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Session.

最終回 僕はやっと冒険者となる――。

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 実は今、僕とボクの創造した世界の町中に造られた広場に居る。


 青い空が広がり、心地良い日差しが降り注ぎ、柔らかな微風が僕の頬を撫でる。

 時折、噴水から噴き上がる澄んだ水が、日差しによって照らしだされ、美しい虹が架かる。

 広場で憩う住人達も、各々が長閑に日常を満喫している、とても和やかな風景――。

 現実に存在しているのだと、僕の五感を容赦なく刺激する――。


 そして、仮想空間でもなければ異世界でもない、何処とも言えない不思議な場所。


 僕が夢にまで見て思い描き、必死に創造した世界に他ならなかった――。

 常識では考えられない常軌を逸した奇跡の力で、それは正しく現実となった――。


 僕の目に映る景色は紛れもなく、この現代の何処かにしているのだ――。


 TRPGのセッション中は、紙に書いた地図とGMが語る内容とで、NPCの動きなども本来は脳内で補完する情報。

 それらが視覚情報として、実際に目の前に見えているってんだから、最早、感動しかないよ。


 本物の異世界に飛び込んだかと、錯覚するほどに――。


「これだよ、これ! 最高かよ! やっと僕の創造した世界で、正しく冒険ができるよ、うん」

 GMなボクの救済イベントの報酬で購入した、真新しいピンクの伊達メガネ、クイッ! で、香ばしくポーズを取りながら感慨深く頷いた僕。

 今日はパートナーと一緒に冒険者組合へと出向き、この世界の冒険者として正式に登録に行く予定。


 ちなみに僕にとっては、生まれて初めてのデートとなる記念すべき日でもある。


 ミックスにそっくりな女神像が誇らしげに建っている噴水の前で、青空の下のベンチに腰掛け、逸る気持ちを抑えて今か今かとパートナーが来るのを、本当に心待ちにしていた――。


 程なく、聖魔術師特有の白い神官服に身を包んだパートナーが、足早に広場へとやってきた――。


「――あ、ルッカ姉! こっちこっち!」

 ベンチから立ち上がって、大袈裟に手招きをする僕。

 パートナーはルッカ=ルッカと命名。
 またしても安直だけど、良いんだそんなで!

「はぁはぁ――お、お待た~、ミックス――すぅ~はぁ~」

 息を切らして僕の側まで駆け寄ってくると、深呼吸をして息を整えている。

「ふぅ――遅くなってごめんね、ミックス」

「ルッカ姉? ――うっぷ」

 いきなり僕を抱きこんだルッカ姉。
 たわわ過ぎる凶悪な果実と、仄かに香るルッカ姉の匂いに、僕は気持ち良く殺されて、短い人生を終えてしまうのか――。

「――ぷはっ! 窒息死するから! 抱きしめる力は加減して! 本気で!」

「あ……ご、ごめん! つい――嫌だった?」

「加減さえしてくれたらガンガンきて! でもね、死ぬから、ルッカ姉のは凶器だから!」

「解ったわよ、しょうがないね」

 NPCだけどGMのボクが操ってはいない、自我のある実在する一人の女の子。
 なので僕もそう扱う事にする。

 なんせ僕は一人っ子で、友達と呼んで差し支え無さそうなのは悪魔なボクだけ――コミュ症で悲し過ぎる。

 僕とボクで創造した世界から現実の僕に戻っても、お姉さんで居てくれる。凄く嬉しい。
 過度なスキンシップありの、僕に激甘な理想以上のお姉さんなのです――えへへ。

「ルッカ姉は聖魔術師で良かったの?」

 そう尋ねるけど、選んで設定したのは僕。
 生きている人となんら変わらない個性を持つルッカ姉なので、本人が嫌なら変えるつもりで聴いた。

「前衛で頑張るミックスを、後方から支援するのが私の役目よ? 勿論、日常でも癒してあげるから、ガンガン甘えてね」

「ありがと……凄く嬉しい」

 僕とボクで創造した世界だけに道中迷うこともなく、剣と盾の紋章が掲げられた、一際、大きな建物の前へとたどり着いた僕とルッカ姉。
 今日の目的地である冒険者組合の建物だ。

「良くもまぁ……ボクってヤツはとことん凄い悪魔だと思うよ、うん。どんだけって感じ」

 建物の中は一階がロビーとなり、依頼受付と素材買取、雑貨販売窓口が併設。
 その横に掲示板が併設されているといった、お馴染みの造りになっている。


 ロビーはちょっとした酒場にもなってて、そこに阿呆ほどの人がごった返してた。


 其々に個性があり、独立して動き、喧騒な声が響いて活気があって……。

「これだけのNPCを配置して個々に捌くって……ボクがGMで良かったよ!」

 そう呟くと、僕の頭にドヤ顔でニヤけるボクの顔が唐突に浮かんだ。

「ルッカ姉。早速、登録してそのまま依頼を受けて、ちゃちゃっと冒険しよう!」

「了解、ミックスの好きにして良いよ」

 登録窓口に座っている、ちょっとお相撲さんのような太さの受付嬢の前にやってくる。


 ボクのセンスが今ひとつ不明瞭になってきた。


 受付嬢は万国共通、容姿端麗と相場は決まってたと違うん?
 何処かのおかんみたいな容姿なのは、何?

「あら? 見ない顔ね? もしかして冒険者登録かしら?」

 見た目とは裏腹に、可憐なアニメ声で親切に話を、しかも勝手に促してきた。


 うん、ビックリした。ボクにしてやられた。


「えっと、僕と僕の連れの二人をお願いします。これ、二人分の登録料の一万エンです。この水晶に触れば良いね――あ」

 浮き浮き気分の僕は、痛恨のミスをやらかした!
 つい、創造主たる僕の知識で会話し進めちゃった。
 駄目なプレイヤーの代名詞じゃん。

「――その通りだけど、僕は誰かに教わったのかな?」

 首を傾げながら、怪訝そうに尋ねてくる受付嬢。

「あ、うん。冒険者の知り合いが居て……僕が登録に行くって話したら、懇切丁寧に教えてくれて……ははは」

 苦笑いしつつ良くある言い訳で誤魔化す僕は、ごめんとGMなボクに心で誤っておく。


 そして、手順通りに進めていき無事に登録し終えると、受付嬢から初等級の証である、階級章を手渡された。


 階級章とは、僕とボクの創造した世界における身分の証。
 等級が解るように、軍人の認識票ドックタグみたく首から提げておく物だよ。

 見習い、初等級、中等級、上等級、特等級、ゆう等級、しん等級と、レベルごとの七段階に別け、無色、白、黄、青、緑、銀、金と、各等級ごとに色分けもして、一目で解るように設定してある。

 ちなみに神等級から先は未だ存在しないことになってて、悪魔なボクの案を採用し、一律に黒となっているよ。

 ちなみに現在の僕は2レベルだから、初等級の白い階級章になるね。

「僕とルッカ姉は遂に冒険者だ! 早速、依頼を見に行こう!」

 階級章を愛しのルッカ姉の首に提げてあげ、これから始まる壮大な冒険に逸る気持ちのまま、手を引いて掲示板へと向かって行った――。


 これから起こる凄惨な悪魔の宴に巻き込まれ、その身を捧げることになるとは、この時の僕は夢にも思っていなかった――。



 ――――――――――
 続きは広告の後。
 運命はサイコロのみぞ知る!(完)



【謝辞】
 此処までお付き合い頂き、本当に有り難う御座いました。
 意図しない誤字脱字に、ウザいルールの記述等々……お目汚し、大変失礼致しました。

 創造したファンタジー世界で繰り広げられる、悪魔と1on1な残虐非道の壮絶な冒険の様子は、またいずれ製造したいと思います。_φ(・_・
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