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第弐章 壊れゆく、日常――デパート編。

肆拾弐話 疑問、其の参。

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 内臓剥き出しなうえ、首から下だけの状態で頭は見当たらない。

 その謎の何ぞなモノは小刻みに震えながら、背中を床側に向けた仰向けの状態で、蜘蛛のように手足をついて蠢いていたのだ。

 その様相から、ノウには違いないモノ。
 ただ、ここの制服らしきモノを羽織っている――。


 つまり、犠牲者ってことになる。


「グロいわ!」「あらあら」

「キモ」「肯定」

 余りにも酷い様相に、つい悪態をついてしまった俺に、突如、向かってきた謎の何ぞなモノ。

「リアルなゾンビって――俺、漏らしそう」

「――ボクも生理的に無理かな~」

「肯定」

「珍しい格好で面白いですわよ?」

「「「その価値観ナニ!?」」」

 飛び掛かっては来るも、皆が余裕で回避できるくらい、ホラー映画さながらに動きが鈍い、謎の何ぞなモノだったり。


 生きて……はいないよな? ……頭ないし。
 現実世界で死体が蠢くファンタジー極まるわけ解らんこと何ぞ、まぢ有り得ない!
 事実、動いてやがるなんて――⁉︎


 あ……事例あったわ。
 現実世界においても、死体が動くし蠢く事例が……。


「意思無き肉塊だったか? それがこの女性……いや、ノウなのか?」

 確か……鼠か何ぞの死体に電気信号を送って、擬似的に脳から命令を伝えたかのように見せかけ筋肉を動かすと言った、悍ましい実験がな。


 だとすると、何処ぞから何ぞかが命令とかを送ってる?


 うーん、まだ推測の域を出れん。
 考えても無駄なことはいくら考えても無駄。
 とにかく、目の前に迫る危険の対処の方が最優先事項だ!

「とりあえず、なんとかせんと――」

 俺的電波脳で理不尽なモノを解釈してる間に、未来に目配せを送り頼む俺。

「気は進まないけど……りょ~」

 心底、嫌そうな顔で返事するが……。

「――えい! ですわ」

 拳を鳴らす未来の前に割り込むように入り、無茶なことをやらかす最妃。


 近くにあった消化器でぶん殴ったのだ!


 吹っ飛ばした謎の何ぞなモノに優雅に歩み寄り、そして嬉々とした笑顔でぶん殴り続けた――。


 暫くして動かなくなる謎の何ぞなモノ。


「オホホホ」

 額の汗を拭う仕草をしたあとで、ふぅと一息つくと、床にドカリと持っていた消化器を降ろし、やりきってやった感が満載の素敵ドヤ笑顔で俺達を見やり頷く最妃であった。

「「「は?」」」

 消化器で殴殺している有り様を目の当たりにした他の面々は、当然、唖然とするわな。

「えー。目標、ママが完全に沈黙……ないわ」

「ママ……ないわ~」

「最妃! 無茶やらかすな! 消化器で殴殺ってまぢホラーだろ! ないわ!」

「ええっ⁉︎ ゴ、ゴキブリと同じですわよ?」

「「「何処が」」」


 最妃も確かに何ぞかの人外には違いないしな。
 だが、いくら最妃が人外だったとしても、消化器如きを鈍器にして鮮やかに殴殺ってなぁ……。


 実際、その程度だって言うのが、恐ろしく引っ掛かるんだが。


「大きさも元の女性と変わってないみたいだし……やっぱり意思無き肉塊なノウってヤツなのか?」

 ここで疑問に思ったら多分負けだよな。
 思考の迷路にズッポリハマりそう。
 帰ったのちに細かく調べてみるしかないのな……一旦、スルーしとこ。

 最妃のおかげで被った人的被害もなく?
 謎の何ぞなモノを無事に退けることに成功した?


 いや、未来とアイには精神的ダメージだろうけどな。
 俺的な疑問がめっさ大量に増えたけどな!


 気を取り直し、再び歩みを進める斗家の面々――。


 少し先で仮称、アイライトに照らし出される、非常階段に入るドアに差し掛かかった。

「――開くか?」

「鍵かかってるよ、パパ」

 この区画の客室へは、確か専用のエレベーターでないと入れない仕様になっていた筈。

 一般客が不用意に出たり入ったり出来ないように、防犯対策の一環でそんな感じになっているらしい。

 電気が通っていないので、当然、エレベーターは不可。
 他の移動手段はと言えば、非常階段のみに絞られるってわけだ。


 更に言うと、脱出はそれ以外にないってことになる。


「だそりゃそうだろうな? ――ちょい待つよろし」

「ナニ?」

 俺的痛カーゴパンツの七つの隠されたポケットに素早く手を突っ込み、あるモノを取り出す俺。

「こんな事もあろうかと常に持ち歩いていた、色んな工具を詰め合わせた俺セレクト俺的ツールを、まぢに使うハメになろうとはな……」


 ちなみに、普通に売られてる単なる工具セットだよ。
 俺的と言うからには俺独自に改良した特殊工具何ぞも、ちゃんと入ってたりするのは言わずもがなだけど。


「電子ロックだろうがシリンダーロックだろうが、果ては更衣室に備え付けの古き良き時代の錠前だろうが、俺に開けれない鍵は……ない!」

「パパ……それ、あかんヤツ」

「肯定。泥棒は駄目。下着泥棒はもっと駄目」

「あらあら」

「解ってるっての! 誰が犯罪目的で持ち歩くかっての!」

 仮称、アイライトで手元付近を照らしてもらい、鍵に俺的ツールの工具を差し込み、ちょちょいのちょいと弄くってやる。


 数分も掛からず難なく開いた鍵。


「流石だ、俺!」

「ボクは認めたくない」

「肯定」

「素敵ですわ、彼方」

「「どこが!」」

 未来とアイに呆れられたがそこは止むなし。
 最妃に褒めて貰えたからいいや、うん。



  ―――――――――― つづく。
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