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第肆章 終りゆく、日常――メフィスト編。

佰肆拾捌話 夢現、其の陸。

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「――目が覚めまして、彼方? 無事でして?」

 目が覚めた俺が最初に見たモノ。
 俺嫁の俺的超お至宝な双丘の度アップだったり。

「――毎度毎度、すまんな」

 そう。またしても俺的超お至宝な双丘に頭を預け、床にだらんと身を投げ出して横たわっていた。

「――私でしたら、全然、構いませんわよ?」

 そんな俺を支え護るように抱きかかえてくれていた、和やかな慈愛溢れる優しい笑顔の最妃。

「全く、俺専用最強女神さまは、相変わらずスゲーこやらかしやがんのな……」

「オホホホ~」

 例の如く、俺と最妃がいる場所だけを避けるように、降り注いだ瓦礫が周囲を囲って山になっていた。


 更に、今回はもう一つ――。


 触れると大惨事な黒い靄までもが見えない何ぞに阻まれて、周囲を取り囲むだけに留まっているからまぢ驚きだよ。

「このファンタジーな状況はスルーしておくとして、俺って……ナニがどうなってこの状況なんだ? ことの顛末くらいは話せるか、最妃?」

「ええ、大丈夫ですわ。簡単に言うと、私を呼ぶ彼方の声が聴こえ……向かってくる途中で崩落して……彼方が目の前で押し潰されてしまわれたの。……流石に我を失いそうになってしまった私の元に、眠るように横たわる彼方の姿が浮かんでゆっくりと舞い降りて来たのですよ? 大慌てで受け止めて抱きかかえたんですよ、私。直ぐにナニが起きたのかは理解しましたので、こうしてお側で寝顔を見ていましたのよ」

「そうか……。実はさっきまで、別次元? 別空間? そんなファンタジーな場所に居てな? ティア――神に疑問符と色々な話しをしたり騒いでたりしてたんよ。……心配掛けてごめんな」

「いいえ。ナニよりも無事でよろしくてよ、私の彼方……」

「それとさ、俺、また若返っちゃったらしいんよ? 解る? ――どんな感じになった?」

「あらあら。言われて見れば。……私と出逢う前の彼方ですわね? ――ほら、いつか見せて貰った高校の卒業アルバム。十代の高校生だった彼方にそっくりでしてよ?」

「――ええ⁉︎ 嘘、まぢで⁉︎ そこまで若返ったん、俺⁉︎」

「私は……全然、構なくってよ? 彼方は彼方なのですから――いままでと変わりなく、お慕い申してますわよ、か・な・た」

「うほっ――ぷはっ! し、死ぬ、埋まって死んでしまう!――ちょ!――解った、解――っぷは!――お願い――ん――んん――ぷは!」

「――あらあら? 事切れてもっと若返ってもよろしくてよ?」

 なんだろう……ちょっと怒っているような?
 ティアの所に居た事実にヤキモチ?

「ぷは――無理だから! 気持ち良く死ぬだけだから! 俺的超お至宝を凶器にすんなって!」

「まっ、凶器だなんて。誰にも使いません! 未来永劫、彼方専用でしてよ?」

「それは疑ってないから。……って、俺で遊んでないで、この状況をどーするか一緒に考えてくれん、最妃?」

「――残念。そのことなら心配無用でしてよ? 彼方が持ってらっしゃるのですから」

「その子? ――純潔の珠玉か⁉︎」

「私からはナニも申し上げられません。ですが、どう言う子かは――もうご理解なさっておいでですわよね?」

「――そうか! 確かにこの子ならば! あとは俺の妄想力……違うな。創造力次第だな」

「ええ。頑張って下さいね、私の彼方――ん」

 最愛の俺嫁が、ナニも言えないことへの謝罪も含んでいるのが伝わる熱烈な抱擁と、優しい口づけをしてくれた。


 名残惜しくも最妃から離れ、地面を踏み締めて立ち上がる――。


 ヒト肌の優しい感触と好みの香り、無償の信頼と愛に包まれて英気を養い、心身共にゆとりと余裕が戻ってきた。

 そしてさっきまでの不適切な笑顔を改めて、真剣な真顔で静かに目を閉じる。

 右手に持つ、とても小さな純白の珠玉に、俺の切なる想いを全て流し込むように意識を集中させていく――。


 すると――。


 ナニにも染まっていない澄んだ純白の珠玉は、とても優しく仄かに輝きだした――。

「俺の切なる願い成就せしめんが為だけに、今、ここに顕現せしめよ、俺の――」

 その言葉はまるで祝詞のように、願い奉る一節のように、力強くも静かに響き渡る――。


 電波脳を集中しフル稼働させて、これから具現化させるイメージを慎重に構築する。


「俺の――相棒、イモータル!」

 最後に、完成イメージを強く想い描き、握り締めた純潔の珠玉に伝えるように意識を流し込んで召喚した!


 イモータル。


 不滅、永久、不死の意味を現す言葉だな。
 死すべき運命と言う意味のモータルを否定する対義語――対なる言葉だ。
 俺の決意と覚悟を秘めた言葉でもある。
 この子に相応わしい名称だと、本気で信じて疑ってないよ、俺。

「……おおっ、上手くいった! 宜しく頼むよ!」

「えっと……彼方。ちょっと――」

「細かい事は抜きで良いじゃん? 絶対にこの姿の方が未来とアイに受けが良いって、な! な!」

「確かにそうですけど……これは……」


 そう。純潔の珠玉って代モノは、俺の想いを具現化、創造できるモノなのだ。


 身体的には全くの役立たずな俺だが、俺的電波脳の妄想力なら得意中の得意。
 つまり、十八番おはこだ!
 更に、家族を想う強さなら、誰にも負けない、世界最強だと自負できる!


 そんな俺の想いを受けて、顕現し形取ったモノ――。


「んっ!」

 ソレは――身の丈ほどもある槍と盾を携え、純白の甲冑に身を包んだ、身近に存在する若き少女にそっくりな鎧騎士だった。


 つまり、未来とアイに瓜二つな容姿。


 但し、髪の毛の色だけ白髪。
 多分、純潔の珠玉が純白だったからなんだろうが、見分けがつき易いって点ではこれはこれで問題ない。


 更に言うとアイ同様、俺的お至宝級な双丘の再現度が素晴らしい姿で顕現したのだ!


「おお! 正に俺娘達にそっくり! コレで三つ子、つまり、三姉妹! 想像通りの理想に等しく創造できた! 特にたわわ過ぎる果実が俺的超お至宝に限りなく近い逸品! ――名前は……そうだな、永遠とわで。宜しく頼むぞ!」

 イモータルと言う言葉から、素直に永遠と名付けることにした。
 永久、無限と言う意味合いに、夢幻と言うファンタジーな要素の方の意味合いも含んでな。

 弟も欲しがってた未来の為にも、電脳歌姫の黄色い双子の兄の姿で創造しようか超絶に凄い迷ったんだけども、男の子って言うイメージが難しかったんだよな、うん。

 対して未来とアイの姿なら、普段から一緒に暮らしてるだけあって、細かい部分もバッチリ再現できるからな!
 コレが最適解だ! ――多分、合ってる。


 ちなみに、細かい所もバッチリに、えっちぃ意味合いは含まない。


 肌の質感や髪質、色云々のことだ。
 ただのヒトの俺が錬成何ぞと言う、激ファンタジーに生まれて初めて挑むんだからな。
 つまり、初めての試みだし、安全策を取ったのだよ。


 更に言うと、俺的に美少女三姉妹って言う言葉の響きに惹かれた。
 実はこっちの理由のが大きい。


「不死、永久の意味でのイモータル。そしてはるか 永遠とわ。――彼方にしてはとても良い名ですこと。――では、永遠。頼みましたよ?」

「ん!」

 明確な命令もナニも伝えていないのに、自律行動を始める永遠。
 まるで人形のような能面で肯き、槍を構えて脚を踏ん張る。


 そして、巨大な槍を頭上へと力一杯穿つ!


 覆い被さる瓦礫と化した天井を、たったの一撃で木っ端微塵に粉砕、破壊し尽くしたのだ!
 更に地上までの大穴を開通させやがるほどで突き上げるってんだから驚きだよ!

 幸い、最妃の周りにある見えない何ぞなバリアーとでも言うか、結界とでも言うかな謎のフィールドのお陰で、崩れ落ちる瓦礫には埋もれなかったけども。


 生まれたばかりでこのチート級って。
 末恐ろしいわ。
 珠玉が元になってるってのは、伊達じゃねーのな。


「あちゃ~、俺はやっぱり未熟だな。感情とか言葉とかの内面、特に情操面の錬成が甘かったっぽいか? 後先考えて行動して欲しいわ」

「彼方、私はナニも申し上げられません。ですけれど――子育てには自信ありますわよ?」

「そうか、そうだな、育てれば良いんだよな! ――はっはっは。これは未来達、絶対に驚くぞ!」

「もぅ! どんな時でも彼方は彼方ですわね」

「褒め言葉として受け取っておくわ。――行くぞ、最妃! ――そして、永遠!」

「承知!」「ん!」

 穿たれた大穴から未来達を追い掛ける俺達――新たな家族? を迎え、漆黒に挑む!



 ちなみに脱出の際、俺が最妃にお姫様抱っこされて大穴を抜けたって事実は、誰にも知られてはならない最重要極秘機密案件とする――。



 ―――――――――― つづく。
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