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第弐章 壊れゆく、日常――デパート編。

肆拾話 疑問。

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 崩落した大穴から館内に降りる斗家の面々――。

「ナニが居るか起こるかすら、全く解らん! 警戒は厳に! 油断はするなよ?」

「りょ!」「索敵継続中」

「承知ですわ」

 館内移動時はナニが起こるか解らない。

 双子組は戦力としては申し分ない。
 なので、敵感知技能搭載のアイと、勘も鋭く火力もある未来を支援に付けた、索敵特化双子組に前衛を任すことにした。

 だが、最妃は力を使うことに制約ないし制限があって、その理由すらも隠さざるを得ない状況に置かれているらしいことをさっき言っていた。

 ならば、戦力から確実に外すか、代替を用意して、力を使わせないように配慮しておくべきだな。

 屋上で合流した時に気絶していた双子組も、ナニが起きたのか覚えていないみたいだった。

 その様子から察するに、最妃の知られたくない何ぞかを隠す為か何ぞの理由で、側にいた双子組に何ぞかを施したりして、記憶を改竄又は消去したんではないかと思う。

 見てないので憶測だが、多分、それで合ってる。

 ならば尚の事だ――。

 俺は言わずもがなだが、双子組の為にも、いつも通りの和やかで優しい素敵な最妃のままで居てやって欲しいからな。

 そんなわけで役立たずな俺は、最妃と並んで後方に続くことに決まった。

 これが最も自然な形だな――。

 あとは……俺がこの中で一番の問題かもしれん。

 油断なく俺的ドラグーンを構えたりとかして格好付けまくってはいるが、あくまでも形だけで残弾がない……。

 予備の弾何ぞについても、六階のコインロッカーに預けてしまってるし、俺的ガチャポンも少し残っている程度だ。

 だがしかし、これは屋内で使うのには少し危なっかしい。

 身体能力的には普通のヒトよりは頑丈らしいと、先の戦闘で解ったが……事実それだけのことだしな。

「戦いになると、確実に足手纏い確定だな」

 俺的電波思考で戦力外通知を自分に出す俺。

 そんな役立たずな俺に嫌気がさしつつも、降りたった位置から周囲を注意深く見やる。

「この階は、確か……宿泊客用の客室ではなかったか?」

 各部屋のドアに番号プレートがついていたのを見て、出掛ける前にネットで調べたことを思い出す俺。

 それらしいヒトの気配は全く感じない。
 長い通路には絨毯が引き詰められ、消火機構が働いたらしく水浸しになっていた。

 先程の崩落の際に壊れたらしい壁付近からは、配線が剥き出しで火花が散っていたりもする。

 窓等もなく、奥に行けば行くほどに暗くなっている。
 照明等も消えているんだから仕方ないだろう。


 しかし、この有り様は……何処ぞの洋画っぽい。
 リアル版バイオハザ◯ドそっくりなのな。


 前に観た洋画や遊んでたゲームの事を考えつつ、俺的痛カーゴパンツに隠された七つのポケットの内のひとつに手を突っ込み、単なるミニライトを取り出して点灯させる。

「未来、奥が暗いから持ってけ」

「サンキュ! パパ!」

 手に持っている単なるミニライトを未来に投げて渡した俺。

「では、アイも――」

「ミニライトは一個しかないん――ナニ⁉︎」

 アイの呟きから自分の分も欲しいのかと思い、手持ちがないことを伝えようとアイの方を見て、俺は顎が外れんばかりに驚いてしまった!


 アイの両目からビーム……違うな。
 サーチライトのように両目が光って、周囲一帯を明るく照らし出したのだ!


 しかも、LEDライト顔負けの明るさでな?


「何ぞ、それ!?」

「暗い夜道も安心安全」

「あらあら」

 美少女の両目が暗闇に光っておいでです。
 更に標語のようなことも宣っておいでです。
 新手のギャグか何ぞで御座いましょうか?

「キモ」

「酷! お姉ちゃん、酷っ!」

 肩を竦めて呆れた顔で呟く未来に、目を光らせて未来を照らし、異議を唱えるアイ。

「便利でよろしくてよ」

 実用的だと微笑んで、アイの頭を撫でて褒める最妃。


 美少女の両目からビーム……違うんだったな。
 俺も大概キモいと思うぞ?


「実際、キモいわ……アイ、そんな便利機能あったん?」

「肯定」

「キモ」

「だから酷い! お姉ちゃん、酷っ!」


 元俺的素敵サイクルの機能を取り込んでいる?
 ライトにスマホとかも取付けっ放しだったから?
 それも再構成の時に取り込んだってことなのか?

 だとすると……土地勘とかがあったって言うのは、単に俺の記憶を継承していたからと言うだけでなく、スマホかサイクルコンピューターに搭載のGPSとかナビアプリの機能だったってことか?


「もしか、俺のスマホの機能とか……それも使えるとか?」

「肯定。アプリを利用可能」

「やっぱりかー」

「キモ」

「だから、なんで! お姉ちゃん、酷っ!」

 未来に散々光る目のことで弄られまくりのアイ。
 ほっぺをぷく~っと膨らませ、必死に異議を唱える。
 しかし、俺的便利家電の称号は伊達じゃないのな。


 役一名変な子が居るが、予定通り隊列を組む。


 双子組が先頭で索敵に集中しつつ辺りを警戒し、戦力外の俺は最妃と手を繋いで後方から続く――。



 ―――――――――― つづく。
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