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Session.

第七回 僕の旅立ちの日?

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 僕とボクで入念に準備し始めて、早二ヶ月が過ぎた頃、ようやく全ての準備が整った。

 そして最後の所持金を決定する為、部屋にある小さなちゃぶ台の上にグリモワール魔導書とキャラクターシートを準備する僕。

 これさえ決まれば、僕とボクの創造した世界へと旅立つことができる――。


 冒険序盤は稼ぎが少ない。


 僕とボクが創造した世界においても、そこは変わらないんだ。
 序盤からお金があるのとないのでは、雲泥の差になるから。
 初期の所持金についてはダイスを振り、その出目が全て――だから気合いを入れる。

 禍々しい筆記用具で書き込む準備を整えた所で、あまりの緊張にゴクリと息を飲んでしまった。

 そして、運命の白と黒のダイスを同時に振った――。

 僕とボクの創造したルールでは、全ての行為判定で100もある数字の中から1が出たら、ファンブル致命的失敗となる決まり事が存在する。


 どんなことにも、100パーセント成功する保証はないと言うこと。


 それでも自動的に失敗するリスクは、たったの一パーセント。
 そして、今、ちゃぶ台の上で止まったダイスが示している数字は、1。


 つまり、やらかした。所持金ナッシング。
 まさかの一文無しからのスタート。


『ここでファンブルはないわ~、あははは~! お、おいし過ぎる~! あははは~』

 腹を抱えて大笑いのボクが、床を思いっきり転げ回ってくれやがった。

「ちょっと、笑い過ぎだよボク! 最低限のお金も持たず冒険に行けってか!」

 最低限の所持金を最初から持ってるようにしておけば良かったと後悔しても遅い。

『僕とボクで決めたことじゃないか。今更――ぷ、あははは~! 乞食から始めるってないわ~! あははは~』

「装備どころか服も買えないのは流石にテラヤバいって! GM裁量で救済処置、早よ早よ!」

『え~、やだよ。乞食からやって――ぷ、あははは~、お、お腹痛いし~』

「ボクは鬼か! 頼むから! ね、ね、他ならぬ僕の頼みは素直に聴いとこうよ!」

 序盤は死活問題。必死に食い下がった僕。

 折角、一生懸命に創造した世界で、何が悲しくて裸で闊歩しないかんの?
 武器も防具も背負い袋もなく、裸族ですら粗末な槍くらい持ってるのに?
 足を踏み入れた途端、ハイ終了って阿呆じゃん?

『ふぅ。散々、笑わせてくれたお礼に、ボクが振るつもりだったパートナーの分を、特例で僕に振らせてあげるよ』

「有り難う、ボク! 泣きの一発は絶対満額を出してやる! ダイスの女神さま、どうか僕を地獄の深淵からお救い下さい!」

 額にダイスを当てて祈りを捧げる僕は、泣きの一発に人生を賭けて振る!
 クルクル回るダイスを注視し、序盤の運命を決める重大な出目を見守った!


 そして僕の必死の祈りが通じたのか、とても素敵な出目が出た!


 それは、1。つまり、ファンブル。


『まさかの二連続ファンブル⁉︎ あははは~! ボ、ボクを笑い殺す気! ないわ~、あははは~! も、もう笑い死ぬぅ~! あははは~』

 より一層、腹を抱えて馬鹿笑いし、床を激しく転がり回ってバンバン叩くボク。

「絶対に呪われてるよ、このダイス! ネタなら面白いけど、僕はこれから自分自身を賭けて冒険に挑むの! これは死ねってか! 死ねって言うんだな、ダイスの女神さま!」

 笑い転げるボクにダイスを投げ付けてやろうかと殺意を抱くも、ギリギリ踏み止まって床を思いっきり殴った僕!

『ら、裸族万歳って、あははは~! パートナーも裸族万歳ってないわ~! あははは~!』

「ボクだけにムカつくわ~! こうなったらもう一度だけ勝手に振ってやる! えい、事後承諾ってやつだ!」


 出目は、1。つまり、またファンブル。


『まさかの三連続ときた⁉︎ あははは~! ボクを笑い殺す気満々だね~! ないわ~、あははは~! も、もう無理、死ぬぅ~死ぬぅ~! あははは~』

「ミックスのパラメータを決める時、ダイス運を使い切ったに違いない。三連続は酷い」

 さっきまでのワクワク気分は何処へやら。
 意気消沈して、激しく笑い転げてるボクの隣で項垂れる僕。

『ぼ、僕。ま、頑張れ。あははは~、あははは~』

 僕の肩をポンと叩きドヤ顔で鼓舞すると、再び激しく笑い転げ回るボク。


 煽ってんだな? 煽ってんだろ?
 

「こうなったら乞食でも裸族でもやってやる! 僕のキャラは男の娘だ!」

 決意のメガネ、クイッ! で、ボクに言い捨ててやった。

『そそ、為せば成るってね。最悪パートナーを売っちゃいなよ。た~んまりお金が入ってくるかもよ、僕――ぷ、あははは~』

「バートナーを売るってどんな鬼畜だよ? どんだけ悪魔的思考なんよ、ボクは。――で、いつまで笑ってんだよ」


 一時間経った頃、やっと発作が収まるボク――長ぇよ。


『いや~、流石は僕だ。二百万年分は愉しませてもらった感があるよ』

「そりゃ良かったね、ボク。僕が決めたルールでもあるから諦めても良いけど、標準装備の縞々柄のいけない布地一丁では、町や村にも入れない。――どうにかしてよ、ボク」

『追い剥ぎに遭いました。って言う、鉄板の言い訳で良いじゃん? ――って、素気なくするのも可哀想か。じゃあ、魂の四分の一で手を打とうか?』

 悪魔的笑顔になって、舌舐めずりをするボク。
 僕の姿だから忘れがちになるけど、ボクの性根はあくまでも悪魔だ。

「創造した世界のルールの範囲内で! しれっと喰おうとしないでよ、ボク!」

『冗談だよ、僕。――そうだね~。最初の冒険はチュートリアルを兼ねたでどう? 追い剥ぎを逆に追い剥ぐ――色々と滾るだろ、僕?』

 メガネ、クイ! の香ばしいポーズでニヤリと薄ら笑うボク。

「普通は周辺の弱敵を倒して経験点を稼ぐ、或いはお遣いか採取じゃないの? いきなり対人で命のやり取りって……ボクは鬼畜か!」

『悪魔だからね、ボクは。本格的に挑む前のプレシナリオってことで。敵さんも弱く報酬も多くした短いのを、今からサクッと用意するからさ?』

「救済措置か? どんな感じにシナリオが進むのか、体感するのには良いかもね」

 メガネ、クイッ! と悩ましげなポーズで返答する僕。

『はい、言質取って契約成立っと。じゃあ、敵さんだけするから。先に向こうに行って待ってら~』

「え⁉︎ いきなり⁉︎ ちょっ――」

 ボクが指をパチンと鳴らした直後、僕の視界がいきなり暗転!
 妙な浮遊感のあとで、僕は意識を手放した――。

 遂に僕とボクが創造した世界へと旅立った瞬間だった――強制的に。



 ――――――――――
 続きは広告の後。
 運命はサイコロのみぞ知る!(笑)
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