24 / 154
第壱章 崩れゆく、日常――遭遇編。
弐拾肆話 回帰、其の陸。
しおりを挟む
互いの頭と背中を洗い終わり、湯船にまったりと浸かる。
いつまで経っても親離れしない子と、子離れできない親で、たわいもないオタク話を交わし、小馬鹿にされたり呆れられたり。
そんな、愉しいひと時を過ごした。
超常の件に関してはお互い、一切、触れずに――。
「どうぞ、彼方」
俺が風呂から上がると、冷たいビールとおつまみを用意して持ってきてくれた、和やかな微笑みの最妃。
「おー、有難う!」
腰巻タオル一丁で、食卓の椅子にドカリと座り、ビールを煽ってつまみを口にする俺。
風呂上がりのビールも、つまみも、最妃も最高だった!
「お話はアイシャさんから全て伺いました――ご苦労様でした、彼方」
「ん? 突然、ナニ?」
「彼方がナニモノでも……私はお側におります。どうか安心なさって下さい」
「あゝ有難う、最妃」
「御礼を言われるほどでなくってよ? 当たり前」
最妃が優しく微笑んで俺の顔に徐に近付くと、頬に軽くキスをして労ってくれた。
俺がナニモノでもか……有難う、最妃。
再構成された時点で、実際、元通りってわけではない……。
正しくヒトであるかも定かではないしな。
そう言って和かに微笑む最妃の胸元には、俺が誕プレで贈ろうと密かにこさえていた、神秘の宝珠が納まる俺的ペンダントが収まっていた。
「あ~っ!? それ、俺的ペンダントっ!? バレたんか? チッ、サプライズ失敗かよ! チクショ~っ! めっさ驚かそ思ったのに~!」
「彼方がお戻りの際に光っておりましたの。知らぬフリで元に戻しておいてもよろしかったのですけど、白けさせてしまっては申し訳ありませんから。――ですので、少し早いですけれど、こっそり戴いてしまいましたわ。と~っても素敵ですわよ、彼方」
そして俺にしな垂れ掛かると、今度は熱烈なキスをしてくれた最妃。
「さよか」
サプライズは失敗したが、めっさ喜んでくれたようでナニよりだよ、うん。
不意にアイシャはどうしてるかなと気になった俺は、横目で様子を見やる。
既に未来のパジャマに着替えていたアイシャは、ソファーに座って頻繁にチャンネルを切り替えてたりして、ニュース番組を色々と見ているようだった。
ごく自然に。ごく当たり前に。
実に残念な事に。
昨日まで、俺的素敵サイクルと違ったか?
テレビにカルチャーショックを受ける、過去からやって来たヒトみたいな、お約束な騒動ってヤツを期待してたのにな――残念だよ。
しかし、なんでそんなにヒトっぽいのかね?
中身はヒト? オートマタ的何ぞ?
実際はどっち?
「アイシャ、ニュース漁ってナニしてんの?」
電波的疑問を頭に巡らせつつ、ピコピコやってるアイシャに声を掛ける俺。
「先ほどの超常の件に関する報道がないか、各局のニュース番組などを調べてました」
割りと真剣な表情で、俺の質問に返してくるアイシャだった。
俺も気になってたことなので、もう少し追求することにした。
「何ぞ関連性のありそうなニュースでも見つかったか?」
「肯定。凄い特番で、何処も彼処もそのニュースばかりです」
「やっぱりか……」
「肯定。凄い特番で、何処も彼処もそのニュースばかりです」
「いや、聴こえてるわ! 二度言うの、ナニ?」
「大事だけに大事なので、二度言いました」
「さよか」
あれだけの規模での大惨事だ。
そりゃあ、凄まじいほどの特番になるだろうよ……普通はな?
だがしかし――。
今回は超常が携わって、引き起こした事象。
あれらの痕跡は秘匿されてもおかしくはない。
情報規制とか箝口令とかそんな何ぞな?
そんな国家機関側からの動きもまるで皆無ときた。
ニュース番組で、現場がありのままに報道されている時点で、干渉なしは確定。
正直言って俺的には、国家機関な何ぞが即座に手を打ってくるだろうと期待してたが。
それは、希望的観測に過ぎなかったか――。
推定、外宇宙知的生命体側からも、記憶消去か改竄できるピカッと光る何ぞとか、何処ぞの洋画で観た、そんな感じの何ぞで、干渉してきてはいない。
隠す必要が無いと考えてるのか、そこまでしないだけと考えたほうが良いのか、或いは俺的見解が根本から間違ってるのか?
どちらにせよ、慎重に対処していかなければ、大きな社会問題にも発展する激おこ案件だな。
このままだと大騒ぎどころではなくなる。
かなりSF的な話だが、宇宙戦争な何ぞやらに発展でもしよーもんなら、それこそ目も当てられん。
地球がヤバい! などと宣う預言者的老婆とか現れよるわ、うん。
ちなみに俺は、電波なのを除けば単なる一般人的な普通のおやぢ。
格好良く現れて悪を倒す正義の味方でもなければ、国家の特務機関に所属するエージェントですらない。
自分から首を突っ込む、おヒト好しですらない。
更に言うと、俺の最優先事項は、あくまでも家族だ。
家族に降り掛かる火の粉に関しては、どんなことをしても、この世から火元ごと完全抹消してやる覚悟と決意はあるんだがな?
結論――今は様子見で、華麗にスルーが最適解だ。
こんなこともあろうかと、密かにやっておきたい準備やら何ぞやらが、結構、山積みなもんでね。
備えあれば憂いなしってヤツだよ、うん。
―――――――――― つづく。
いつまで経っても親離れしない子と、子離れできない親で、たわいもないオタク話を交わし、小馬鹿にされたり呆れられたり。
そんな、愉しいひと時を過ごした。
超常の件に関してはお互い、一切、触れずに――。
「どうぞ、彼方」
俺が風呂から上がると、冷たいビールとおつまみを用意して持ってきてくれた、和やかな微笑みの最妃。
「おー、有難う!」
腰巻タオル一丁で、食卓の椅子にドカリと座り、ビールを煽ってつまみを口にする俺。
風呂上がりのビールも、つまみも、最妃も最高だった!
「お話はアイシャさんから全て伺いました――ご苦労様でした、彼方」
「ん? 突然、ナニ?」
「彼方がナニモノでも……私はお側におります。どうか安心なさって下さい」
「あゝ有難う、最妃」
「御礼を言われるほどでなくってよ? 当たり前」
最妃が優しく微笑んで俺の顔に徐に近付くと、頬に軽くキスをして労ってくれた。
俺がナニモノでもか……有難う、最妃。
再構成された時点で、実際、元通りってわけではない……。
正しくヒトであるかも定かではないしな。
そう言って和かに微笑む最妃の胸元には、俺が誕プレで贈ろうと密かにこさえていた、神秘の宝珠が納まる俺的ペンダントが収まっていた。
「あ~っ!? それ、俺的ペンダントっ!? バレたんか? チッ、サプライズ失敗かよ! チクショ~っ! めっさ驚かそ思ったのに~!」
「彼方がお戻りの際に光っておりましたの。知らぬフリで元に戻しておいてもよろしかったのですけど、白けさせてしまっては申し訳ありませんから。――ですので、少し早いですけれど、こっそり戴いてしまいましたわ。と~っても素敵ですわよ、彼方」
そして俺にしな垂れ掛かると、今度は熱烈なキスをしてくれた最妃。
「さよか」
サプライズは失敗したが、めっさ喜んでくれたようでナニよりだよ、うん。
不意にアイシャはどうしてるかなと気になった俺は、横目で様子を見やる。
既に未来のパジャマに着替えていたアイシャは、ソファーに座って頻繁にチャンネルを切り替えてたりして、ニュース番組を色々と見ているようだった。
ごく自然に。ごく当たり前に。
実に残念な事に。
昨日まで、俺的素敵サイクルと違ったか?
テレビにカルチャーショックを受ける、過去からやって来たヒトみたいな、お約束な騒動ってヤツを期待してたのにな――残念だよ。
しかし、なんでそんなにヒトっぽいのかね?
中身はヒト? オートマタ的何ぞ?
実際はどっち?
「アイシャ、ニュース漁ってナニしてんの?」
電波的疑問を頭に巡らせつつ、ピコピコやってるアイシャに声を掛ける俺。
「先ほどの超常の件に関する報道がないか、各局のニュース番組などを調べてました」
割りと真剣な表情で、俺の質問に返してくるアイシャだった。
俺も気になってたことなので、もう少し追求することにした。
「何ぞ関連性のありそうなニュースでも見つかったか?」
「肯定。凄い特番で、何処も彼処もそのニュースばかりです」
「やっぱりか……」
「肯定。凄い特番で、何処も彼処もそのニュースばかりです」
「いや、聴こえてるわ! 二度言うの、ナニ?」
「大事だけに大事なので、二度言いました」
「さよか」
あれだけの規模での大惨事だ。
そりゃあ、凄まじいほどの特番になるだろうよ……普通はな?
だがしかし――。
今回は超常が携わって、引き起こした事象。
あれらの痕跡は秘匿されてもおかしくはない。
情報規制とか箝口令とかそんな何ぞな?
そんな国家機関側からの動きもまるで皆無ときた。
ニュース番組で、現場がありのままに報道されている時点で、干渉なしは確定。
正直言って俺的には、国家機関な何ぞが即座に手を打ってくるだろうと期待してたが。
それは、希望的観測に過ぎなかったか――。
推定、外宇宙知的生命体側からも、記憶消去か改竄できるピカッと光る何ぞとか、何処ぞの洋画で観た、そんな感じの何ぞで、干渉してきてはいない。
隠す必要が無いと考えてるのか、そこまでしないだけと考えたほうが良いのか、或いは俺的見解が根本から間違ってるのか?
どちらにせよ、慎重に対処していかなければ、大きな社会問題にも発展する激おこ案件だな。
このままだと大騒ぎどころではなくなる。
かなりSF的な話だが、宇宙戦争な何ぞやらに発展でもしよーもんなら、それこそ目も当てられん。
地球がヤバい! などと宣う預言者的老婆とか現れよるわ、うん。
ちなみに俺は、電波なのを除けば単なる一般人的な普通のおやぢ。
格好良く現れて悪を倒す正義の味方でもなければ、国家の特務機関に所属するエージェントですらない。
自分から首を突っ込む、おヒト好しですらない。
更に言うと、俺の最優先事項は、あくまでも家族だ。
家族に降り掛かる火の粉に関しては、どんなことをしても、この世から火元ごと完全抹消してやる覚悟と決意はあるんだがな?
結論――今は様子見で、華麗にスルーが最適解だ。
こんなこともあろうかと、密かにやっておきたい準備やら何ぞやらが、結構、山積みなもんでね。
備えあれば憂いなしってヤツだよ、うん。
―――――――――― つづく。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
その幼女、巨乳につき。〜世界を震撼させるアブソリュートな双丘を身に宿す者――その名はナイチチ〜 ――はい? ∑(゚Д゚)
されど電波おやぢは妄想を騙る
ファンタジー
たゆんたゆんでなく、ばいんばいんな七歳の幼女であるナイチチは、実はあらゆる意味で最強の盾を身に宿すシールダーだった。
愉快な仲間二人をお供に連れて訪れていた森の奥で、偶々、魔物に囲まれて瀕死に追い込まれていた、珍しい棒を必死に握り締め生死の境を息を荒げ堪えていた青年タダヒトの窮地を救うことになる――。
魔法少女ってマジカルなのか? ――で、俺、惨状? そんな俺は社畜ブサメン瓶底メガネキモオタク。愛と夢と希望をブチ壊し世界の危機に立ち向かう?
されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
極平凡で、ありふれた、良くある、日常の風景――。
朝起きて、準備して、仕事に出掛ける。
俺にしてもいつも通りで、他の誰とも何も変わらない――筈だった。
気付いた時には、既に手遅れだった。
運命の歯車が突如大きく、歪み、狂い、絡みあって――まるで破滅へと誘うかのように、今日、この日、たった今――目の前で動き出したのだ――。
そして俺は――戦うことを強いられる。
何故か――『魔法少女』として?
※一部、改稿しました。
ぞんびぃ・ぱにつく 〜アンタらは既に死んでいる〜
されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
数週間前、無数の巨大な隕石が地球に飛来し衝突すると言った、人類史上かつてないSFさながらの大惨事が起きる。
一部のカルト信仰な人々は、神の鉄槌が下されたとかなんとかと大騒ぎするのだが……。
その大いなる厄災によって甚大な被害を受けた世界に畳み掛けるが如く、更なる未曾有の危機が世界規模で発生した!
パンデミック――感染爆発が起きたのだ!
地球上に蔓延る微生物――要は細菌が襲来した隕石によって突然変異をさせられ、生き残った人類や生物に猛威を振い、絶滅へと追いやったのだ――。
幸運と言って良いのか……突然変異した菌に耐性のある一握りの極一部。
僅かな人類や生物は生き残ることができた。
唯一、正しく生きていると呼べる人間が辛うじて存在する。
――俺だ。
だがしかし、助かる見込みは万に一つも絶対にないと言える――絶望的な状況。
世紀末、或いは暗黒世界――デイストピアさながらの様相と化したこの過酷な世界で、俺は終わりを迎えるその日が来るまで、今日もしがなく生き抜いていく――。
生ける屍と化した、愉快なゾンビらと共に――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる