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第肆章 終りゆく、日常――メフィスト編。
佰伍拾壱話 終焉、其の参。
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大好達の退避が無事に終わった頃。
一連の攻防を先ず制したのは、本当にギリギリで未来だった。
僅かに隙を見せたメフィストの右腕を掴むや否や、即座に握りつぶし、やっとの想いで俺的ライトセイバーを奪い返したのだ。
「はぁはぁ……なんとか取り返せた! 人質……違うか……はぁはぁ……パパのは敵の手に渡ると……はぁはぁ……ホント、厄介、極まりないわね、全く……はぁはぁ」
取り返した俺的ライトセイバーを握り締め、睨みをきかせつつ呼吸を落ち着かせる。
「ふぅ――この強度もだけど、起動してないっぽいのにエグい斬れ味って、ナニ? 大切なボクの痛手袋をこんなにズタボロにしくさりやがって――ボクの知る限り過去最大規模、あらゆる意味であかんヤツ――モスト・アンビーよ」
手にあるそれに言い聴かせるように、苦湯を飲んだ苦渋の表情で愚痴を吐き捨てた。
そう。メフィストはアイアンキャンディが穿たれる度に、寸分違わず俺的ライトセイバーを当てて合わせてきたのだ。
態と盾代わりにして受け止めたり流したりして、未来自身に壊させようと目論んで遊んでいたかのように。
その結果として、独特の破砕音が鳴り響く度に、アイアンキャンディの方が打ち負けて破損。
駆動部分を次々に潰されたのだった。
「ほう――中々にやりおる」
先ほどと同じく、握り潰された右手を瞬時に再生。
まだ本気ではない、まだまだ余裕が残っているぞと告げるが如く、愉悦に歪んだ不気味な薄ら笑いで嫌味の賞賛を贈るメフィストは
不遜な態度を、一切、崩さない。
「――煩いってのっ! その下品な顔、吠えずら描かせてあげるってのっ!!」
大切にしていた贈りモノまでズタボロにされ、更に激昂した未来。
俺的ライトセイバーを握り締め、メフィストに吼えて返す!
「吠えずら描かせるのは我であろう? 娘――耐えてみせよ」
愉悦に歪み切った表情は口端を吊り上げ、邪悪に染まりきった悍ましい失笑を漏らす。
直後、なんの予備動作もなく、メフィストの右腕に業火の槍が現れた瞬間、貫き焼き滅ぼすと言わんばかりに未来に向けて穿たれた!
その時――。
「――ん!」
直撃する瞬間、未来を横から素早く掻っ攫った永遠が居た。
俺と最妃を放置ってすっ飛んでった永遠が、遂に追い付き駆け付けたのだ!
業火の槍は未来を穿つに至らない。
さっきまで居た場所へと突き刺さる。
そして巨大な大穴が穿たれ地面を抉り、瓦礫云々を巻き上げ吹き飛ばした。
だがしかし。
「――ダレよ⁉︎」
余裕で躱すつもりだった未来は、邪魔をされたことに不満気に声を上げる。
「ん!」
そんな未来には一切お構いなしに、無表情のままでそっと地面に立たせる永遠。
「我の遊戯を邪魔するか! ――身の程を弁えよ!」
愉悦に歪んだ薄ら笑いから一転、遊戯の邪魔をされたメフィストは激昂し吼える!
先ほどと同じ要領でメフィストの右手から放たれた強大な業火の槍が、永遠を貫き焼き尽くそうと穿たれ迫る!
だがしかし。
「ん!」
到達する瞬間、永遠は巨大な盾を翳して前に出て、後方へと引き摺られ押し流されるもなんとか防ぎ切る!
「なっ⁉︎ ウッソっ⁉︎」
突然現れた自分と瓜二つな少女が、黒騎士のような身の丈もある巨大な盾を易々と操り防ぎ切ったことに、困惑を隠せない隣の未来。
「――ええ⁉︎」
退避して大好達を護りつつ見やっていたアイにしても、同様。
ほぼ同時に声を上げていた。
間髪入れず永遠が掻き消えて、未来も慌てて永遠に続き掻き消え、メフィストへと反撃に出た。
「ん!」
左回りに身を捻って、右腕に携える槍を渾身の力で穿つ永遠!
「小癪な――」
槍の直撃こそ逃すも、放った際の凄まじい衝撃波でメフィストを僅かに後退させた。
「んっ!」
怒涛の勢いで攻める永遠は姿勢を低く構え、突進突きでメフィストを突き崩しに掛かる!
「この!」
そこに未来が操る俺的ライトセイバーが迫るも、上体を逸らされ易々と躱されてしまった。
「ま――」「ん!」「ハッ!」
怒涛に次ぐ怒涛、更に怒涛かつ怒涛の超加速域での怒涛の攻めで、容赦なくしつこく攻め続ける永遠と未来に防戦一方のメフィスト。
「鬱陶し――」「ん!」「ハー!」
メフィストが何ぞ言いたいのだろうが、気にも留めない、言わせもしない!
我が道を行く永遠と未来の強力な協力タッグ――ぷ。失礼。
流石のメフィストも、若干、タジタジ?
「ん!」「ええぃ、小賢しい!」
息も荒げず顔色一つ変えず、右腕の槍で無数の突きを繰り出し追い縋る永遠は、死角からの超高速な突進突きを放って遂に仕留める!
絹の様に美しい白髪のツインテールで流れ星の尾を描くかの如く、一筋の矢となってメフィストを刺し貫いた姿で現れる!
「チャーンス!」
美少女にあるまじきエグい顔になって、この隙を逃さないとばかりに即座に跳躍し、前に跳び込む未来。
「ハッ! 良い加減死んどけってのっ!」
俺的ライトセイバーをフェンシングのエペに見立て切っ先を回すと、そのまま踏み込んでの見事なフォーントからコントルアタック、トドメのトゥシュと流れるような技を披露し、メフィストを遂に捉えたのだった!
その突きは永遠と同様、紅い流星の如き美しさの一筋の閃光となり、メフィストの胸を見事に刺し貫いたのだった!
だがしかし。果たして――。
「――ナニ?」
刺し貫いたと言うのに表情が一瞬で曇る未来。
手応えを全く感じなかったのだ。
その疑問に答えを導き出す余裕はなく、直ぐに引き抜いて後方回転で間合いを開ける。
「ん!」
永遠も未来に倣って後方に下がるも、再び突進突きの姿勢を取って身構える。
「娘、役立たずの父の真似事か? 笑止――駄肉も持たぬ小娘には、蛮族らしい殴り合いが適当であろうに?」
効かぬと両手を仰々しく大の字に広げ、卑下する目で未来を蔑み、口端を吊り上げた嘲笑いで口汚く罵るメフィスト。
その瞬間――周囲の空気が張り詰めた!
「――言ったな……言いたがったな……」
「――ナニをだ、娘?」
ポツリ呟く未来に、おやおやどうしたんだいと言わんばかりに、小馬鹿にしまくる醜悪な薄ら笑いで問うメフィスト。
「お前……今……言っちゃなんねーことを二つ言言いやがったな……」
左目と右の魔眼が同時に輝きだし、鼓動を打つように胎動を始める――。
「――オレの逆鱗ニ、触れやがったんダ、ヨ! ――テメェは、ナッ!」
表情に目付きに口調、一人称までもがガラリと変わる。
「なんと――」
初めて余裕なさげな、僅かに上擦った声を上げるメフィスト。
未来から放たれる異様なまでの気配が一気に膨らみ、周囲一帯を完全に支配する――。
「――ウアアアアアアァ!」
悲鳴とも雄叫びとも取れる叫び声を上げた直後、突如、身体から真っ赤な焔が噴き上がり燃え盛る!
噴き出た焔は――紅龍の姿を形成した。
まるで未来を喰らい尽くし、焼き尽くさんと言わんばかりに、身体全体を覆う焔に侵食されるが如く――焼けていく。
「――お姉ちゃん!!」
今、未来の身にナニが起きているのか全く解らないアイ。
メフィストにナニかされたのではと、血相を変えて未来の元へと急ぎ駆けつける!
目の前の未来は魔法少女の謎のバンクシーンと言った、綺麗な感じで姿を変えると言う感じではなく、焔の紅龍に全身を喰いつくされ捕食されると言った、禍々しくも悍しい感じがするからだった。
だがしかし。
紅龍の姿を形取る焔が次第に収束し始め、ナニかを纏い始めるのだった。
そして未来が居た場所に現れたモノ――。
紅龍の鱗のようなモノで作られた全身を覆う紅き甲冑――某聖闘士聖衣の紅龍バージョンを身に纏った――、
未来に他ならなかった。
途中までは禍々しかったが、姿を現したあとの姿は何故か神々しい気配を放ち、周囲一帯を染め上げていく。
「娘……。よもや……聖眼をも継承しておったか――我も流石に想定外だぞ……」
愉悦に歪んだ醜悪な薄ら笑いは身を潜め、驚愕の表情で僅かに後退るメフィスト。
「――きる、キル、Kill――ブッコロス!」
凄まじいまでの邪悪な殺気、神々しいまでの聖なる焔。
相反する気配を全身から放ち、メフィストへとにじり寄っていく――。
要は未来を挑発したつもりのメフィストだったのだが、意図せず未来への禁句を吐いてしまった。
未来の逆鱗。
書いて字の如く正しく逆鱗に触れてしまった。
逆鱗とは禁句。
それ即ち家族を卑下する言葉。
敬愛する父――つまり、俺を小馬鹿にしたこと。
もう一つは――うん、そっちは言わないでおこう。
未来の奥底に眠る、何ぞな厄介なモノを呼び覚ました……違うな。叩き起こした。
窮鼠猫を噛むに等しい愚策だったな、うん。
「――あ。死んだね、メフィストさん」
未来が余りにも怖かっ――凄く強そうなので、速攻で逃げ――その場離脱。
大好を盾――護るアイはポロリと呟く。
「――うむ。終わったな」
同じく、普段見ない未来があんなに怖――強そうなことに、アイを盾――護りつつポロリと相槌を打つ大好。
「――ヴォン」「――バッ」
二人の後ろに隠れ――護る従僕共も、決死の覚――ガクガク震えていた。
交互に盾――護ろうと場所が入れ替わる二人に、首が千切れんばかりにウンウン頷き肯定する。
あの爺さん、やらかしちゃったか~。
ご愁傷様~。
――と言った、皆から生暖かい視線を投げ掛けられるメフィストだったり――。
―――――――――― つづく。
一連の攻防を先ず制したのは、本当にギリギリで未来だった。
僅かに隙を見せたメフィストの右腕を掴むや否や、即座に握りつぶし、やっとの想いで俺的ライトセイバーを奪い返したのだ。
「はぁはぁ……なんとか取り返せた! 人質……違うか……はぁはぁ……パパのは敵の手に渡ると……はぁはぁ……ホント、厄介、極まりないわね、全く……はぁはぁ」
取り返した俺的ライトセイバーを握り締め、睨みをきかせつつ呼吸を落ち着かせる。
「ふぅ――この強度もだけど、起動してないっぽいのにエグい斬れ味って、ナニ? 大切なボクの痛手袋をこんなにズタボロにしくさりやがって――ボクの知る限り過去最大規模、あらゆる意味であかんヤツ――モスト・アンビーよ」
手にあるそれに言い聴かせるように、苦湯を飲んだ苦渋の表情で愚痴を吐き捨てた。
そう。メフィストはアイアンキャンディが穿たれる度に、寸分違わず俺的ライトセイバーを当てて合わせてきたのだ。
態と盾代わりにして受け止めたり流したりして、未来自身に壊させようと目論んで遊んでいたかのように。
その結果として、独特の破砕音が鳴り響く度に、アイアンキャンディの方が打ち負けて破損。
駆動部分を次々に潰されたのだった。
「ほう――中々にやりおる」
先ほどと同じく、握り潰された右手を瞬時に再生。
まだ本気ではない、まだまだ余裕が残っているぞと告げるが如く、愉悦に歪んだ不気味な薄ら笑いで嫌味の賞賛を贈るメフィストは
不遜な態度を、一切、崩さない。
「――煩いってのっ! その下品な顔、吠えずら描かせてあげるってのっ!!」
大切にしていた贈りモノまでズタボロにされ、更に激昂した未来。
俺的ライトセイバーを握り締め、メフィストに吼えて返す!
「吠えずら描かせるのは我であろう? 娘――耐えてみせよ」
愉悦に歪み切った表情は口端を吊り上げ、邪悪に染まりきった悍ましい失笑を漏らす。
直後、なんの予備動作もなく、メフィストの右腕に業火の槍が現れた瞬間、貫き焼き滅ぼすと言わんばかりに未来に向けて穿たれた!
その時――。
「――ん!」
直撃する瞬間、未来を横から素早く掻っ攫った永遠が居た。
俺と最妃を放置ってすっ飛んでった永遠が、遂に追い付き駆け付けたのだ!
業火の槍は未来を穿つに至らない。
さっきまで居た場所へと突き刺さる。
そして巨大な大穴が穿たれ地面を抉り、瓦礫云々を巻き上げ吹き飛ばした。
だがしかし。
「――ダレよ⁉︎」
余裕で躱すつもりだった未来は、邪魔をされたことに不満気に声を上げる。
「ん!」
そんな未来には一切お構いなしに、無表情のままでそっと地面に立たせる永遠。
「我の遊戯を邪魔するか! ――身の程を弁えよ!」
愉悦に歪んだ薄ら笑いから一転、遊戯の邪魔をされたメフィストは激昂し吼える!
先ほどと同じ要領でメフィストの右手から放たれた強大な業火の槍が、永遠を貫き焼き尽くそうと穿たれ迫る!
だがしかし。
「ん!」
到達する瞬間、永遠は巨大な盾を翳して前に出て、後方へと引き摺られ押し流されるもなんとか防ぎ切る!
「なっ⁉︎ ウッソっ⁉︎」
突然現れた自分と瓜二つな少女が、黒騎士のような身の丈もある巨大な盾を易々と操り防ぎ切ったことに、困惑を隠せない隣の未来。
「――ええ⁉︎」
退避して大好達を護りつつ見やっていたアイにしても、同様。
ほぼ同時に声を上げていた。
間髪入れず永遠が掻き消えて、未来も慌てて永遠に続き掻き消え、メフィストへと反撃に出た。
「ん!」
左回りに身を捻って、右腕に携える槍を渾身の力で穿つ永遠!
「小癪な――」
槍の直撃こそ逃すも、放った際の凄まじい衝撃波でメフィストを僅かに後退させた。
「んっ!」
怒涛の勢いで攻める永遠は姿勢を低く構え、突進突きでメフィストを突き崩しに掛かる!
「この!」
そこに未来が操る俺的ライトセイバーが迫るも、上体を逸らされ易々と躱されてしまった。
「ま――」「ん!」「ハッ!」
怒涛に次ぐ怒涛、更に怒涛かつ怒涛の超加速域での怒涛の攻めで、容赦なくしつこく攻め続ける永遠と未来に防戦一方のメフィスト。
「鬱陶し――」「ん!」「ハー!」
メフィストが何ぞ言いたいのだろうが、気にも留めない、言わせもしない!
我が道を行く永遠と未来の強力な協力タッグ――ぷ。失礼。
流石のメフィストも、若干、タジタジ?
「ん!」「ええぃ、小賢しい!」
息も荒げず顔色一つ変えず、右腕の槍で無数の突きを繰り出し追い縋る永遠は、死角からの超高速な突進突きを放って遂に仕留める!
絹の様に美しい白髪のツインテールで流れ星の尾を描くかの如く、一筋の矢となってメフィストを刺し貫いた姿で現れる!
「チャーンス!」
美少女にあるまじきエグい顔になって、この隙を逃さないとばかりに即座に跳躍し、前に跳び込む未来。
「ハッ! 良い加減死んどけってのっ!」
俺的ライトセイバーをフェンシングのエペに見立て切っ先を回すと、そのまま踏み込んでの見事なフォーントからコントルアタック、トドメのトゥシュと流れるような技を披露し、メフィストを遂に捉えたのだった!
その突きは永遠と同様、紅い流星の如き美しさの一筋の閃光となり、メフィストの胸を見事に刺し貫いたのだった!
だがしかし。果たして――。
「――ナニ?」
刺し貫いたと言うのに表情が一瞬で曇る未来。
手応えを全く感じなかったのだ。
その疑問に答えを導き出す余裕はなく、直ぐに引き抜いて後方回転で間合いを開ける。
「ん!」
永遠も未来に倣って後方に下がるも、再び突進突きの姿勢を取って身構える。
「娘、役立たずの父の真似事か? 笑止――駄肉も持たぬ小娘には、蛮族らしい殴り合いが適当であろうに?」
効かぬと両手を仰々しく大の字に広げ、卑下する目で未来を蔑み、口端を吊り上げた嘲笑いで口汚く罵るメフィスト。
その瞬間――周囲の空気が張り詰めた!
「――言ったな……言いたがったな……」
「――ナニをだ、娘?」
ポツリ呟く未来に、おやおやどうしたんだいと言わんばかりに、小馬鹿にしまくる醜悪な薄ら笑いで問うメフィスト。
「お前……今……言っちゃなんねーことを二つ言言いやがったな……」
左目と右の魔眼が同時に輝きだし、鼓動を打つように胎動を始める――。
「――オレの逆鱗ニ、触れやがったんダ、ヨ! ――テメェは、ナッ!」
表情に目付きに口調、一人称までもがガラリと変わる。
「なんと――」
初めて余裕なさげな、僅かに上擦った声を上げるメフィスト。
未来から放たれる異様なまでの気配が一気に膨らみ、周囲一帯を完全に支配する――。
「――ウアアアアアアァ!」
悲鳴とも雄叫びとも取れる叫び声を上げた直後、突如、身体から真っ赤な焔が噴き上がり燃え盛る!
噴き出た焔は――紅龍の姿を形成した。
まるで未来を喰らい尽くし、焼き尽くさんと言わんばかりに、身体全体を覆う焔に侵食されるが如く――焼けていく。
「――お姉ちゃん!!」
今、未来の身にナニが起きているのか全く解らないアイ。
メフィストにナニかされたのではと、血相を変えて未来の元へと急ぎ駆けつける!
目の前の未来は魔法少女の謎のバンクシーンと言った、綺麗な感じで姿を変えると言う感じではなく、焔の紅龍に全身を喰いつくされ捕食されると言った、禍々しくも悍しい感じがするからだった。
だがしかし。
紅龍の姿を形取る焔が次第に収束し始め、ナニかを纏い始めるのだった。
そして未来が居た場所に現れたモノ――。
紅龍の鱗のようなモノで作られた全身を覆う紅き甲冑――某聖闘士聖衣の紅龍バージョンを身に纏った――、
未来に他ならなかった。
途中までは禍々しかったが、姿を現したあとの姿は何故か神々しい気配を放ち、周囲一帯を染め上げていく。
「娘……。よもや……聖眼をも継承しておったか――我も流石に想定外だぞ……」
愉悦に歪んだ醜悪な薄ら笑いは身を潜め、驚愕の表情で僅かに後退るメフィスト。
「――きる、キル、Kill――ブッコロス!」
凄まじいまでの邪悪な殺気、神々しいまでの聖なる焔。
相反する気配を全身から放ち、メフィストへとにじり寄っていく――。
要は未来を挑発したつもりのメフィストだったのだが、意図せず未来への禁句を吐いてしまった。
未来の逆鱗。
書いて字の如く正しく逆鱗に触れてしまった。
逆鱗とは禁句。
それ即ち家族を卑下する言葉。
敬愛する父――つまり、俺を小馬鹿にしたこと。
もう一つは――うん、そっちは言わないでおこう。
未来の奥底に眠る、何ぞな厄介なモノを呼び覚ました……違うな。叩き起こした。
窮鼠猫を噛むに等しい愚策だったな、うん。
「――あ。死んだね、メフィストさん」
未来が余りにも怖かっ――凄く強そうなので、速攻で逃げ――その場離脱。
大好を盾――護るアイはポロリと呟く。
「――うむ。終わったな」
同じく、普段見ない未来があんなに怖――強そうなことに、アイを盾――護りつつポロリと相槌を打つ大好。
「――ヴォン」「――バッ」
二人の後ろに隠れ――護る従僕共も、決死の覚――ガクガク震えていた。
交互に盾――護ろうと場所が入れ替わる二人に、首が千切れんばかりにウンウン頷き肯定する。
あの爺さん、やらかしちゃったか~。
ご愁傷様~。
――と言った、皆から生暖かい視線を投げ掛けられるメフィストだったり――。
―――――――――― つづく。
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