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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

陸拾肆話 悪戯、其の参。

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「「「――な⁉︎」」」

「あらあら、素敵なお部屋ですこと」

 中に入った斗家ご一行は更に唖然としてしまう!


 禍々しい雰囲気の外見とは真逆だったのだ!


 広いエントランスの壁は木目調で全て統一され、上品な調度品、清潔な絨毯、美しい絵画、豪華なシャンデリア云々。
 
 それはそれは――優雅とも言えるほどに美しい様相だったのだ。

「――驚いたのよ? 崇め奉って褒めちぎっても良いのよ?」

 腰に手をやり俺的お至宝を張って、どうよ的アピール。
 更に、鼻を鳴らしての超ドヤ顔で自慢げに宣ってくれやがるアリサ。


 そういやアリサは、昔から悪戯が大好きだったのを忘れてた。


「アリサ叔母さん、秘湯って何処よ?」

Hey!おいっ! 未来ちゃん、誰が叔母クソババァさんなのよ! ――って、まぁ、良いのよ。ついて来るのよ?」

 未来の冗談を珍しく軽く受け流したアリサ。

 運んで来た手荷物などを部屋へと運んで纏めて置くようにと、付き添いのメイドさん達に指示を出す。

 そして奥の部屋へと皆を連れて行き、勝手口を開けた。


 そこから下へと延びる、異様に長い石畳的階段が姿を現した。


「足元に気を付けるのよ?」

 アリサについて皆で降りていく。

 行き着いた先には、大人二人分くらいの幅だろうか?
 天然洞窟の入口が口を開け、真っ白い湯煙を漏らしていた。

「ここなのよ? アリサ専用なのよ?」

 そこを指差し、再びどうよ的ドヤ顔で自慢げに宣うアリサ。


 大人二人がやっとの狭い通路を少し歩くと、岩肌と鍾乳石に囲まれた広い空間に行き着く。


 斗家自慢の大浴場。
 その五倍以上は軽くある屋内空間である!


 そこに姿を現した、これまた巨大な露天風呂と言うかな洞窟風呂。

「火山熱で湧いた温泉ではない?」

 まるで、牛乳かと思うほどに綺麗な乳白色なお湯は、硫黄臭さなどが全くしないから驚いた俺。

「デカっ!」「凄~い!」

「本当に素晴らしいですわ」

「クォ~ン;」「ハッハ♪」「フフン♪」

 お風呂大好き斗家美女軍とベロにスゥは大喜び。
 此処に来るまで元気が無かったケル。実は大の風呂嫌い。
 臭いで解ってたんだろう。温泉を目の当たりにして更に項垂れてしまった。
 額に前足を持って来て『あゝやっぱり』的表情。

「ここを独り占めって……アリサ、職権濫用違う?」

「喧しいのよ? 良いのよ?」


 突如、聞かん坊のベロが温泉にダイブ!
 水飛沫を巻き上げ温泉に跳び込んだ!


「ハッハーッハン♪」

 そして、仰向けに腹を出して器用に浮いてきたベロだったり。
 特徴的な金眼を細め、めっさご満悦の表情で。


 漫画チックに浮いてくんなや。
 お前も謎生物の着ぐるみ認定するぞ?


「やるな、ベロ! ボクも入ってこ! ――とぅ!」

 ベロの素敵ダイブに感化された未来は、速攻で着ている衣服を脱ぎ捨てスっ裸になる。

 ほっこり浮いてるベロの横に目掛け、水飛沫を巻き上げながら渾身のダイブを決めた!

「アイも! ケルさん行こ~♪」

 アイはケルの首根っこをガシっと両手で掴み、浅瀬の方へと無理矢理に引き摺って強制連行。

「ク、クォ~ン;」

 地面に縋り付き、金眼を涙目にして必死に抵抗するケル。

「フッフーン♪」

 スゥはアイに尻尾を振りながらついて行った。

「ケル、ご愁傷様。行動力あり過ぎだな双子組」

「未来ちゃんなのよ? 仕方ないのよ?」

「誰に似たのかしら? ね、彼方」

 相変わらずの未来に呆れ顔の俺とアリサ。
 最妃は俺を上目遣いに覗きこんで茶化してきたり。


 俺似って言うかさ、どう見ても最妃そっくりじゃね?


「待ってても仕方ないのよ? 入ってくのよ?」

 アリサがお付きのメイドさんに指示を出すと、そのメイドさんは会釈をするなり温泉をあとにした。
 どうやら着替えなどを取りに行かせたっぽい。
 その後、スっ裸になるなり温泉に入るアリサ。

「あらあら。折角なので私も。彼方もご一緒しましょうか。オホホ~」

 言うな否や、衣服を脱いでスっ裸になる最妃。

 俺的超お至宝がミラクルたっゆんと剥き出しにされた! ――眼福、眼福。

 そして、ナニを考えているのか俺の知るところでは全くないのだが、悪戯っ子の無邪気な笑顔になって俺をも脱がしに掛かる!

「じ、自分で脱げるから! だ、大丈夫だから!」

 そんな、ミラクルたっゆんで大はしゃぎな俺嫁に、タジタジになってしまう俺。


 最近こんなのばっかなのな?
 暗い顔されるよりかは愉しそうで良いのだが。


「彼方――私に悪戯したお仕置きですわ」

「気付いてたんかい!」「オホホ~」

 必死で抵抗する俺に、不適切な笑顔で襲いくる最妃。

 抵抗虚しく、俺的痛カーゴパンツに手を掛けてひん剥いた!


「どさくさ紛れに何処触って――あ。駄目、あ。ソ、ソコはいけない気分に――あ。コラ! あ」


 ――――俺、散々に悪戯されました。


 ほどなくして、未来とアリサにアイの方から浮いた浮かないの押し問答が聞こえてきたり、嫌味か~! とかなんとかな未来の悲痛の叫びと、ケルの悲鳴っぽいのも珍しく聞こえてきたり。


 あゝ相変わらず平和ですな~、俺ん家だけは。


 最妃とキャッキャ、ウフフでご満悦の俺は、そんな事はどーでも良かったり。

 俺的超お至宝な双丘に埋まってほっこり気分でご満悦な俺に、アリサが近付いてきて不穏当な台詞を宣った。

「義兄さん、またNasty face不適切なエロい顔なのよ? まぁ良いのよ? 実は――アレなのよ?」

「俺、今は幸せ満喫中だから♪ あとでな」

「あらあら」

「義兄さん! 良いから見るのよ!」

 アリサが怒る真面目な顔をして指差したので、何ぞと面倒臭そうにそっちを見やる俺。


 そこにあったモノ。
 自然の洞窟では、全く不釣り合いな門のようなモノ――。


 つまり、簡単に言うと異質な門。
 更に言うと、オーパーツ的ゲート。


 そんな何ぞが、温泉の更に奥に、ただポツンとあったのだ。

「やっぱり、俺に何ぞさせたかったのか」

 アリサを見やり怪訝そうに尋ねる俺。

「ごめんなのよ? 騙す気はなかったのよ? ここも調査中に、偶然、見つけた温泉なのよ?」

 言葉とは裏腹に、表情は悪びれもせず、そう言ってくるアリサ。

「で、明かにオーバーテクノロジーの塊だな。ゲートっぽいアレさ、どうせ開かなかったってオチだろ」

「流石なのよ? 危険もなさそうなのよ? だからアリサが個人的に調べてるのよ? 義兄さんの知恵を借りたかったのよ?」

「――おっふっ」「な、ナニなのよ?」

「なんでもない。アリサのことだ、正直に言わなかった理由は、例のノウ絡みの事件で俺がへこんでたからか? 超常関係だし言い出し難かったってとこか」

「流石なのよ? でもここは関係ないのよ? NoUノウとは全く種類が違うTechnology未知のモノなのよ? 調べれば調べるほど、Fantasy不思議なモノなのよ?」

「危険がないってんなら協力してもやぶさかではないが。まぁ、他ならぬ俺義妹の頼みだからな。俺だぞ? 変に気を遣い過ぎだ、アリサ」

 コツンと額を突いてやった。
 
「義兄さん…… 」

「明日にでも改めて見てみよう」

 そして泣きそうなアリサの頭をグシャグシャと撫でてやる俺。

「彼方」

 背中を預けていた俺的超お至宝な双丘の感触が、力強く押し付けられて密着感が一層増した。

 そっと振り返る俺に密着している最妃は、和やかな笑顔で頷いた。

 どうやら、アリサの手伝いに最妃は賛成らしい。

 だが、表情とは裏腹に温泉に浸かって隠れてる、最妃の柔らかくも優しい手は、いけない手つきで未だに悪戯してもてあそんでいるんだけども。


 いつまで?
 もしかヤキモチ妬いてんのかね?
 ま。それはそれ。


 アリサとひと通り会話を重ね、俺家族を連れて来た本当の理由が解った。

 認識阻害の件を考慮に入れて意識して見ても、ゲートからは確かに嫌な感じは全くしない。

 それどころか意識して見やった途端に、俺の知るところでは全くないのだが――、


 何故か呼ばれているような感じがした。


 調べれば何ぞかの重要な手掛かりが得れるかもだ。
 ノウ関連でない何ぞかを希望したい。

 期待に胸と何処が膨らむ不適切な笑顔の俺は、最後にアリサの俺的お至宝な双丘をガン見しておく。

 すまん、俺も一応は漢だからな。


 うん、確かに浮いているな。
 うむ、良くも此処まで成長したなアリサ。


 ――って、っがーう!
 そうぢゃない、そうぢゃないでしょーが俺!


 最妃の悪戯の所為で変なことばっか考えるわ……って、いつまで触って遊んでんの⁉︎
 俺的には構わんが……せめて場所くらいは弁えてくださる?

 後で、最妃にどんないけないお仕置きをしようかとか考えつつ、明日の調査手順を考察する器用な俺だった―― 。



 ―――――――――― つづく。
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