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第6章 時の過ぎゆくままに
エピソード39-3
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流刑ドーム―― 薫子の部屋
「聞いちゃったぁ、聞いちゃったぁ♪」
薫子は、後輩たちにもらったアカウントを使い、静流の『完全密着ライブ中継』を初めて見ていた。
「スゴいわね、さっき見始めたら、もうこんな情報が入って来るなんて」
そう呟いたと同時に、部屋のドアが乱暴に開いた。バァン!
「薫子、土曜日に静流が……見てたのね」
「当然よ。ちょっと忍、いきなり入って来ないで頂戴!」
忍が薫子の部屋を見渡す。
「う、コレ、どうやって手に入れたの!?」
「ちょっとした伝手よ。いいでしょう? ムフゥ、静流なら無加工でも遜色ないのに」
忍が指差しているA4の写真立てには、例の隊員募集のポスターが入っている。
恐らくブラム辺りを使って、軍から仕入れたのであろう。
「何で静流が軍のポスターに?」
「あの子が軍の広報に頼まれたって言う事みたいよ。まだどこにも出回ってないの。ムフゥ」
「くっ! 不覚だわ」
「アナタだって、あのタペストリーはどうやって手に入れたのよ?」
「見たな? アレは『黒魔』からもらった販促用。当然非売品。ヌフゥ」
このあと、静流グッズの自慢話で盛り上がった。
「で、どうするのよ? 忍は?」
「当然行く。偶然を装って」
「そうか。学校じゃないから、偶然バッタリもOKよね?」
「「ぬふふふ」」
二人が珍しく意気投合している。
「ねえ、アノ恋愛シュミレーションに、静流がいたんだけど?」
「ああ、アレ? 静流出すの大変だったでしょう?」
以前、『塔』でリナがプレイしていた恋愛ゲームの事である。
「その辺はリナがやってた。誘うのに失敗して、その後出なくなった」
「愛が足りないのよ、リナやアナタじゃ、ね」
「ぐぬぬ、そう言う薫子は、上手くいったの?」
「そりゃもう、って言いたいんだけど、ダメだったわ」
「何が正解なの? やっぱ『力仕事』?」
「あ、違うの。鉄板の選択肢が1個増えるって。鉄板のセリフは文字がピンク色らしいのよ」
「え!? 私の時は、全部白だった」
「開発者のブログにあったわ。見れたら超レアだってね」
◆ ◆ ◆ ◆
ワタルの塔 二階――
薫子と忍は、そのあと塔に寄った。
「リナに数十回トライさせてもダメだった」
「多分あそこの分岐から静流ルートがあるのよ」
娯楽室には、日中をほとんどココで過ごすリナと、珍しや雪乃の姿があった。
「おう、遅かったな」
「アナタたちに声を掛けたのですけど、何やらPCにかじりついていたので」
画面にはスタッフロールが表示されていて、エンディングテーマらしきものが流れている。
「ち、ちょっと待ってリナ、アンタまさか……」
「ああ、今さっき終わったぜ。『静坊のルート』」グッ!
リナはドヤ顔で親指を立てた。
「「何ィィ!?」」
二人は驚愕した。
「何で呼んでくれなかったの?」
「あ? だからヅラに部屋を覗いて来いって言っといたんだぞ?」
「アナタたちがあまりにも熱心に何かしてるから、邪魔しちゃ悪いかしら、って」
スタッフロールが終わり、『制作 桃魔術研究会』と表示される。
「まさかこのソフト、『黒魔』が作ったの? 『桃魔術』って?」
「そうよ。後輩ちゃんから入手したの」
「学生なのによくできてたわ。メジャーで売るならもっと手を加えないとダメですけど」
「お、まだ残りがあるみたいだぜ?」
リナがそう言うと、薫子と忍はガバっと画面の前に正座した。
……朝、小鳥のさえずりで起きる静流。
「う、う~ん。おはよう、〇〇〇」
ベッドで隣に寝ていた静流が、プレイヤーの方を向き、そうささやく。
「素敵な夜をありがとう。僕にとって、一生忘れられない夜になったよ」
そう言うと静流は、プレイヤーに近付き、目を閉じた。
FIN
イイ所で画面が真っ黒になり、今度こそ終わった。
「うわぁぁん! 静流ぅぅぅ!」
「誰かのモノになってしまったの!? 誰!?」
二人は頭を抱えて、悶え苦しんでいる。
「たかがゲームじゃないの。そんなに悔しがる事無いでしょうに」
「おい、ズラ、ここまで大変だったんだぞ? 少しは労えっての」
雪乃の言い草に、リナは少しキレた。
「私の指示通りやったお陰で、無事にエンディングまで見られたんですから、感謝してもらいたい位ですわ」フン
雪乃は髪をファサッと後ろに流し、若干ドヤ顔でそう言った。
「雪乃、アナタが指示したの?」
「ええ。大体このプログラムですと、静流さんの攻略は不可能よ」
「何ですって? それでどうやったらエンディングまでこぎ付けられるの?」
「あ? ああ、アタイが58回目でやっとこさ静坊を出して、そのあとの選択はヅラにまかせっきりだったな」
「増えたセリフ、何色だった?」
「そうなんだよ、コイツの指示通りやると、選択肢が1個増えるんだ」
「で、何色だったの?」
「紫? だったな」
「へ? ピンクじゃないの?」
「確かにピンクもあったな。けど選択は常に紫だった」
「雪乃? さてはアンタ、いじったわね?」
「少しよ。大体、製作者サイドだけで楽しもうっていうのが気に入らなくて。少し改変しましたわ」
雪乃はゲームのプログラムに若干手を加えていたようだ。
「電子戦の初歩よ。このくらい、淑女のたしなみですわ」
「ははぁ。御見それしやしたぁ」
フン、とドヤ顔の雪乃に、リナがわざとらしく頭を下げた。
「で、どうだったの? 静流とは、シたの?」
「それがよぉ、もう少しって所で『検閲』の字が肝心な所にな。セリフも真っ黒になるし」
「学生なんですから、当然でしょう?」
「検閲って、確か生徒会がやってたわよね?」
「って事は、もしや……睦美め」
睦美のニヤついた顔を想像し、薫子は憤慨した。
「雪乃様、何とかして下さいましまし」
忍が慣れないお嬢様言葉を使った。
「お止めなさい忍、気持ち悪いですわ」
「お願ぁい、雪乃様ぁ」
薫子までが雪乃にすがり付き、懇願する。
「んもう、仕方ないですわね。ちょっと待ちなさい………これで良し、と」
あまりにしつこいので、雪乃は根負けしてソフトの内部を改変させた。
ゲーム機ハードに魔力を流し、ものの数分で終わったようだ。
「むほぉ、丸見えじゃんか」
「うわ。あの子たちったら、マセガキどころじゃ済まないわね」
「下品ね。ムードもへったくれもあったもんじゃない。検閲が入るのも当然ですわ」
「スキャンしといて。睡眠カプセルに入れるから」
四人は文句を言いながらも、他のエロシーンを余すところなく全て鑑賞した。
「聞いちゃったぁ、聞いちゃったぁ♪」
薫子は、後輩たちにもらったアカウントを使い、静流の『完全密着ライブ中継』を初めて見ていた。
「スゴいわね、さっき見始めたら、もうこんな情報が入って来るなんて」
そう呟いたと同時に、部屋のドアが乱暴に開いた。バァン!
「薫子、土曜日に静流が……見てたのね」
「当然よ。ちょっと忍、いきなり入って来ないで頂戴!」
忍が薫子の部屋を見渡す。
「う、コレ、どうやって手に入れたの!?」
「ちょっとした伝手よ。いいでしょう? ムフゥ、静流なら無加工でも遜色ないのに」
忍が指差しているA4の写真立てには、例の隊員募集のポスターが入っている。
恐らくブラム辺りを使って、軍から仕入れたのであろう。
「何で静流が軍のポスターに?」
「あの子が軍の広報に頼まれたって言う事みたいよ。まだどこにも出回ってないの。ムフゥ」
「くっ! 不覚だわ」
「アナタだって、あのタペストリーはどうやって手に入れたのよ?」
「見たな? アレは『黒魔』からもらった販促用。当然非売品。ヌフゥ」
このあと、静流グッズの自慢話で盛り上がった。
「で、どうするのよ? 忍は?」
「当然行く。偶然を装って」
「そうか。学校じゃないから、偶然バッタリもOKよね?」
「「ぬふふふ」」
二人が珍しく意気投合している。
「ねえ、アノ恋愛シュミレーションに、静流がいたんだけど?」
「ああ、アレ? 静流出すの大変だったでしょう?」
以前、『塔』でリナがプレイしていた恋愛ゲームの事である。
「その辺はリナがやってた。誘うのに失敗して、その後出なくなった」
「愛が足りないのよ、リナやアナタじゃ、ね」
「ぐぬぬ、そう言う薫子は、上手くいったの?」
「そりゃもう、って言いたいんだけど、ダメだったわ」
「何が正解なの? やっぱ『力仕事』?」
「あ、違うの。鉄板の選択肢が1個増えるって。鉄板のセリフは文字がピンク色らしいのよ」
「え!? 私の時は、全部白だった」
「開発者のブログにあったわ。見れたら超レアだってね」
◆ ◆ ◆ ◆
ワタルの塔 二階――
薫子と忍は、そのあと塔に寄った。
「リナに数十回トライさせてもダメだった」
「多分あそこの分岐から静流ルートがあるのよ」
娯楽室には、日中をほとんどココで過ごすリナと、珍しや雪乃の姿があった。
「おう、遅かったな」
「アナタたちに声を掛けたのですけど、何やらPCにかじりついていたので」
画面にはスタッフロールが表示されていて、エンディングテーマらしきものが流れている。
「ち、ちょっと待ってリナ、アンタまさか……」
「ああ、今さっき終わったぜ。『静坊のルート』」グッ!
リナはドヤ顔で親指を立てた。
「「何ィィ!?」」
二人は驚愕した。
「何で呼んでくれなかったの?」
「あ? だからヅラに部屋を覗いて来いって言っといたんだぞ?」
「アナタたちがあまりにも熱心に何かしてるから、邪魔しちゃ悪いかしら、って」
スタッフロールが終わり、『制作 桃魔術研究会』と表示される。
「まさかこのソフト、『黒魔』が作ったの? 『桃魔術』って?」
「そうよ。後輩ちゃんから入手したの」
「学生なのによくできてたわ。メジャーで売るならもっと手を加えないとダメですけど」
「お、まだ残りがあるみたいだぜ?」
リナがそう言うと、薫子と忍はガバっと画面の前に正座した。
……朝、小鳥のさえずりで起きる静流。
「う、う~ん。おはよう、〇〇〇」
ベッドで隣に寝ていた静流が、プレイヤーの方を向き、そうささやく。
「素敵な夜をありがとう。僕にとって、一生忘れられない夜になったよ」
そう言うと静流は、プレイヤーに近付き、目を閉じた。
FIN
イイ所で画面が真っ黒になり、今度こそ終わった。
「うわぁぁん! 静流ぅぅぅ!」
「誰かのモノになってしまったの!? 誰!?」
二人は頭を抱えて、悶え苦しんでいる。
「たかがゲームじゃないの。そんなに悔しがる事無いでしょうに」
「おい、ズラ、ここまで大変だったんだぞ? 少しは労えっての」
雪乃の言い草に、リナは少しキレた。
「私の指示通りやったお陰で、無事にエンディングまで見られたんですから、感謝してもらいたい位ですわ」フン
雪乃は髪をファサッと後ろに流し、若干ドヤ顔でそう言った。
「雪乃、アナタが指示したの?」
「ええ。大体このプログラムですと、静流さんの攻略は不可能よ」
「何ですって? それでどうやったらエンディングまでこぎ付けられるの?」
「あ? ああ、アタイが58回目でやっとこさ静坊を出して、そのあとの選択はヅラにまかせっきりだったな」
「増えたセリフ、何色だった?」
「そうなんだよ、コイツの指示通りやると、選択肢が1個増えるんだ」
「で、何色だったの?」
「紫? だったな」
「へ? ピンクじゃないの?」
「確かにピンクもあったな。けど選択は常に紫だった」
「雪乃? さてはアンタ、いじったわね?」
「少しよ。大体、製作者サイドだけで楽しもうっていうのが気に入らなくて。少し改変しましたわ」
雪乃はゲームのプログラムに若干手を加えていたようだ。
「電子戦の初歩よ。このくらい、淑女のたしなみですわ」
「ははぁ。御見それしやしたぁ」
フン、とドヤ顔の雪乃に、リナがわざとらしく頭を下げた。
「で、どうだったの? 静流とは、シたの?」
「それがよぉ、もう少しって所で『検閲』の字が肝心な所にな。セリフも真っ黒になるし」
「学生なんですから、当然でしょう?」
「検閲って、確か生徒会がやってたわよね?」
「って事は、もしや……睦美め」
睦美のニヤついた顔を想像し、薫子は憤慨した。
「雪乃様、何とかして下さいましまし」
忍が慣れないお嬢様言葉を使った。
「お止めなさい忍、気持ち悪いですわ」
「お願ぁい、雪乃様ぁ」
薫子までが雪乃にすがり付き、懇願する。
「んもう、仕方ないですわね。ちょっと待ちなさい………これで良し、と」
あまりにしつこいので、雪乃は根負けしてソフトの内部を改変させた。
ゲーム機ハードに魔力を流し、ものの数分で終わったようだ。
「むほぉ、丸見えじゃんか」
「うわ。あの子たちったら、マセガキどころじゃ済まないわね」
「下品ね。ムードもへったくれもあったもんじゃない。検閲が入るのも当然ですわ」
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