたします」」」
三人の部下が最敬礼した。
「どうも。私が如月アマンダです。そしてここにいるのが、今回の任務に当たる主なメンバーです」
アマンダに促され、自己紹介を始める。
「『ギャラクティカ・ミラージュ』所属、シズルー・イガレシアス大尉です」
「太刀川駐屯地所属、藤堂ルリ少尉です」
「医者の、如月カチュアよ。よろしく」
「聖アスモニア修道魔導学園の神父、ジルベール・ハクトーでございます」
お互いの紹介が終わると、アマンダはクリス司令と話し始めた。
するとシズルーの前に、てててーっと小走りで近付いて来る者がいた。
「大尉! お疲れ様です!」
「おお、谷井ケイ君ではないか! 日々、鍛錬に励んでいるか?」
「はい! 毎日欠かさず鍛錬しております!」
そう言うとケイは、頭をシズルーに向けた。
少しの沈黙のあと、察したシズルーはケイの目線までかがみ、頭を撫でてやった。
「そうかそうか。エラいぞ、ケイ君」
「へへぇ。褒められちゃったぁ」
「「「むっ!!!」」」
夏樹たちがこのやり取りを見て絶句している。
「ど、どう言う事!?」
「ケイの奴、何て羨ましい……けしからん!」
「大尉殿とあの子が、あんなに親密に……」
他の者に混じり、ルリもその光景にいらだっていた。
「……にゃろめぇ、調子に乗りやがって、キィ~!」
そしていよいよ、今回のマルタイである、竜崎ココナの病室に案内される事となった。
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