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第壱章 崩れゆく、日常――遭遇編。

弐拾肆話 回帰、其の陸。

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 互いの頭と背中を洗い終わり、湯船にまったりと浸かる。

 いつまで経っても親離れしない子と、子離れできない親で、たわいもないオタク話を交わし、小馬鹿にされたり呆れられたり。


 そんな、愉しいひと時を過ごした。
 超常の件に関してはお互い、一切、触れずに――。


「どうぞ、彼方」

 俺が風呂から上がると、冷たいビールとおつまみを用意して持ってきてくれた、和やかな微笑みの最妃。

「おー、有難う!」

 腰巻タオル一丁で、食卓の椅子にドカリと座り、ビールを煽ってつまみを口にする俺。


 風呂上がりのビールも、つまみも、最妃も最高だった!


「お話はアイシャさんから全て伺いました――ご苦労様でした、彼方」

「ん? 突然、ナニ?」

「彼方がナニモノでも……私はお側におります。どうか安心なさって下さい」

「あゝ有難う、最妃」

「御礼を言われるほどでなくってよ? 当たり前」

 最妃が優しく微笑んで俺の顔に徐に近付くと、頬に軽くキスをして労ってくれた。


 俺がナニモノでもか……有難う、最妃。
 再構成された時点で、実際、元通りってわけではない……。
 正しくヒトであるかも定かではないしな。


 そう言って和かに微笑む最妃の胸元には、俺が誕プレで贈ろうと密かにこさえていた、神秘の宝珠が納まる俺的ペンダントが収まっていた。

「あ~っ!? それ、俺的ペンダントっ!? バレたんか? チッ、サプライズ失敗かよ! チクショ~っ! めっさ驚かそ思ったのに~!」

「彼方がお戻りの際に光っておりましたの。知らぬフリで元に戻しておいてもよろしかったのですけど、白けさせてしまっては申し訳ありませんから。――ですので、少し早いですけれど、こっそり戴いてしまいましたわ。と~っても素敵ですわよ、彼方」

 そして俺にしな垂れ掛かると、今度は熱烈なキスをしてくれた最妃。

「さよか」

 サプライズは失敗したが、めっさ喜んでくれたようでナニよりだよ、うん。

 不意にアイシャはどうしてるかなと気になった俺は、横目で様子を見やる。

 既に未来のパジャマに着替えていたアイシャは、ソファーに座って頻繁にチャンネルを切り替えてたりして、ニュース番組を色々と見ているようだった。


 ごく自然に。ごく当たり前に。
 実に残念な事に。


 昨日まで、俺的素敵サイクルと違ったか?

 テレビにカルチャーショックを受ける、過去からやって来たヒトみたいな、お約束な騒動ってヤツを期待してたのにな――残念だよ。

 しかし、なんでそんなにヒトっぽいのかね?
 中身はヒト? オートマタ的何ぞ?
 実際はどっち?


「アイシャ、ニュース漁ってナニしてんの?」

 電波的疑問を頭に巡らせつつ、ピコピコやってるアイシャに声を掛ける俺。

「先ほどの超常の件に関する報道がないか、各局のニュース番組などを調べてました」

 割りと真剣な表情で、俺の質問に返してくるアイシャだった。
 俺も気になってたことなので、もう少し追求することにした。

「何ぞ関連性のありそうなニュースでも見つかったか?」

「肯定。凄い特番で、何処も彼処もそのニュースばかりです」

「やっぱりか……」

「肯定。凄い特番で、何処も彼処もそのニュースばかりです」

「いや、聴こえてるわ! 二度言うの、ナニ?」

大事おおごとだけに大事だいじなので、二度言いました」

「さよか」

 あれだけの規模での大惨事だ。
 そりゃあ、凄まじいほどの特番になるだろうよ……普通はな?


 だがしかし――。


 今回は超常が携わって、引き起こした事象。
 あれらの痕跡は秘匿されてもおかしくはない。


 情報規制とか箝口令とかそんな何ぞな? 


 そんな国家機関側からの動きもまるで皆無ときた。

 ニュース番組で、現場がありのままに報道されている時点で、干渉なしは確定。

 正直言って俺的には、国家機関な何ぞが即座に手を打ってくるだろうと期待してたが。

 それは、希望的観測に過ぎなかったか――。

 推定、外宇宙知的生命体側からも、記憶消去か改竄できるピカッと光る何ぞとか、何処ぞの洋画で観た、そんな感じの何ぞで、干渉してきてはいない。


 隠す必要が無いと考えてるのか、そこまでしないだけと考えたほうが良いのか、或いは俺的見解が根本から間違ってるのか?


 どちらにせよ、慎重に対処していかなければ、大きな社会問題にも発展する激おこ案件だな。


 このままだと大騒ぎどころではなくなる。
 かなりSF的な話だが、宇宙戦争な何ぞやらに発展でもしよーもんなら、それこそ目も当てられん。


 地球がヤバい! などと宣う預言者的老婆とか現れよるわ、うん。


 ちなみに俺は、電波なのを除けば単なる一般人的な普通のおやぢ。

 格好良く現れて悪を倒す正義の味方でもなければ、国家の特務機関に所属するエージェントですらない。

 自分から首を突っ込む、おヒト好しですらない。

 更に言うと、俺の最優先事項は、あくまでも家族だ。

 家族に降り掛かる火の粉に関しては、どんなことをしても、この世から火元ごと完全抹消してやる覚悟と決意はあるんだがな?


 結論――今は様子見で、華麗にスルーが最適解だ。


 こんなこともあろうかと、密かにやっておきたい準備やら何ぞやらが、結構、山積みなもんでね。
 備えあれば憂いなしってヤツだよ、うん。



 ―――――――――― つづく。
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