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第5章 夏の終わりのハーモニー

エピソード35-4

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ククルス島 統合軍海上基地 保養施設 エントランスホール――

 少佐を先頭に、次々と【ゲート】をくぐり、現地に到着する。

「さあ、着いたわよ。みんな、受付でチェックイン済ませるわよ!」
「了解!」

 受付で書類にサインをしている静流。とそこに、

「まぁ静流様! いらっしゃいませ!」

 歓喜の声を上げる受付嬢がいた。

「あれ? フジ子、さん?」
「ホントだ、どうしてココにフジ子さんが?」

 静流とレヴィが意外な人の登場に驚いている。
 フジ子はレヴィが所属するアスモニア航空基地の受付嬢である。

「知人のヘルプで参りました。ちょっとしたアルバイト? ですよ」

 フジ子はニコニコと微笑みながら、そう答えた。

「誰かがリークしたんですよ、きっと」

 レヴィは耳打ちで静流にそう言った。

「ではまた、営業時間外にお会いしましょう?」ニコ

 フジ子はお辞儀をして、奥に戻っていく。
 不審に思った静流は、他の受付嬢に聞いてみた。

「すいません、あの受付の方って……」
「ああ、フジ子ですか? 昔の受付仲間で、夕べいきなり来て、受付の真似事をタダでイイから……と」

「やっぱり、何か企んでますよ? あの人」

 レヴィと静流は顔を見合わせ、首を傾げている。



              ◆ ◆ ◆ ◆



 受付を済ませた一行は、レストランでモーニングを頂き、各部屋に案内された。
 4階フロアがみんなの部屋で、静流たちは角の三人部屋、401号室に通された。

「うわぁ。綺麗な海!」
「ホントね。潮風が気持ちいいわぁ」

 三人部屋に通された静流と美千留・真琴組。
 窓からのオーシャンビューに感激している。

「さぁて、何から始めよっか?」
「どうだろう、海に入ったあと、温泉かな?」
 
 女どもが勝手に予定を組み始めた。

「日焼けしたら、温泉って、しみないのかな?」
「バッチリ日焼け止め、塗るわよ?」

 話がまとまったらしい。

「静流? 何してんの?」
「え? 何が?」

 二人が腕を組んで静流を睨んでいる。

 「「早く出てって!」」

   「は、はいぃ」

 静流は着替えを持たされ、部屋を追い出された。
 海水浴場の脱衣所で水着に着替え、日焼け止めを塗りたくる。

「お背中にも塗りましょうか? 静流様?」
 
 背中から聞き覚えのある女の子の声がした。

「うわ。何だよロディか。ブラムもいるの?」
「ここにいるよー」

 シズムに扮したロディと、人間モードのブラムがいた。
 ブラムは赤いビキニ、シズムは何と、スクール水着であった。

「今までどこにいたの?」
「本に戻って少佐殿のカバンに入っていました」
「ウチはインベントリにいたよ」

「ブラムはさておき、ロディ、何でスクール水着?」
「マンガにあったのを参考にしました。一部のマニアには好評らしいです」
「まあイイか。意外に似合ってるんだよな」

 手の届かない部分に日焼け止めをロディに塗ってもらう。

「こちらには塗布しなくても?」
「ココは、イイです」

 ロディが海パンをグイと下げようとしたので、静流はあわてて止めた。



              ◆ ◆ ◆ ◆


 砂浜に降り立った静流たち。

「うわぁ。パンフにあった写真の眺めだ!」
「ウチ、塩水はふやけちゃうからパスね」

 ブラムはビーチパラソルの下でデッキチェアに横たわって手を振っている。

「そぉ?よし ロディ、アレに変身出来る?」
「お任せを」シュン

 静流はロディをジェットスキーに変身させた。前もって準備しておいたようだ。 

「それい! ゴー!」ブィーン

 静流が操縦するジェットスキーが、波しぶきを上げ、加速していく。

「やるわね静流クン、ちょっと広報、スチールに収めといて頂戴!」
「は、了解しました!」パシャッ

 少佐の指示で広報が静流の写真を撮りまくっている。何でココに軍の広報がいるのか?

「静流クーン、アタシたちも乗せてよ!」
「あ、リリィさん、仁奈さん」

 静流が浜辺で手を振っているリリィたちに気付き、ジェットスキーを降りた。

「みてみて静流クン! どぉ? この柄」

 リリイが着ているビキニの柄は、ペイズリーであった。
 
「静流クンの好きそうな柄にしてみたんだ♪」

 仁奈が着ているワンピースの柄は、やはりペイズリーであった。

「いわゆるペイズリーってヤツですよね? エスニック? と言いますか」
「あり? もっとコーフンしてくれるって思ってたんだけどなぁ」
「何でですか? 十分セクシー、ですよ?」
「だって静流クン、ゾウリムシのエッチ見てコーフンしてたじゃん」

 リリイは口をとんがらせて残念そうに言った。

「え? ああ、あれは素直に感動していたんですよ。生物の神秘と言うか何と言うか」
「なぁんだ。そうだったの?」
 
 二人は笑いながら、ジェットスキーに乗り込む。

「イイですか? しっかり掴まってて下さいね?」ブブブ

 走り出した瞬間に、リリィは静流に抱き付いた。

「きゃぁぁ。結構速いね」むにぃ
「リリィさん、胸、当たってる」
「イイの。わざとやってるんだから」

 静流は赤面しながら周囲を一周したあと、速度を緩め、岸に停めた。

「はぁ、気持ちよかったぁ。ありがとうね、静流クン!」
「楽しんでくれて、僕も嬉しいです」ポォ

 静流は照れながら、首の後ろを掻いている。

「次は、私を乗せて頂戴よ、静流クン?」
「イイですよ、仁奈さん」
 
 すかさず仁奈が後ろに乗り込んだ。

「うーん、気持ちいい」むぎゅう

 仁奈もリリィに負けじと静流の背中に胸を押し付ける。
 すると、やっと準備が出来たのか真琴と美千留が走って来た。
 静流も二人に気付き、ジェットスキーを岸に寄せる。

「あー気持ちよかった。またね、静流クン」
「はい、またあとで」

 満足した仁奈はリリィたちのもとに帰って行く。

「静流? 何ニヤけてるの?」
「しず兄のスケベ!」
「イイじゃないか、たまには」
「あ、開き直った!」

 水着に着替えた二人を見て、一瞬ドキッとした静流。
 真琴は白いワンピースで、均整の取れた体のラインがくっきり見えて、ビキニよりエロい。
 美千留はお約束のフリフリがついた可愛いタイプのチェック柄のワンピースである。

「二人共、結構似合ってるよ」
「そ、そぉ? セクシー、かな?」カァァ
「うん。イケてる」
「私だって、もう2、3年すれば、向こうのお姉さん並みにバインバインになるんだからね?」
「わかったわかった。カワイイよ、美千留」
「わかれば、よろしい」カァァ
 
 二人をヨイショした静流は、二人をジェットスキーの後ろに乗せ、周回コースを回った。
 ちょっと疲れた静流は、二人を降ろし、ブラムのいるビーチパラソルに戻った。
 ロディをシズムに戻し、デッキチェアに座る。

「ふう。気持ちよかったぁ。ありがとうロディ」
「お喜び頂いて、何よりです」

 すると静流たちのビーチパラソルに近づいて来る者がいた。

「ねぇ、静流クン? 私の水着、イイでしょう?」

 今度は少佐だった。ハイレグのワンピースは、やはりペイズリー柄であった。

「うん。とっても似合ってます。実にセクシーですね」

 静流はごく一般的な感想を淡々と述べた。

「あら? おかしいわね。もっとこう、ハアハアするとか無いわけ?」

 予想を大幅に外し、不思議がっている少佐。

「少佐殿、ひそひそ」

 リリイが事の顛末を小声で説明する。

「何ですって? まあイイわ。次の作戦に移るわよ?」 

 『水着で悩殺作戦』はどうやら失敗だったようだ。
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