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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。
佰拾弐話 義妹。
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俺達をこの先へは通さないぞと言わんばかりか、今にも捕って喰っちまうぞ的にレンガ通りに伸びていた蔓。
まるでナニかを避けるように左右に広がり、レンガ通りの中央を開け始めた――。
その奥からこちらへと静かに歩みを進めて来る幼女が一人と、護るように付き従っていた黒い生物が二体。
声から察する通り、間違いなく俺の義妹のアリサと、斗家の従僕ベロとスゥに他ならなかった。
他ならなかったのだが……。
うーむ、やっぱり違うヒトだろうか?
「……えっとだな、アリサで合ってるか? 隣のもベロにスゥで合ってる?」
ワザと自信なさげに振る舞って、現れた幼女に仰々しく尋ねる俺。
斗家の面々も俺の背後でクスクス笑っている……。
笑いを堪えているが正しい。
「義兄さん、他の誰に見えるのよ?」
「マミるの造語の元になった、見滝原と言う架空の土地に住む、薄幸の美少女が変身した魔法少女のコスプレをした、痛い俺義妹とかで御座いましょうかね? 序盤でまさかの首チョンパで絶命し、俺を切ない涙で枕を濡らし殺させた、あの超絶素敵な双丘を携え――あ、痛い!」
「意外に詳しいのよ? ――って、喧しいのよ?」
馬鹿にしたように宣う俺に、手に持っていたあるモノで殴りつけてきた推定、アリサ。
と言うか、痛い格好で俺を義兄さんと呼ぶ幼女は、俺の知る限りではアリサしか居ないんだけどな?
そうなのだ。
俺の目の前に現れたアリサは、何故か魔法少女のコスプレ姿。
放映当時は話題を根こそぎ掻っ攫い、今も大きなお友達に絶大な人気を誇る、やっぱり深夜にこっそりと観る大きなお友達向けな魔法少女アニメの劇中に登場した、登場人物まんまの姿を模していたのだよ。
白と黄色の独特なコスチュームに身を包み、ご丁寧に地毛にウィッグで髪の毛まで延長して似せているから半端ねぇ。
更に、何時ぞやに俺から押収した、同じく劇中でその子が使っていた真っ白な単発式銃火器――俺的マスケット銃を携えていたのだ。
たった今、それで頭をこつかれた俺なのだった。
「おまー! それは俺的お至宝モノなんだぞ! 断腸の思いで譲ったんだから大事に扱えっての!」
予想以上に痛かったので、涙目で抗議する俺。
「喧しいのよ? 義兄さんが悪いのよ?」
腰に手をやり俺的お至宝な胸を張って威張りくさる、怒りんぼな表情のアリサ。
ちなみに、俺が枕を濡らし殺すぐらいにハマったアニメだからな。
当然、俺的マスケット銃何ぞも凝りに凝って拘り抜いた完成度を誇る逸品。
最後まで譲渡に抵抗するも、文字通り押収されたんだよ!
デパートの件で借りがある俺は、強く出れなかったんだよな~。
「なんで最妃姉さん達も笑ってるのよ? 可笑しくないのよ?」
なんでって聴くのかね?
この非常時に俺がなんでって聴き返してやりたいわ!
「そりゃ決まってる……コスプレ姿が変だからだろ?」
「喧しいのよ? 撃つのよ?」
当然、俺的聖典にもラインナップされている素敵アニメだからな。
今はデパートの一件で大好にTV版からOVA、映画までの全話を押収……ゲフンゲフン。貸し出してるけど。
最妃達もいつぞやかに観てて、知ってたんだろうよ。
そんなわけで――。
「あーはっはっは! アリサ叔母さん、寄りによって――あっはっは」
「お、お姉ちゃん――ぷっ――あっはっは」
俺の後ろで未来とアイも腹を抱えて笑い転げていた。
「ご、ごめなさい――悪気はなくってよ――ぷっ」
ちなみに最妃ですら顔を背けて肩で笑っている始末。
笑われている意味が解っていないアリサ本人は、怒っているのか恥ずかしいのかは知らんが顔を真っ赤にしつつ、クモヨと一緒にキョトンとしていた。
「あのな、アリサ。非常時にコスプレするの、ナニ? それと元キャラは背が高い。アリサは背が全く足りてないのな? 真似るにしてもだな、普通は桃色か黒髪な主人公の二人だろ? 幼女の容姿ではそっちのが近しいと思うぞ? よりによってお姉さん役の子をチョイスって無理有りまくりじゃね? 何故、そんなチャレンジャーなんよ?」
「――義兄さんから貰ったこの可愛い銃を……単に使いたかったのよ? 似合わないのは解ってるのよ?」
「普通に使えば良いだけじゃね? 髪まで気合入れて真似てるのは、ナニ? 正直に趣味って言っちゃえよ? ほらほら吐いちゃえよ」
不適切ないやらしい笑顔で、全力で揶揄う俺。
「……喧しいのよ? 撃つのよ?」
目が本気のアリサ。
撃つと言って抑止するのではなく、まぢに撃ちやがった!
俺の足元のレンガ通りが跡形もなく見事に吹っ飛ぶ。
威力があり過ぎて、抉れるが正しい。
「――危なっ⁉︎ 解った、解ったからっ! まぢに撃つなっ!」
目から光が失せた半目で俺を睨みつけ、更に銃を突きつけてくるアリサ。
これ以上弄ってると、まぢに大穴を開けられ撃たれそーだ……怖っ⁉︎
―――――――――― つづく。
まるでナニかを避けるように左右に広がり、レンガ通りの中央を開け始めた――。
その奥からこちらへと静かに歩みを進めて来る幼女が一人と、護るように付き従っていた黒い生物が二体。
声から察する通り、間違いなく俺の義妹のアリサと、斗家の従僕ベロとスゥに他ならなかった。
他ならなかったのだが……。
うーむ、やっぱり違うヒトだろうか?
「……えっとだな、アリサで合ってるか? 隣のもベロにスゥで合ってる?」
ワザと自信なさげに振る舞って、現れた幼女に仰々しく尋ねる俺。
斗家の面々も俺の背後でクスクス笑っている……。
笑いを堪えているが正しい。
「義兄さん、他の誰に見えるのよ?」
「マミるの造語の元になった、見滝原と言う架空の土地に住む、薄幸の美少女が変身した魔法少女のコスプレをした、痛い俺義妹とかで御座いましょうかね? 序盤でまさかの首チョンパで絶命し、俺を切ない涙で枕を濡らし殺させた、あの超絶素敵な双丘を携え――あ、痛い!」
「意外に詳しいのよ? ――って、喧しいのよ?」
馬鹿にしたように宣う俺に、手に持っていたあるモノで殴りつけてきた推定、アリサ。
と言うか、痛い格好で俺を義兄さんと呼ぶ幼女は、俺の知る限りではアリサしか居ないんだけどな?
そうなのだ。
俺の目の前に現れたアリサは、何故か魔法少女のコスプレ姿。
放映当時は話題を根こそぎ掻っ攫い、今も大きなお友達に絶大な人気を誇る、やっぱり深夜にこっそりと観る大きなお友達向けな魔法少女アニメの劇中に登場した、登場人物まんまの姿を模していたのだよ。
白と黄色の独特なコスチュームに身を包み、ご丁寧に地毛にウィッグで髪の毛まで延長して似せているから半端ねぇ。
更に、何時ぞやに俺から押収した、同じく劇中でその子が使っていた真っ白な単発式銃火器――俺的マスケット銃を携えていたのだ。
たった今、それで頭をこつかれた俺なのだった。
「おまー! それは俺的お至宝モノなんだぞ! 断腸の思いで譲ったんだから大事に扱えっての!」
予想以上に痛かったので、涙目で抗議する俺。
「喧しいのよ? 義兄さんが悪いのよ?」
腰に手をやり俺的お至宝な胸を張って威張りくさる、怒りんぼな表情のアリサ。
ちなみに、俺が枕を濡らし殺すぐらいにハマったアニメだからな。
当然、俺的マスケット銃何ぞも凝りに凝って拘り抜いた完成度を誇る逸品。
最後まで譲渡に抵抗するも、文字通り押収されたんだよ!
デパートの件で借りがある俺は、強く出れなかったんだよな~。
「なんで最妃姉さん達も笑ってるのよ? 可笑しくないのよ?」
なんでって聴くのかね?
この非常時に俺がなんでって聴き返してやりたいわ!
「そりゃ決まってる……コスプレ姿が変だからだろ?」
「喧しいのよ? 撃つのよ?」
当然、俺的聖典にもラインナップされている素敵アニメだからな。
今はデパートの一件で大好にTV版からOVA、映画までの全話を押収……ゲフンゲフン。貸し出してるけど。
最妃達もいつぞやかに観てて、知ってたんだろうよ。
そんなわけで――。
「あーはっはっは! アリサ叔母さん、寄りによって――あっはっは」
「お、お姉ちゃん――ぷっ――あっはっは」
俺の後ろで未来とアイも腹を抱えて笑い転げていた。
「ご、ごめなさい――悪気はなくってよ――ぷっ」
ちなみに最妃ですら顔を背けて肩で笑っている始末。
笑われている意味が解っていないアリサ本人は、怒っているのか恥ずかしいのかは知らんが顔を真っ赤にしつつ、クモヨと一緒にキョトンとしていた。
「あのな、アリサ。非常時にコスプレするの、ナニ? それと元キャラは背が高い。アリサは背が全く足りてないのな? 真似るにしてもだな、普通は桃色か黒髪な主人公の二人だろ? 幼女の容姿ではそっちのが近しいと思うぞ? よりによってお姉さん役の子をチョイスって無理有りまくりじゃね? 何故、そんなチャレンジャーなんよ?」
「――義兄さんから貰ったこの可愛い銃を……単に使いたかったのよ? 似合わないのは解ってるのよ?」
「普通に使えば良いだけじゃね? 髪まで気合入れて真似てるのは、ナニ? 正直に趣味って言っちゃえよ? ほらほら吐いちゃえよ」
不適切ないやらしい笑顔で、全力で揶揄う俺。
「……喧しいのよ? 撃つのよ?」
目が本気のアリサ。
撃つと言って抑止するのではなく、まぢに撃ちやがった!
俺の足元のレンガ通りが跡形もなく見事に吹っ飛ぶ。
威力があり過ぎて、抉れるが正しい。
「――危なっ⁉︎ 解った、解ったからっ! まぢに撃つなっ!」
目から光が失せた半目で俺を睨みつけ、更に銃を突きつけてくるアリサ。
これ以上弄ってると、まぢに大穴を開けられ撃たれそーだ……怖っ⁉︎
―――――――――― つづく。
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