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第3章 失われた時を求めて  転移魔法、完成……か?

エピソード23-4

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魔導研究所 闘技場――

 模擬戦闘用ゴーレムの配置が終わり、いよいよテスト開始である。
 
「よし!やってみよう。行くぞ!『念力招来』!!」ゴゥ

 静流は首に提げた勾玉を握り、変身のキーとなるワードを唱える。
 静流の身体を桃色のオーラが覆い、バチバチとプラズマ現象が起こる。
 オーラが消え、中から戦国時代の鎧武者を思わせるデザインの防具を付けた静流が現れる。
 藍色を基調にした、オーソドックスなタイプの甲冑だった。

「やったであります! 成功であります!」

 佳乃は嬉しさの余りピョンピョン跳ねている。

「これが基本モードの『百花繚乱』か。うん、悪くない。いいね」

「模擬戦闘、開始!」
 少佐がそう言うと、黒い全身タイツのゴーレムがわんさか現れた。

「「「イイ、イイ」」」

「先ず、俊足を生かし、敵を翻弄する! チェンジ!『疾風迅雷』! ビシッ」

 静流は腰にあるデッキケースからモードチェンジ用のカードを選び、スロットに挿入した。
 バシュゥ! と言う音と共に、緑を基調とした甲冑に身を包んだ静流が現れた。

「お、軽いぞ、これなら速く走れそうだ。シュタッ」
 ゴーレムを翻弄しながら、技コマンドカードを挿入した。

「『電光石火!』刀を抜き、超速でひたすら斬りまくる。


「「「イイー」」」バタバタッ


 ゴーレムは一瞬で無数の刀傷を受け、倒れる。

「良し、次だ。チェンジ!『一球入魂』! ビシッ」
 バシュゥ! と言う音と共に、橙色を基調とした甲冑に身を包んだ静流が現れた。

 技コマンドカード『百発百中』を挿入。弓を引き、数本の光の矢をつがえ、上に向けて一気に放った。シュバッ


「「「イイー」」」バタバタッ


 ゴーレムは雨の様に降り注ぐ光の矢を受け、倒れる。

「良し、次。チェンジ!『一騎当千』! ビシッ」
 バシュゥ! と言う音と共に、白を基調とした甲冑に身を包んだ静流が現れた。

「技コマンドカード『一刀両断』を挿入。長刀を抜き、前方にいる数体のゴーレムに向かい、上段から袈裟懸けに斬り込む。ザバァ


「「「イイー」」」スパッ


 ゴーレムは長刀から放出された鋭い波動により、真っ二つに裂け、倒れる。

「どうです? スゴいでしょう!」ハァハァ
 実体化した自分がデザインした衣装に興奮気味のサラ。

「さすが静流様ね。何を着けてもサマになってるわ」
 ナギサはうっとりしながら静流を見つめている。

「ふむ。悪くないわね。暴徒鎮圧とかに活躍出来るか……」
 少佐はデータをとりながらブツブツ言っている。

「イイじゃん、気に入った」パァァ
 鎧をまとった状態の静流から、笑みがこぼれた。

「ムハァ。町娘ならイチコロね?」

「この格好で遊郭にでも行ったら、ちょっとしたクーデターが起こるわよ。ムフゥ」
 軍人のお姉様方が悶えていると、

「静流様、あの、まだ残ってますよ……とっておきのカード」
 サラはモジモジしながら、最後の鎧モードにチェンジを促した。

「ん? コレか。チェンジ! 『容姿端麗』!ビシッ」
 パシュゥ! と言う音と共に、桃色を基調とした甲冑に身を包んだ静流が現れた。

「この色使い……ん? 何か女物みたいなんだけど?」
 そう言われてみれば、どこか華奢なイメージである。
 『愛』と大きな文字があしらわれている兜からのぞく長い桃色の髪は、縦ロールが掛かっている。
 和風ビキニアーマーの足元は太ももまでストッキングで覆い、ガーターベルトで吊っている。

「ヌフゥ。『容姿端麗』モードは、『癒し』がテーマですから」

「待てよ? って事は胸……ある。下……無い」
 静流は胸と股間を確認すると、顔が真っ赤になった。

「性別まで変わってるじゃん! ダメダメ! 却下」
 ご丁寧に声まで高めになっている。

「ふぇぇ? 何でダメなんですかぁ?」
 サラは涙目になっている。

「良いじゃない? 油断させて敵の隙を突く、とか?」
 カチュア先生はこの鎧の可能性を探った。

「このモードは主に回復ですから、ナース的な意味でもアリ……かと」
 サラに説得され、静流はしぶしぶ残すことにした。

「ところでこの鎧の技って、ホントにコレ?」

「そうです! フフフ」

 静流は、指示された技コマンドカードを挿入した。バシュ

「やってみるか『極楽浄土!』」

 両手に刀を持ち、クロスさせてフィギュアスケートのスピンの様に回り出し、桃色のオーラを放った。フワァァァァ


「「「お、おお、イイー」」」バタバタバタバタッ


 周りを囲んでいた仮想敵は、オールレンジで桃色のオーラを浴び、エビぞりになって、昇天した。

「これ、イッてるわよね?」

「ええ。イってます。へへへ」
 ナギサの問いに、照れながら肯定するサラ。

「えげつない技だなぁ。あれほどエロ要素は控えめにって念押しといたのにぃ……」

「薄い本の真骨頂ですよ! 外せません!」
 サラはいつになく真剣だった。

「犠牲者を出さずに無力化できるとは……ある意味究極奥義ね」
 少佐は至極真面目に分析した。

「これって、男じゃダメなの?」
 静流は食い下がった。

「確かに。基本の『百花繚乱』だって、『イケメンフラッシュ』!とか使ったら雑魚くらいだったらイクんじゃないかしら?」

「ちょっと待ってよナギサ、論点がズレてる。イカす事が目的になってんじゃん!」

「静流様は暴力嫌いでしょ? そういうのナシで済むんだったら、イカせるのもアリなんじゃないかしら?」

「ま、まぁそうなんだけどね」

「静流様、想定される敵って、何だかんだ言って男性の方が多いと思いません?」
 サラはごく当たり前の意見を述べ、静流を論破した。

「確かに……。そうか。そう考えると、女性キャラを使用する事がいたってノーマルに思えてくるな」
 女子たちにまんまと言いくるめられている静流。

「あとは敵が女性だった場合ですよね? じゃあ、こんなのはどうでしょう?」
 サラはノートに追加事項を書き込んで、静流にダウンロードさせる。

「ちょっとやってみる。 反転! 裏モード『眉目秀麗!』」

 『容姿端麗』のカードを一度抜いて、裏返しにする。
 パシュゥ! と言う音と共に、容姿端麗モードの反転と思われる、桃色から黒に変わった鎧を付けた静流が現れた。
 女性的な鎧から、スリムながら男性的なデザインの鎧に、両手剣を携える。
 兜の『愛』の文字は残され、兜からのぞく長い桃色の髪は、サラサラのストレートである。
 左目を眼帯が覆う、超絶美形の静流となった。

「ムフゥ。これは破壊力抜群ね」ハァハァ
 仁奈の興奮状態はMAXを迎えようとしていた。

「んはぁ、凄いオーラね。女ゴーレムを投入!」
 少佐は女性型のゴーレムを向かわせた。
 
「もうヤケだ! 技発動! 『旭日昇天』!」

 反転前と同様に、両手に刀を持ち、クロスさせてフィギュアスケートのスピンの様に回り出し、桃色のオーラを放つ。フワァァァァ


「「「あん、ああっ、イクー」」」バタバタバタバタッ


 周りを囲んでいた女ゴーレムは、オールレンジで桃色のオーラを浴び、エビぞりになって、昇天した。
「ムフゥ。物凄い技ね。見ているこっちも変な気分になっちゃう」

「それより静流様ですよ。絵になるわぁ」ハァハァ

「ねえ、みんな、この設定ってホントにいるかなぁ?」 


「「「「「絶対アリ!」」」」」


 みんなの声がシンクロした。

「ちょっと、今までの撮れてる?」

「バッチリであります! 少佐殿」

「スチールも用意して! 早くぅ!」
 この後は遊園地のヒーローショーのようなノリで、撮影会が始まった。

「しかしこの『眉目秀麗』モード、たまんないわね」ムフゥ

「先程レヴィに画像をメールしたら、悶絶していたらしいでありますよ? 彼女は『歴女』でありますから」
 少佐と佳乃が楽しそうに語り合っていた。

「サラ殿、やはり自分は忍者枠の『アサシンモード』を追加すべきだと思うのであります」
 佳乃はサラに注文を付けた。佳乃にとって、やはり忍者は捨てがたいようだ。

「そうですね。不可視化で隠密行動とか幻覚で翻弄するとか……アリかもです」

「そうであります! 難攻不落の要塞に静流様お一人で潜入し、敵に気付かれないように一人ずつ無効化していって、最後にクモだかカニだかに似た巨大メカと戦うんであります!」フーフー

「佳乃さん、それって超メジャーなゲームにありますよね? 具体的過ぎますよ」

「斥候か。情報を集めたりするには便利よね? 面白そうね。イイんじゃない?」
 ナギサは、利用価値がありそうだと思った。

「是非ともカードに追加して欲しいであります!」

「わかりました。ラインナップに入れておきます」

「ねぇ静流様、コレでトレーディングカード作ろうよ!」
 アンナは右手で「お金」を連想させる仕草をした。

「商標登録とかがあるから慎重にやらないと。シズルカの件もあるし」

「そう言うのはオトナに任せなさいって」
 リリイが首を突っ込んだ。

「儲け話には目が無いもんね、アナタ」
 仁奈はジト目でリリイを見た。

「ホントにやるときは相談してよね?」
 リリイは静流にウィンクした。

「はぁ、わかりました」

「損はさせないつもりよ? 勝算もあるし」

「何です? 勝算って」

「その時の、お楽しみ♪」
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