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第7章 木枯らしに抱かれて

エピソード40-17

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生徒会室―― 次の日の放課後

 予定通り、軍事衛星を使った首脳会議が行われた。
 国尼メンバーは、睦美、真琴と、技術担当にカナメを呼んだ。
 学校にある一番大きいディスプレイを拝借し、生徒会室に設置してある。
 静流は約束だったので、同席を遠慮してもらい、先に家に帰ってもらった。

「先輩、静流がいてはマズい話とかあるんですか?」
「静流キュンには申し訳ないけど、かなり踏み込んだ話になると思うから」
「しっかし静流キュンも、あっちゃこっちゃ引っ張りダコやねぇ?」
「そういう意味でも、周りの私たちがしっかり護ってあげないとね」

 静流不在で緊張感の無い睦美は、通常の『乙女モード』であった。

「よぉし時間や。3・2・1、キュー!」

 カナメのキューで回線が繋がった。
 ディスプレイの2マスにそれぞれアスガルド組と薄木組が写った。
 アスガルド組は、アマンダとリリィ、薄木組は郁と澪だった。
 睦美は瞬時に『大佐モード』に変わり、挨拶を始める。

「御機嫌よう皆さん。此度は貴重なお時間を割いて頂き、感謝致します」
〔そう言う堅苦しいのはイイわ。本題に入りましょう〕
〈何じゃ、これだけか? 少ないではないか?〉

「今日の議題ですが……」
〔ちょっと待って、もうすぐ繋がるから、来たわね〕

 さらに1マス追加された。写ったのは太刀川のジェニーとルリだった。

(どうもぉ、お騒がせ致しまして、イヤハヤなんとも。軍医の宗方ジェニーでございますぅ)
(そして助手の、藤堂ルリ少尉です。イク? 久しぶりだね。てへ)
〈貴様、失態だなルリ! お主には言いたい事が山ほど……フガ すいません、続けて下さい〉

 マス目いっぱいに郁の顔が映ったかと思うと、澪が郁の口を押えている。

〔じゃあ宗方ドクター、確認の意味で経緯をざっと説明してもらえるかしら?〕
(あ、はい。実はかくかくしかじかでして……)

 若干緊張気味のジェニーは、先日の顛末をかいつまんで説明した。

〔なるほどね。いろいろと言いたい事はあるけど、先ずは対策よね?〕
「少佐殿。私どもでも幾つか案を作ったのですが、どうも今一つでして」
〔手回しがイイわね? さすがは書記長殿ね〕

 A:シズルーを招くにあたり、知り合いの上層部のコネを使った、あくまで『一度きりのオファー』であったという事であり、今後は一切受け付けない事とする約束だった。
 B:シズルーが所属するPMCは、通常、法外な報酬を必要とし、国費を投じる事が困難である。

〈うむ。ちと弱いな。静流めの『施術』の効果ははかり知れん。幾らでも金を積む輩もいるであろうな〉
〔そうね。今回は回復系だったけど、その内攻撃系の指南とか頼まれるかと思うと、ゾッとするわね〕
「我々の方でも、概ね同じ意見が出ましたね」
〈断固拒否だ! あのキャラは封印すべし!〉
(そ、そんなぁ、イク、シズルー様の封印は断固反対です! 折角三次元に顕現されたんですから)
〈ルリ! お主が付いていたなら、何故静流めを護らなんだ!?〉
(やっとお会い出来た嬉しさから、ちょっと浮かれていたのは認める。でも、封印はありえないわ!)
〈フン! 知るか!〉

 ルリが必死に涙目で郁に訴えているが、郁はプイとそっぽを向いている。

〔ねえ? ふと思ったんだけど、静流クン的にはどうなの? 今後シズルー役、やってくれそう?〕
〈やるわけがなかろう! 一部にしかウケないキザ男なんぞ〉
(な! 違いますよイク、シズルー様は万人にウケる、素敵な方、ですよ。ムフゥ)
〔あたしも、静流クンの教官役見てみたいなぁ。実際にウケてたんでしょ?〕
〈リリィ! 茶化すな〉

 各マス同士であーだーこーだが始まった所で、睦美は言った。

「えー。その件ですが昨日、静流キュンに意思確認をした所、『たまにならイイかな?』との回答がありました」
〈な、何じゃとぉ!? あ奴、何を考えとるんだ!?〉
〔相変わらずのポジティブシンキングね。そこが彼のイイ所かも知れないわね〕

 静流の危機感の全く無い、ある意味予想通りの発言に、一同は少し呆れた。

(はふぅ、静流様、何と寛大なご配慮……ムフゥ)
「静流は、短い期間ながら師弟の在り方を垣間見、弟子の成長を喜ぶ師匠の気持ちがわかった、と言っていましたね」
(あの子がそんな事を。イイ事言うじゃない♪)
〈話が違うではないか。私は、嫌々やらされとるんだと思っとったぞ?〉
〔アナタはどうなの真琴さん? 静流クンが学校を休む機会が増えたりする事については、何か思う所はあるのかしら?〕
「そ、それは……確かに嫌ですが、無理に縛り付ける事もしたくありません」
〔静流クンが短期留学、あの学園潜入ミッションから軍にいる期間、気が気じゃなかったでしょう? そんな事がまた起きるかも知れないわよ?〕

 真琴はアマンダに図星を指され、複雑な表情になった。

「くっ……」
「うぅ、確かにあの時は私も、胃が痛くなりましたね」

(少佐殿、何です? 学園潜入ミッションって?)
〔一応トップシークレットなんだけど、静流クンは女神像の贈呈と除幕式を兼ねて、あの『女の園』に単独で潜入したの。『井川シズム』として、ね〕
「ミッションだなんて、単なる短期留学、ですよ。少佐殿?」
(へ? 聖アスモニア修道魔導学園に? 静流様が? うっそぉ~!? あの牧師以外全部女の『アマゾネス要塞』に単騎で臨まれるとは……なんて無謀な、しかし羨ましい。で、その後はカニだかクモだかわからない巨大メカと戦ったんですか?)ハァハァ
(ルリちゃん!? 落ち着いて、どうどう)

 ルリは学園潜入ミッションの存在をこの場で知り、素っ頓狂な声を上げ、まくし立てた。

「そんな敵は現れませんでしたが、静流キュンは見事コンプリートしましたよ? 一部にはバレバレだったみたいですが」
(まぁ、素晴らしい! きっとムフフな事とかいろいろあったんでしょうね?)
「それは勿論。キャッハウフフ状態、だったらしいですよ」
(キャー、これだけでごはん三杯はイケますね。グフゥ)
〈騒ぐな。つまり静流めは、私たちの後輩でもあるのだぞ?〉
(ああなるほど、それでどこの寮にいたかお聞きになられたのか。納得)
〈ちなみにあ奴は、アンドロメダ寮らしいぞ?〉
(何故キグナスにお呼びしなかったの!? ま、まあドラゴンよりは上だから良しとしましょう)
〈所でだな……あ奴、ココナからは音沙汰無しか? ルリ?〉
(実はね、ちょっとマズい事になってるみたい……なの)

 郁とルリが学園の話で盛り上がっていたが、アマンダに諭された。

〔ちょっと二人共、同窓会は他でやって頂戴?〕
〈済まん、脱線した。ルリ、後で聞かせろ〉
(わかった。今回の件にも関係ありそうだから)

 ルリはモゴモゴと要領を得ない口調でそう言った。

〔話を戻すと、静流クンが満更でもないんだったら、適当に都合がイイ案件だけつまみ食いしとけばイイんじゃないの?〕
〔バカね、リリィ。相手は軍よ? 常に仕事を選べる立場にいられると思って? そんな上手い事は無いわよ〕

 睦美はある提案を持ちかけた。

「そこで、皆さんにご相談があるのですが……」
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