1 / 2
第二部 彼の国編――。
第一三話 懐かしき異界――彼の国で。
しおりを挟む
俺が今現在、立っている場所の景色。
見渡す限りの長閑な平原が視界に入っている。
現在から遡ること数年前のとある日、意味不明にこの異界の地――彼の国へと俺は降り立った。
そして生きるか死ぬかの地獄の日々を、何年にも渡って味わった――そんな俺が間違える筈もなく、間違えようもない。
思い出したくもない、辛い記憶が脳裏を過ぎる、ここ。
異界にしかない筈の、魔素を含んだ独特の空気を肌で感じる、ここ。
異界である『彼の国』で間違いはない――。
◇◇◇
「転移門も潜らずに異界に来ただって? しかもこんな何もない辺鄙な場所に降ろされるって……どう言うこと?」
何故か城内でもなければ、城下町近郊ですらない。
王城にある転移門が設置されている召喚の間ではなく、遠く離れた国境付近――人の住まない未開拓の平野に降ろされている。
「意味不明に壁に埋まるとかじゃなくて、良かったと言えば良かったけどさ……」
王城付近の何処かに降り立っていたならば、まぁ、解らんでもない。
術を放った召喚士が「え? 転移失敗……成功?」と座標をミスったとか、そう言った色々な理由も考慮して解釈ができるからだ。
だがしかし。今の彼の国は、正規の手順で悠長に俺を呼べる状況ではない筈――で、あれば。
ここに降ろしたのは、一体、誰だ?
普通なら十中八九、敵勢力絡みにはなるんだろうが……こんな平和で長閑な場所に、態々、招待される謂れもない筈。
漂流者のように、稀に起こる偶発的な異界渡りが、偶々、偶然、偶発的に、神がかったタイミングのミラクルで起きてしまった――とも考えられないこともないけどもさ。
「くっそ……全てが推測、憶測の域を出ない。ならば何が起きたのかを追及する以前に、現状把握に努めるのが最優先か。まぁ、確実に敵勢力の仕業ではないな。少なくとも」
俺の視界にチラチラと映っていた、直ぐ側で横たわっている四人を注視していく。
その内の二人はミサと姫君。
浅い呼吸だがちゃんとしているし、二人とも血色も良く目立つ外傷もないところを見るに、単に気絶しているだけっぽい。命には別状はなさそうで、まぁ、その辺りに問題はない……ないんだけれども。
メイド服に身を包んで倒れているミサの方は、特に大丈夫そうで良い。
と言うのも、姫君の方が実はある意味でめっさ悲惨だったから。
素っ裸でのM字開脚はない。
未婚かつ王族の姫君がだ、そんな誰にも見せたことのない霰もないミラクルたっゆーんな姿でだよ、白目向いて涎垂らして大口開けてのポカーンで気絶しているってんだから……色々な意味で大惨事。
「これは……気絶してて良かったと言うか……サービス、或いはギャグか? ――って、そういや服は着せてやってなかったな。マリーが嫌がるのを弄って辱めるとかなんとかの理由で、そのまま寝かしてたんだっけ? 本人が気づいた時には、毛布に包まってただけだったもんな。ただその毛布すらないってのは……鬼畜過ぎるな」
この写真を撮っておけば、後々の嫌がらせには都合が良いな――とか、つい思ってしまった。中々に鬼畜な俺だと今更に自覚。
「ま、とりあえずは華麗にスルー。残る問題は――」
そう。残る二人が大問題だった。
まず美幼女姿のマリー。
本来の姿であるマリアンヌ嬢に戻った状態で、扇状的な真紅のドレスに身を包み、優雅に横たわっていると言う点。
もしも敵勢力の仕業だとすればだ、態々、元の姿に戻し、敵に塩を送る意味が全く解らない。
「マリー……じゃない。今はマリアンヌにしてもだけども、これは一体どう言った類いの冗談だよ……」
そして更に意味不明の大問題なのが、姫君の側で倒れ込んでいる下衆徒君だった。
一目で元の中性的なイケメンである、魔に連なるゲシュタルト君と解るほどの面影を残しつつ、十歳前後くらいに小さくと言うか幼くしたものっそいイケメン超絶美男児の姿で、無様ではなく超絶格好良い香ばしいポーズで倒れていると言うか寝っ転がっていると言う点。
それこそパッと見だけは幼女と見間違うくらいの摩訶不思議さで、だ。
「なんで下衆徒君……って、イケメン執事の時は、ちゃんとゲシュタルト君と呼ぶ約束だったな。でも……なんでイケショタになって、更に格好良いポーズを取ってんのよ?」
首を傾げつつ考えるも、現状、正しい答えを得られるわけもなく、頭にハテナマークがただ乱舞するだけに終わるのだった――。
――――――――――
新たな悪戯はまだまだ続く。(笑)
見渡す限りの長閑な平原が視界に入っている。
現在から遡ること数年前のとある日、意味不明にこの異界の地――彼の国へと俺は降り立った。
そして生きるか死ぬかの地獄の日々を、何年にも渡って味わった――そんな俺が間違える筈もなく、間違えようもない。
思い出したくもない、辛い記憶が脳裏を過ぎる、ここ。
異界にしかない筈の、魔素を含んだ独特の空気を肌で感じる、ここ。
異界である『彼の国』で間違いはない――。
◇◇◇
「転移門も潜らずに異界に来ただって? しかもこんな何もない辺鄙な場所に降ろされるって……どう言うこと?」
何故か城内でもなければ、城下町近郊ですらない。
王城にある転移門が設置されている召喚の間ではなく、遠く離れた国境付近――人の住まない未開拓の平野に降ろされている。
「意味不明に壁に埋まるとかじゃなくて、良かったと言えば良かったけどさ……」
王城付近の何処かに降り立っていたならば、まぁ、解らんでもない。
術を放った召喚士が「え? 転移失敗……成功?」と座標をミスったとか、そう言った色々な理由も考慮して解釈ができるからだ。
だがしかし。今の彼の国は、正規の手順で悠長に俺を呼べる状況ではない筈――で、あれば。
ここに降ろしたのは、一体、誰だ?
普通なら十中八九、敵勢力絡みにはなるんだろうが……こんな平和で長閑な場所に、態々、招待される謂れもない筈。
漂流者のように、稀に起こる偶発的な異界渡りが、偶々、偶然、偶発的に、神がかったタイミングのミラクルで起きてしまった――とも考えられないこともないけどもさ。
「くっそ……全てが推測、憶測の域を出ない。ならば何が起きたのかを追及する以前に、現状把握に努めるのが最優先か。まぁ、確実に敵勢力の仕業ではないな。少なくとも」
俺の視界にチラチラと映っていた、直ぐ側で横たわっている四人を注視していく。
その内の二人はミサと姫君。
浅い呼吸だがちゃんとしているし、二人とも血色も良く目立つ外傷もないところを見るに、単に気絶しているだけっぽい。命には別状はなさそうで、まぁ、その辺りに問題はない……ないんだけれども。
メイド服に身を包んで倒れているミサの方は、特に大丈夫そうで良い。
と言うのも、姫君の方が実はある意味でめっさ悲惨だったから。
素っ裸でのM字開脚はない。
未婚かつ王族の姫君がだ、そんな誰にも見せたことのない霰もないミラクルたっゆーんな姿でだよ、白目向いて涎垂らして大口開けてのポカーンで気絶しているってんだから……色々な意味で大惨事。
「これは……気絶してて良かったと言うか……サービス、或いはギャグか? ――って、そういや服は着せてやってなかったな。マリーが嫌がるのを弄って辱めるとかなんとかの理由で、そのまま寝かしてたんだっけ? 本人が気づいた時には、毛布に包まってただけだったもんな。ただその毛布すらないってのは……鬼畜過ぎるな」
この写真を撮っておけば、後々の嫌がらせには都合が良いな――とか、つい思ってしまった。中々に鬼畜な俺だと今更に自覚。
「ま、とりあえずは華麗にスルー。残る問題は――」
そう。残る二人が大問題だった。
まず美幼女姿のマリー。
本来の姿であるマリアンヌ嬢に戻った状態で、扇状的な真紅のドレスに身を包み、優雅に横たわっていると言う点。
もしも敵勢力の仕業だとすればだ、態々、元の姿に戻し、敵に塩を送る意味が全く解らない。
「マリー……じゃない。今はマリアンヌにしてもだけども、これは一体どう言った類いの冗談だよ……」
そして更に意味不明の大問題なのが、姫君の側で倒れ込んでいる下衆徒君だった。
一目で元の中性的なイケメンである、魔に連なるゲシュタルト君と解るほどの面影を残しつつ、十歳前後くらいに小さくと言うか幼くしたものっそいイケメン超絶美男児の姿で、無様ではなく超絶格好良い香ばしいポーズで倒れていると言うか寝っ転がっていると言う点。
それこそパッと見だけは幼女と見間違うくらいの摩訶不思議さで、だ。
「なんで下衆徒君……って、イケメン執事の時は、ちゃんとゲシュタルト君と呼ぶ約束だったな。でも……なんでイケショタになって、更に格好良いポーズを取ってんのよ?」
首を傾げつつ考えるも、現状、正しい答えを得られるわけもなく、頭にハテナマークがただ乱舞するだけに終わるのだった――。
――――――――――
新たな悪戯はまだまだ続く。(笑)
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
現代に追放された悪役令嬢と従者が六畳一間での貧乏暮らしを強いられることになりました。誠に遺憾では御座いますが、家主の俺と家政婦も一緒にです。
されど電波おやぢは妄想を騙る
ファンタジー
現代に追放された悪役令嬢と従者が六畳一間での貧乏暮らしを強いられることになりました。
誠に遺憾では御座いますが、家主の俺と家政婦も一緒にです。
表題そのまんまですね(笑)
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~
桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。
そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。
頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります!
エメルロ一族には重大な秘密があり……。
そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる