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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

玖拾肆話 怪獣。

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 俺達の目の前に姿を曝したモノ―― 。


 全身を爬虫類の鱗で覆い、体長が数メートルから数十メートルはあろう尋常でない大きさの巨躯が、鱗を纏った太い四本の脚で鈍重に起き上がってくる。

 背中には鋸山ノコギリのような棘が無造作に生え並び、長い舌を不気味に垂らす。

 気味の悪い大きく腐った眼玉は忙しなく蠢き、その眼を覆う瞼には瞳孔を中心にして、放射状の模様らしき数本の線が描かれており、左右が別々に動いて俺達を捉え睨んでいた。

 その眼の上と吻端に禍々しい三本の鋭角を生やし、側頭部らしき部位が異常に蒼く明滅していた。


「GURU GURU……」

 いつもの悍ましい内臓剥き出しのノウではなく、俺達の前に姿を現したのは――。



「なんだと!? だと!? ノウじゃなくなくて!?」

「蜥蜴……いくら蜥蜴だとしても、大き過ぎでしてよ」

 俺と最妃は困惑するも、直ぐに気を引き締める。

「ナニ!? 遂に怪獣が出たの!?」

 特撮モノが割と好きな未来に至っては、不謹慎とも思える台詞を宣い、若干嬉しそうにする。

「お姉ちゃん! 遂にって……まさか期待してたの!?」

「チュイン;」

 そんな未来にアイとリペアは呆れた表情で嘆いた。


 俺達の前に曝された予想外の姿に、皆は驚きを隠せないでいた――。


 俺は今の今までノウの暴走とばかり思っていた。
 なのに……何ぞ、コイツは!?


 俺的ナイトヴィジョンで検索しようにも、電波が届いてないので識別不能の表示が出ている。
 特徴は俺の知る蜥蜴に良く似てはいるが、最妃の言う通り余りにも大き過ぎたのだ。


 その様相は、まさに怪獣に等しい――。


「GURU GURU……」

 俺達が面食らっている隙に、姿を隠そうと動きだす。

 側頭部の出っ張り部位が異常に早く明滅し始めると、尻尾の先から徐々に透明になり姿を消していく。

「パパ、マズい! 消えられると面倒い!」

「ええ、戦い辛くなりますわね」

 やや、嬉しそうな顔を焦りに切り替えて叫ぶ未来に、相槌を打って同意する最妃。

「パパ、アイに任せて!」

 アイは何ぞ考えがあるようで、俺的お至宝を張り言い放った。

「数少ない俺の出番を……まぁいい、アイ頼む!」

 確かに未来と最妃の言う通りだ……姿を隠されると色々とマズい。
 熱源探知で少なくとも居場所は解るが、如何な攻撃かなどが判別し辛くなって危険だからな。
 俺達も何処を攻撃しているのか解り辛くなる。

「ハッ! 消える前にボクが永久に消してやんよ!」

 草刈デスサイズ改を横一文字に振り抜いて、正面から勇ましく特攻を仕掛けた未来。

「未来! 私も共に参ります!」

 未来に声を掛けて俺を見やり頷くと、直ぐに蜥蜴のようなモノの横に回り込み、両手のベレッタで支援射撃を行う最妃。

「アイも負けない! 行きます!」

 アイは腰に自慢げに身に付けている某電気鼠型の可愛いらしいアイ的ポーチから、何個かの俺的ガチャポンを素早く取り出すと、一足跳びで蜥蜴ようなモノの頭上へと舞い上がる。

「チュイン!」

 肩の上のリペアも両前脚を頭上に掲げて、器用にも空に飛び去る光の巨人の真似をした。

「絶対に逃がさない!」

 アイは蜥蜴のようなモノに狙いを定めて叫び、俺的ガチャポンを複数箇所に次々に投げつけていく。

「チュイン!」

 前脚を投球ポーズにして、何ぞ頑張ってるリペア。

「GURU GURU……」

 命中してぶち撒けられた桃色の液体蓄光塗料は、消え掛かる蜥蜴のようなモノの全身を染め上げる。

 直後に姿を隠したつもりなのか、静かに移動し始めるが、撒かれた液体蓄光塗料のお陰で全身桃色の輪郭がそのまま残り、影絵のように白い靄の中に浮き彫り立ったままだった。

「コレなら!」

 未来は草刈デスサイズ改で横真一文字に斬り付けた。

「――なっ!?」

 だがしかし、全身を覆う鱗に弾かれて火花を散らすだけ。

「硬い……ですわね」

 最妃のベレッタも全ての弾が弾かれ床に落とされた。

「だったらアイが! そこっ!」

 宙を舞い蜥蜴のようなモノを軽く跳び越えて、未来達と挟撃する形で反対側に着地を決めたアイは、間髪入れずに俺的ビームライフルと俺的バルカンで猛追撃を敢行!

「――え!? 嘘でしょ!?」「チュイン!」

 やはり、俺的ビームライフルのレーザーですら屈曲して弾かれ、俺的バルカンも床に散らばるばかりで効果がまるでない。


 蜥蜴のようなモノの想定外の鉄壁に等しい硬い鱗に最妃と未来、アイにリペアですら困惑していた――。



 ―――――――――― つづく。
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