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第肆章 終りゆく、日常――メフィスト編。

佰弐拾伍話 困惑。

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 地震にも似た小刻みな振動が地響きを立てて続く中、俺達を乗せた昇降機は無事に地下三階層の出入口へと辿り着いた。

 音もなく静かに開く昇降機内側の扉。
 地下三階層表側の扉は来る時に開けっ放し状態だったのだが、今もそのままだった。

 扉の影から向こう側を警戒しつつ、様子を窺う俺と未来とアイ。

「アイ。索敵技能は潰されたままか? 未来も相変わらずか?」

 扉から頭を出して、予め被っておいた俺的ナイトヴィジョンで周囲を見渡すも、例の如くナニも拾えないので、念の為に双子組にも確認してみた俺。

「うん。相変わらず……全く気配が読めないのが続いてるよ、パパ」

 俺の真下から頭を出して、申し訳なさそうに小声で答えるアイ。

 ファーストの言ってた結界だっけか? それの影響なのかもしれんのな。
 それとも、俺が居ると思っている隠蔽技能持ちの仕業なのだろうか……。

「ボクはダメ、全然ダメ。この施設内では感知方面では全くの役立たずだよ」

 反対側の扉の影で、アイとは非対称に肩を竦めてあっけらかんと溜息混じりで答える未来。


 あのな、ヒトの身で感知できる方が、本来は稀で特殊なんだからな?


「ファースト、戦闘面は少し期待してもいいのか?」

 下層で何ぞ不穏当なことを言っていたのがちょっと気になって、後方で待機しているファーストにも言葉だけで確認しておくことにする。
 戦える人数が増えるに越したことはないのでな。

「アタシか……やるだけやってみるよ」

「すまないが頼む。……但し、無理無茶無謀は禁止な? 昔の勘が戻る程度のリハビリくらいで良いから」

「貴方……やっぱりプレイボーイの資質あるかもよ? アタシ、今キュンときた」

 妙なことを顔を赤らめてモジモジしつつ宣う、外見美少女で中身は謎物体のファースト。

 今の俺の言葉の何処に、そんなキュンとくる部分があるってんだ?
 何処ぞのチョロインですかっての。
 それとな、最妃以外はアウトオブ眼中だって、俺。


 俺的超お至宝は未来永劫、世界にただ一つだ!
 

「アリサはクモヨの背中に乗っておいてくれ。遠距離から状況に応じて援護を入れてくれたら助かる。本当に適当で良いからな?」

 同じく、アリサとクモヨにも言葉だけで指示を出しておく俺。

「わ、解ったのよ?」

 なんとなく余裕なさ気で答えるアリサ。

 俺が知る限り、アリサが戦いに参加何ぞするのは初めて。
 なので緊張するのも無理もない。
 アリサとクモヨをコンビにした理由は、そんなアリサのことを加味しての判断からだった。

「オマカセ……パパ」

「パパか……何ぞ擽ったいな。――頼む」

 俺のことをパパ認定のクモヨは、流石に人外だけあって余裕っぽいし、壁だろうが天井だろうが全方位に動けるクモヨなんだからな。
 当然、視野も広く場の状況にも臨機応変に対応し易いってモノだ。


 つまり、二人の安全性がとても高くなる。


 更に言うと、アリサの携える俺的玩具のマスケット銃は射程も長く、威力も大概。

 クモヨの吐く蜘蛛糸っぽい何ぞにしても同様に射程が長い。
 ついでに拘束もできる優れた技能。

 二人のコンビには、移動砲台代わりにもなってくれるってのを期待してたりする。

「スゥ。すまないが未来とアイの索敵フォローを頼む。ベロは念の為、アリサ達についてくれるか? 仕事を頼む分、帰ったらそれ相応の美味い飯を用意してもらうから、な?」

「彼方、承知ですわ。――だからお願いね、ベロにスゥ」

 今回は心強い謎生物な従僕二匹が側に居てくれている。

 スゥは腐ってもワンコ?なのだ。
 限りなく謎生物っぽいけども。
 なので音と臭いを探らせれば、右に並ぶどころか出るモノは居ない。

 ベロも普段はアレだが、真面なベロの時は能力的にケルに匹敵するしな。
 実際、ケルとベロに差は全くないし。
 唯一の差はオツムの出来……くらいじゃね?
 なので前衛としてのアタッカー役としては申し分ない。

「ハッ!」「フンッ!」

 俺と最妃に向かって返事のひと吠えをすると、真面目モード全開で指示通りに行動を開始する二匹。

 スゥは例の如く兎耳化でアイの側に静かに立つ。
 ベロは口を閉じたくらいで、見た目の変化はない。
 だがしかし、纏っている雰囲気ってのがガラリと変わる。
 初対面だと見分け付かないくらいにケルそのモノと化した。


 いつもコレを維持できれば、馬鹿にされることもないのにな……残念な子だよ。


「最後に最妃とリペアなんだが……」

 扉から頭を引っ込め、俺的ナイトヴィジョンを外す俺は、振り返って最妃を愛おしく見やり、申し訳なさそうに伝えようとする。

「彼方、私も――」

 言われる内容を察したのか、俺に何ぞ言おうとする最妃。

 多分、自分も戦えますとかなんとかだろうよ。
 当然、そう来るだろうと思っていた俺は、最妃抑止に効果覿面の必殺の言葉を投げ掛けるのだった――。



 ―――――――――― つづく。
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