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第8章 冬が来る前に
エピソード44-11
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薄木航空基地 第7格納庫 事務所――
静流は今、隊員たちに『ある物』を届けに薄木に来ていた。
郁や佳乃の悪戯で、ロディをシズルーに変身させていた。
「おい静流、何を始めるつもりだ?」
「昨日のチャットで、ココの方が不便にしてたのを見て、急遽用意しました。これを」ジャラッ
「あ! もしかして、私たちの勾玉!?」
「そうでありましたか。自分の分が無いのも、無理は無いのであります……」ホッ
静流は、人数分の勾玉を見せた。
佳乃は瞬時に理解し、何故か安堵していた。
「こちらの佳乃さん以外の方には、お渡しするのが遅くなっちゃって、すいませんでした」
「イイのよ静流クン、大事にするわね」
「佳乃先輩? これでアドバンテージは無くなりましたね? フッフッフ」
「な、なんの事でありますか? 萌殿?」
「じゃあ、順番ね。はい、イク姉から……」
勾玉の色はそれぞれの髪の毛の色に合わせ、
・郁 小豆色
・澪 紫
・萌 プラチナブロンド
・美紀・真紀 ペパーミントグリーン
であった。
「ふむ。悪くない」
「ウフ。やっともらえた。しつこくおねだりした甲斐があったわ」
「やった……ついに手に入った」
「うわぁ、綺麗!」
「コレで、いつでも念話出来るね♪」
もらった隊員たちは、口々に感想を述べている。
それをポカンと見ているみのりに、静流は声を掛けた。
「最後にみのりさん、はい」
静流はみのりの手に、琥珀色の勾玉を渡した。
「わわ、私にも、頂けるのですか?」
「勿論。これはですね、念話とか、翻訳機能が付いてるんです。後は絶対障壁。一回だけですけど攻撃を無効化出来ます」
「そんな大層なものを? あ、ありがとう、ございます」ポォォ
佳乃がみのりの横にひょこっと顔を出した。
「効果は保証済み、でありますよ! 自分は一度使ったのでありますから」
「そんな危ない事があったんです?」
「そりゃあもう。九死に一生を得たであります」
そう言って佳乃は、ホクホク顔で自分の勾玉をみのりに見せる。
佳乃の髪の色と同じ、サファリオレンジの勾玉には、【絶対障壁】を使用した際のヒビが入っていた。
「あ、ヒビが入ってますよ? 先輩?」
「これは、自分と静流様とのエピソードの証……なのであります」
そう言ってドヤ顔をしている佳乃に、静流は手を差し出し、にこやかに言った。
「佳乃さん、いい加減勾玉の修復、させてもらえませんかね?」
「うぇ? でも、この傷は自分を守ってくれた証……であります。そのままではダメ、なのでありますか?」
佳乃は潤んだ瞳で静流を見た。
佳乃は過去にも修復を断っている。
「ダメなのであります! 今後、また佳乃さんに危険が及ぶ事になったら、って考えると、心配で心配で……」
「し、静流様がそこまで自分を心配してくれている?……わかりました。お願いするのであります」
佳乃は観念し、勾玉を渡した。
「ちょっと失礼」パァァ
静流は部屋の隅っこに移動し、しゃがむ。
すると隅っこがまばゆい桃色のオーラに包まれる。
「何が起こってるの? 萌?」
「祈ってるのよ。ああやって勾玉に魔法を付与するの」
「私のも? なの?」
「そうよ。さっき、アナタの手から、魔力の交換をしていたでしょう? それを使って魔法を付与したのよ」
「う、うん。あれがそうなのか……」
オーラが消え、静流が佳乃の前に戻って来た。
「はい、直りましたよ。佳乃さん」
「あ、ありがたき幸せであります! あれ? 前よりも輝きが……増している?」
佳乃は自分の勾玉の状態を見て、そう言った。
周りのものが気付く程、輝度が上がっていた。
「うわぁ、ホントだ、スゴく光ってる」
「ん? 何だろう? もしかして『二度掛け』したせい、かな?」
「つまり、静流様との絆が、さらに深まった、って事でありますか? ヌフゥ」
佳乃は後輩たちに、これ見よがしに見せびらかす。
「何ぃぃぃ!? また佳乃先輩に一歩リードされた!?」
「折角追いついたと思ったのに……キー!」
工藤姉妹は心底悔しがっている。
郁は大きく頷き、澪に言った。
「死の淵を這い上がる度に輝きを増す……まるで不死鳥のようだな」
「隊長? 上手い事言ったと思ってます? はっきり言って、イタいです」
静流は佳乃に向き直り、にこやかに言った。
「佳乃さん、直ったからといって、危険な目にはなるべく遭わない事、イイですね?」ニパァ
「「「「「きゃ、きゃららぁぁ~ん♡」」」」」
佳乃はもとより、周りの面々も久々の生ニパを食らい、のけ反った。
「き、肝に命じるのでありましゅ」
みのりには実際は初ニパではないが、それに近いものがあった。
「ぐ、はぁ! ス、スゴい……コレが本物の波動、なの? 最早……即死チート」クラッ
みのりは大きくよろけ、静流に抱きかかえられた。
「ちょっと、大丈夫ですか?」
「ふぁ、ふぁい。らいりょうぶれす」
みのりは顔に手をやっている。手から鮮血が滴っている。
「こりゃあ大変だ。失礼【ヒール】ポゥ」
静流は青い霧を手にまとわせ、みのりの頭にそっと乗せた。
「はひぃぃぃ」シュゥゥ
鼻血はすぐに止まり、汚れた服も見事に綺麗になった。
静流の手際の良さに、一同は感心している。
「静流様ぁ、ウチの部隊に、回復担当で来てくれません?」
「真紀!? それはシャレにならないわよ!?」
「ごめーん。フフフ」
和やかな雰囲気の中、静流はみのりを立たせた。
「はい。もう大丈夫ですね?」
「す、すいません。あたしったら、もう……」
みのりの顔が一層赤くなった。
「みのりさん、これからも、何かとお世話になると思いますので、よろしくお願いしますね?」ニパァ
「だっふぅぅぅん♡」
みのりは、自分に向けられたニパを食らい、鼻血を吹きながら大の字になり、後ろに倒れた。
「うわ、大変だ!」
みのりの意識は、完全に飛んだ。
「ぷっしゅぅぅぅ……」
気絶したみのりを、ゆっくりとソファーに寝かせる静流。
「ちょっと、刺激が強すぎたか……ふぅ、反省」
みのりの鼻血を拭いてやり、ため息をつく静流。
「刺激なんてもんじゃないでしょう? いきなり憧れの人が二人も目の前にいたら、卒倒もしますよ」
「そうですよ! このカオスな状況、説明してもらえます?」
「私にとっては、うれしいサプライズ、でしたけど」ポォォ
工藤姉妹がキレ気味に迫って来た。萌は自分の世界に入っているのか、うわ言のように呟いている。
「確かに最初は、サプライズを狙いました。だけど、みのりさんがこちらの隊に入るとなると、僕の素性を明かす必要があって、そうすると太刀川でみのりさんたちを騙してた事になっちゃうんだよな、って思ったら嫌われるんじゃないかって不安で……」
静流の顔が次第に青みがかって来て、ローテンションになっていった。
萌たちはあわてて静流をフォローする。
「そ、そこまで落ち込む事、無いですよ」
「やむ負えない事情があったんだし、仕方なかったんですから」
「でもそれは、僕の身勝手で一方的な理由ですよ?」
萌たちにそう言われても、静流のメンタルは回復しなかった。
「静流、もう起こった事でしょ? ウジウジしない!」
「真琴?」
「堂々としてればイイの。アンタは悪い事したワケじゃないんだから」
「そうであります。自己防衛手段だったのであります」
「……わかった。正直に話すよ」
真琴たちにそう言われ、静流は腹をくくったようだ。
そのやり取りを見て、郁たちは真琴に感心していた。
「流石はアルティメット幼馴染。静流の操縦に長けておるわい」
「悔しいけど、認めざるを得ませんね……」
静流は今、隊員たちに『ある物』を届けに薄木に来ていた。
郁や佳乃の悪戯で、ロディをシズルーに変身させていた。
「おい静流、何を始めるつもりだ?」
「昨日のチャットで、ココの方が不便にしてたのを見て、急遽用意しました。これを」ジャラッ
「あ! もしかして、私たちの勾玉!?」
「そうでありましたか。自分の分が無いのも、無理は無いのであります……」ホッ
静流は、人数分の勾玉を見せた。
佳乃は瞬時に理解し、何故か安堵していた。
「こちらの佳乃さん以外の方には、お渡しするのが遅くなっちゃって、すいませんでした」
「イイのよ静流クン、大事にするわね」
「佳乃先輩? これでアドバンテージは無くなりましたね? フッフッフ」
「な、なんの事でありますか? 萌殿?」
「じゃあ、順番ね。はい、イク姉から……」
勾玉の色はそれぞれの髪の毛の色に合わせ、
・郁 小豆色
・澪 紫
・萌 プラチナブロンド
・美紀・真紀 ペパーミントグリーン
であった。
「ふむ。悪くない」
「ウフ。やっともらえた。しつこくおねだりした甲斐があったわ」
「やった……ついに手に入った」
「うわぁ、綺麗!」
「コレで、いつでも念話出来るね♪」
もらった隊員たちは、口々に感想を述べている。
それをポカンと見ているみのりに、静流は声を掛けた。
「最後にみのりさん、はい」
静流はみのりの手に、琥珀色の勾玉を渡した。
「わわ、私にも、頂けるのですか?」
「勿論。これはですね、念話とか、翻訳機能が付いてるんです。後は絶対障壁。一回だけですけど攻撃を無効化出来ます」
「そんな大層なものを? あ、ありがとう、ございます」ポォォ
佳乃がみのりの横にひょこっと顔を出した。
「効果は保証済み、でありますよ! 自分は一度使ったのでありますから」
「そんな危ない事があったんです?」
「そりゃあもう。九死に一生を得たであります」
そう言って佳乃は、ホクホク顔で自分の勾玉をみのりに見せる。
佳乃の髪の色と同じ、サファリオレンジの勾玉には、【絶対障壁】を使用した際のヒビが入っていた。
「あ、ヒビが入ってますよ? 先輩?」
「これは、自分と静流様とのエピソードの証……なのであります」
そう言ってドヤ顔をしている佳乃に、静流は手を差し出し、にこやかに言った。
「佳乃さん、いい加減勾玉の修復、させてもらえませんかね?」
「うぇ? でも、この傷は自分を守ってくれた証……であります。そのままではダメ、なのでありますか?」
佳乃は潤んだ瞳で静流を見た。
佳乃は過去にも修復を断っている。
「ダメなのであります! 今後、また佳乃さんに危険が及ぶ事になったら、って考えると、心配で心配で……」
「し、静流様がそこまで自分を心配してくれている?……わかりました。お願いするのであります」
佳乃は観念し、勾玉を渡した。
「ちょっと失礼」パァァ
静流は部屋の隅っこに移動し、しゃがむ。
すると隅っこがまばゆい桃色のオーラに包まれる。
「何が起こってるの? 萌?」
「祈ってるのよ。ああやって勾玉に魔法を付与するの」
「私のも? なの?」
「そうよ。さっき、アナタの手から、魔力の交換をしていたでしょう? それを使って魔法を付与したのよ」
「う、うん。あれがそうなのか……」
オーラが消え、静流が佳乃の前に戻って来た。
「はい、直りましたよ。佳乃さん」
「あ、ありがたき幸せであります! あれ? 前よりも輝きが……増している?」
佳乃は自分の勾玉の状態を見て、そう言った。
周りのものが気付く程、輝度が上がっていた。
「うわぁ、ホントだ、スゴく光ってる」
「ん? 何だろう? もしかして『二度掛け』したせい、かな?」
「つまり、静流様との絆が、さらに深まった、って事でありますか? ヌフゥ」
佳乃は後輩たちに、これ見よがしに見せびらかす。
「何ぃぃぃ!? また佳乃先輩に一歩リードされた!?」
「折角追いついたと思ったのに……キー!」
工藤姉妹は心底悔しがっている。
郁は大きく頷き、澪に言った。
「死の淵を這い上がる度に輝きを増す……まるで不死鳥のようだな」
「隊長? 上手い事言ったと思ってます? はっきり言って、イタいです」
静流は佳乃に向き直り、にこやかに言った。
「佳乃さん、直ったからといって、危険な目にはなるべく遭わない事、イイですね?」ニパァ
「「「「「きゃ、きゃららぁぁ~ん♡」」」」」
佳乃はもとより、周りの面々も久々の生ニパを食らい、のけ反った。
「き、肝に命じるのでありましゅ」
みのりには実際は初ニパではないが、それに近いものがあった。
「ぐ、はぁ! ス、スゴい……コレが本物の波動、なの? 最早……即死チート」クラッ
みのりは大きくよろけ、静流に抱きかかえられた。
「ちょっと、大丈夫ですか?」
「ふぁ、ふぁい。らいりょうぶれす」
みのりは顔に手をやっている。手から鮮血が滴っている。
「こりゃあ大変だ。失礼【ヒール】ポゥ」
静流は青い霧を手にまとわせ、みのりの頭にそっと乗せた。
「はひぃぃぃ」シュゥゥ
鼻血はすぐに止まり、汚れた服も見事に綺麗になった。
静流の手際の良さに、一同は感心している。
「静流様ぁ、ウチの部隊に、回復担当で来てくれません?」
「真紀!? それはシャレにならないわよ!?」
「ごめーん。フフフ」
和やかな雰囲気の中、静流はみのりを立たせた。
「はい。もう大丈夫ですね?」
「す、すいません。あたしったら、もう……」
みのりの顔が一層赤くなった。
「みのりさん、これからも、何かとお世話になると思いますので、よろしくお願いしますね?」ニパァ
「だっふぅぅぅん♡」
みのりは、自分に向けられたニパを食らい、鼻血を吹きながら大の字になり、後ろに倒れた。
「うわ、大変だ!」
みのりの意識は、完全に飛んだ。
「ぷっしゅぅぅぅ……」
気絶したみのりを、ゆっくりとソファーに寝かせる静流。
「ちょっと、刺激が強すぎたか……ふぅ、反省」
みのりの鼻血を拭いてやり、ため息をつく静流。
「刺激なんてもんじゃないでしょう? いきなり憧れの人が二人も目の前にいたら、卒倒もしますよ」
「そうですよ! このカオスな状況、説明してもらえます?」
「私にとっては、うれしいサプライズ、でしたけど」ポォォ
工藤姉妹がキレ気味に迫って来た。萌は自分の世界に入っているのか、うわ言のように呟いている。
「確かに最初は、サプライズを狙いました。だけど、みのりさんがこちらの隊に入るとなると、僕の素性を明かす必要があって、そうすると太刀川でみのりさんたちを騙してた事になっちゃうんだよな、って思ったら嫌われるんじゃないかって不安で……」
静流の顔が次第に青みがかって来て、ローテンションになっていった。
萌たちはあわてて静流をフォローする。
「そ、そこまで落ち込む事、無いですよ」
「やむ負えない事情があったんだし、仕方なかったんですから」
「でもそれは、僕の身勝手で一方的な理由ですよ?」
萌たちにそう言われても、静流のメンタルは回復しなかった。
「静流、もう起こった事でしょ? ウジウジしない!」
「真琴?」
「堂々としてればイイの。アンタは悪い事したワケじゃないんだから」
「そうであります。自己防衛手段だったのであります」
「……わかった。正直に話すよ」
真琴たちにそう言われ、静流は腹をくくったようだ。
そのやり取りを見て、郁たちは真琴に感心していた。
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