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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

漆拾弐話 贈物。

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 開いた門のようなモノから姿を見せた、大人二人が並ぶのがやっとの通路ようなモノ―― 。

 俺とアイは真っ暗で狭い通路のようなモノを、油断せずに慎重に先へと進んで行く。

 過去のノウが出現する時に感じていた嫌な気配、鳥肌が立つような感じは一切しない。


 だがしかし――。


 既視感デジャビュ
 代わりに何故かそんな感覚がする――。


 天井に残っていた痕跡から察するに、門のようなモノは最近かどうかは知らんが、一度以上は確実に開いている。

 覚えてはいないが、俺は以前にも入ったことがあるのか?
 大体、開ける方法何ぞ全く知らない俺が、すんなり正解を導き出せたのもおかしな話だ。
 昨日、呼ばれた感じがした時の感覚もそう。


 何故こんなことが、漠然とでも俺如きに成せる?


 そう思いつつも俺には一応の心当たりがある。
 こんなことができる存在何ぞは俺の知る限り、神に疑問符くらいだ。


 だがしかし、目的が全く解らん。


 歩いて進む間に、俺は現在の状況も含めてなるべく正確に把握するように努めた。

 今のところは曲がり角などに打ち当たることもなく、ただひたすらに書いて字の如くの直線。
 どうも下に向かって降りて行ってる感じだ。


 地下深くに何ぞかがあるんだろうか。


「最早、ファンタジー以外のナニモノでもないな」

「肯定。アイもそう思います」

 踏み締める通路の感触についても、岩肌でも鍾乳石でもないし地面ですらない。
 苔らしきモノも全く見当たらない。
 触ってみても硬くもなく柔らかくもない。
 通路の壁らしきモノについても同様で、踏み締める通路と何ら変わらない。


 現代にある人工物とは全く異なる未知の素材。
 ナニとも言えないファンタジーな感触だった。


 少し進んだ先で立ち止まった俺とアイは、周囲の通路の壁らしきモノを、無駄な足掻きだろうが調べてみることにした。

 仮称、アイライトで通路全体を照らしてもらい、俺は手に持っている単なるミニライトで、通路の壁のようなモノを照らし詳しく調べた。

 いつも通り、俺的痛カーゴパンツに隠された七つのポケットから取り出した、俺的ツールで削ってみたりと色々試したが、やはりお約束の定番、無駄な足掻きに終わった。

「どう見ても明らかにオーバーテクノロジーの産物だわ」

「肯定。アイもそう思います」

「さっきも同じこと言ってたぞ、アイ?」

 通路のようなモノの脇で調べていた俺は、両目を点灯させてアニメ的俺的玩具で武装した、軍人さんもビックリな動きで辺りを警戒しつつ、抑揚なく相槌を打つおかしな子に軽く突っ込む。


 アイ、お前も大概な産物だと思うぞ?


 未知なるモノの研究には、専門の機関が膨大な時間と費用や設備を費やし人知を尽くす。
 それでも全く解明出来ないオーパーツの類い何ぞ、俺如きただの一般人……ってわけでもないけども、解る筈があるかっつーの。
 門のようなモノが開いたのは、例外中の例外だ……偶然だよ、偶々。
 俺の感じたナニかに従っただけだ。


 考えても無駄なことはいくら考えても無駄だ。
 素直にスルーしてとっとと先へと進む俺。


「一体、何処まで続いてるんだよ、この通路は」

「不明。未だに嫌な気配は全くありません」

 暗い通路のようなモノの所為で感覚が妙に狂う。

 どのくらい歩いたんだろうか。
 奥に進み始めてかなりの時間が経った気もする。
 それなのに未だ曲がり角も部屋らしきモノすら、打ち当たることもなくひたすら真っ直ぐだった。

 何処かで別れ道的な隠し通路的な何ぞかを見落としているんではと、焦燥感にかられる俺。

「流石に引き返した方が良いのか……」

 そんなことを独り言ちって歩みを進めていると、唐突に現れたやたらと広い空間。

「ここは…… もしや部屋か?」

「不明」

 出会でくわした空間の入口付近で立ち止まる俺とアイ。

 全体を把握する為に、仮称、アイライトで天井から床までを順に照らしてもらい、周囲を隈なく確認していった。

「これさ、部屋にしては……また妙だな?」

 外壁は今まで通り、なんの変化も見て取れない。

「ナニを目的としているんでしょう?」

 アイが怪訝そうに俺に伝えてくる。


 そして――。


「マスター。ナニかあります。あれは……台座?」

 仮称、アイライトで空間の中央を照らし出した時、台座らしきモノを発見したことを抑揚なく俺に伝えるアイだった。

「あゝ……何ぞそれっぽいな。ナニかが載っているしな?」

 罠はないとは思うが念の為に床を踏み締め、中央の台座のようなモノにゆっくりと近付く。


 近付くにつれ、何ぞなナニか俺達に見えてきた――。


「マス……パパ! 見て! この子、凄く可愛い♪」

 見た途端、電波メカ口調を忘れて素に戻るアイ。

「は!? まぢかよ!」

 俺も有り得ない状況に同じく驚いてしまった――。


 その台座に載せられてあったモノ。
 それは一見すると俺が知るモノ……違うな。


 俺が良く知る生物にそっくりの容姿だったのだ。
 しかも俺はその生物がめっさ好きなんだよ。


「どう言う理屈だよ!? 未知の何ぞかの中に、なしてこんな生物が唐突に寝てんだよ!?」


 それは――、


 クロクマハムスターに瓜二つだった――。



 ―――――――――― つづく。
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