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第一部
1-28「怪物との遭遇(4)」
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「じゃ、まずは放課後の練習ね」
野球部のマネージャーとはどんなことをするのか体験をしたいと話す二人を、野球部のグラウンドに連れてきた。
まだ放課後になったばかり。着替えを終えた生徒がまばらに顔を出している状況だ。まだ練習本番ではないが、マネージャーの仕事はここから始まる。
「じゃ、まず最初の仕事……お茶出しね」
二人を連れて準備室の扉を開く。部屋の中を見渡すと、すでに先に来ていた先輩たちが軽めの用具を選んで行ったのだろう。残っているのは、準備する中でも体力を使うタイプのものしか残っていない。
――出遅れた!
心の中で舌打ちをしてから、由香は容器を手に取る。赤い容器にスポーツドリンクの素を入れてから音葉に、緑の容器にお茶の素を入れてから真奈美にそれぞれ手渡した。
「スポーツやったことあるなら見たことあるかもだけど、これは〝ジャグ〟っていう入れ物で、見てわかるように飲み物を入れるヤツ」
由香自身も青色のジャグを二つ取り出すと「じゃ、行こっか!」と準備室を後にした。
「これ、色分けって何か意味があるんですか?」
「赤のジャグはスポドリ、緑のジャグはお茶を入れるって感じ」
「なるほど」
感心しながら真奈美は手渡された袋を開いてお茶の素を。「中学で経験あったんですけど、結構大きいんですね」と呟くと、音葉は「八リットルか」と容量を確かめる。
「海瀬は中学の時マネやってたんだ」
「はい。選手だったんですけど、怪我しちゃって……ほんの短い間でしたけど一応経験はあります」
「そっか。経験者ってのは助かるなー!」
「ごめんなさい、未経験で」
「あ、気にすることないよ! 私もマネなんてやったことなかったし!」
「そうなんですか?」
「そうそう。ただ野球が好きだって理由だけで選んだから!」
そこまで話すと、グラウンドに備え付けの水道へ。水を入れると、その重さは数倍にもなる。
――ほほぅ。
経験者と言っていた音葉は大丈夫だろうと思っていたが、もう一人の真奈美も軽々と八リットル入ったジャグを持ち上げている姿に、由香はガッツポーズをして唸った。
「凄いね、一発目から持てると思わなかった」
「以外にパワーあるんですよ」と真奈美は胸を張りながら「でも、やっぱ結構重いです……コレ余ったらどうするんですか?」と質問を投げてきた。
「基本的には余らないよ! 寧ろ何回か入れ直したりするレベル」
「えっ、無くなるんですかぁ⁉」
「打撃練習の時はそこまでなんだけど、守備練習の後なんかはすぐねぇ。この時期でもあっという間に無くなっちゃうよ!」
「なるほど……高校生恐るべし」
少しだけだが、根性もありそうだし力もある。
――もしかしたら入ってくれるかも。
由香は青色のジャグに水をためながら笑みを浮かべた。
※
二人との勉強会を終えると、空はもうすっかり赤く染まっている。
今更練習に参加するわけにもいかないな、と悩んでいると、二人に提案されて土手でキャッチボールをすることに。
近場の土手。まだ太陽は沈んでいないので、ギリギリボールは見える。
――ま、キャッチボール程度ならいいか。
簡単なアップを済ませると、各々自前のミットを取り出した。一星が出したキャッチャーミットで確信を持った雄介に、彗が「なあなあ、一個提案」と話しかける。
「ん?」
「さ、そろそろ本気で行くぜ。な、坂上さ、絶対当てねーから、バッターボックスっぽいところに立ってくれよ」
野球部のマネージャーとはどんなことをするのか体験をしたいと話す二人を、野球部のグラウンドに連れてきた。
まだ放課後になったばかり。着替えを終えた生徒がまばらに顔を出している状況だ。まだ練習本番ではないが、マネージャーの仕事はここから始まる。
「じゃ、まず最初の仕事……お茶出しね」
二人を連れて準備室の扉を開く。部屋の中を見渡すと、すでに先に来ていた先輩たちが軽めの用具を選んで行ったのだろう。残っているのは、準備する中でも体力を使うタイプのものしか残っていない。
――出遅れた!
心の中で舌打ちをしてから、由香は容器を手に取る。赤い容器にスポーツドリンクの素を入れてから音葉に、緑の容器にお茶の素を入れてから真奈美にそれぞれ手渡した。
「スポーツやったことあるなら見たことあるかもだけど、これは〝ジャグ〟っていう入れ物で、見てわかるように飲み物を入れるヤツ」
由香自身も青色のジャグを二つ取り出すと「じゃ、行こっか!」と準備室を後にした。
「これ、色分けって何か意味があるんですか?」
「赤のジャグはスポドリ、緑のジャグはお茶を入れるって感じ」
「なるほど」
感心しながら真奈美は手渡された袋を開いてお茶の素を。「中学で経験あったんですけど、結構大きいんですね」と呟くと、音葉は「八リットルか」と容量を確かめる。
「海瀬は中学の時マネやってたんだ」
「はい。選手だったんですけど、怪我しちゃって……ほんの短い間でしたけど一応経験はあります」
「そっか。経験者ってのは助かるなー!」
「ごめんなさい、未経験で」
「あ、気にすることないよ! 私もマネなんてやったことなかったし!」
「そうなんですか?」
「そうそう。ただ野球が好きだって理由だけで選んだから!」
そこまで話すと、グラウンドに備え付けの水道へ。水を入れると、その重さは数倍にもなる。
――ほほぅ。
経験者と言っていた音葉は大丈夫だろうと思っていたが、もう一人の真奈美も軽々と八リットル入ったジャグを持ち上げている姿に、由香はガッツポーズをして唸った。
「凄いね、一発目から持てると思わなかった」
「以外にパワーあるんですよ」と真奈美は胸を張りながら「でも、やっぱ結構重いです……コレ余ったらどうするんですか?」と質問を投げてきた。
「基本的には余らないよ! 寧ろ何回か入れ直したりするレベル」
「えっ、無くなるんですかぁ⁉」
「打撃練習の時はそこまでなんだけど、守備練習の後なんかはすぐねぇ。この時期でもあっという間に無くなっちゃうよ!」
「なるほど……高校生恐るべし」
少しだけだが、根性もありそうだし力もある。
――もしかしたら入ってくれるかも。
由香は青色のジャグに水をためながら笑みを浮かべた。
※
二人との勉強会を終えると、空はもうすっかり赤く染まっている。
今更練習に参加するわけにもいかないな、と悩んでいると、二人に提案されて土手でキャッチボールをすることに。
近場の土手。まだ太陽は沈んでいないので、ギリギリボールは見える。
――ま、キャッチボール程度ならいいか。
簡単なアップを済ませると、各々自前のミットを取り出した。一星が出したキャッチャーミットで確信を持った雄介に、彗が「なあなあ、一個提案」と話しかける。
「ん?」
「さ、そろそろ本気で行くぜ。な、坂上さ、絶対当てねーから、バッターボックスっぽいところに立ってくれよ」
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