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第伍章 混沌の胎動――謎の孤島編。

佰漆拾話 門口、其の参。

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 一生懸命に噛み砕いて、それこそ解り易く説明したつもりなのに。トホホ。

「しゃーねーな。アイ、纏めてやってくれ」

 ちょっとだけゲンナリした俺は、アイに華を持たすことにした。

「えー⁉︎ アイが言うの⁉︎」

 俺からいきなり振られ、まさかの謎、回答編を喋らせられるアイ。

「――えっとね、つまり、正しい入口を隠す為に、限りなく天然温泉に見せかけて作った。そしてその事実から気を逸す為に、それらしいゲートを目の前に配置して意識誘導を行なってる。あとは癒しの温泉で油断させておいて、疑問からも気を散らし正解から遠ざけるって副次効果もある。――だよ。てへっ」

 一瞬、目を真ん丸にして驚きの声を上げ困惑しつつも、直ぐにきっちり纏めて俺っぽくダダダッと皆に話して仕事を全うする。

 流石、斗家唯一の良心回路なアイだ。
 嫌がらずになんでも熟そうとする姿勢は、未来に是非とも見習って欲しいわ。

「おおー、上手に纏めたな、素晴らしい! 流石俺的便利家電――違ったな。俺愛娘だよ! ブラボー! 偉い偉い! 良い子良い子!」

「パパ、なんか企んでない? やたらとヨイショしてくれてない?」

「は? なんのことで御座いましょうか、アイお嬢様? 疑問に思ったら負けに御座いますですよ?」

「パパ、ヒト変わってるって。アイが微妙に怯え小動物化してるから。宣うのも大概にしときなさいって。普通で良いって」

「――貴方……本当にヒトなの? やっぱりアタシ信じられない」

「ただのヒトだっつーに! 学術的には。だけどもな。寧ろ俺は婆ちゃんに言いたいわ。腐っても珠玉違うん? しかも管理してた海底遺跡っつーか潜んでた場所に関係あるモノと違うん? なして解らんのか。もうね、俺のがビックリだよ」

「貴方……吊してしばくわよ。アタシも真面目に答えるけど、こんな場所はアタシの記録に全く残ってないわよ。――忘れたんじゃなくて。ホント」

「え、まぢでか? ならここは一体……最妃――」

「お伝えしておきます、彼方。今回は私も全く存じておりません。――お婆さまと同じで。彼方とアイにそう説明されて……寧ろ私にしても驚いておりますの」

「そっか……じゃあ、どうすっかだなぁ……」

 今回はやけに手が込んだ仕掛けだよな?
 何ぞな大惨事の気配がビシビシすんだけど、俺?
 しつこいけど、ただの勘だけどな。

「良し。こんなこともあろうかと常々思案していた俺的家電の使い道! アイ、水中とその周辺を隈なくソナーリング音波探知して見てくれ。勿論、対ファンタジーでだ。二重三重に隠蔽してるやも知れん。あと水質に含まれる成分、有害物質に加えてその濃度、影響に到るまで徹底的にだ! 念の為、人体に影響がないかの汚染状態何ぞもな」

 アイに傍目で聴くと、無理無茶無謀この上ない指示を平然と送る俺。

「義兄さん、流石のアイちゃんでもそれは無理っぽいのよ?」

 当然、そんな要求について心配したのか、俺に何ぞ言ってくるアリサだった。

「もしかすると、水中に潜ることになるやもしれんのでな?」

 そう。温泉内を隈なく調べるには普通は浸かるしかない。
 得体の知れない孤島にある得体の知れない温泉なのだから、念には念を入れておかねばなるまいよ?

 万一だが、耳無猫型ロボのアニメ映画に登場する恐竜とかネス湖のネ◯シー何ぞなモノが潜んでいたら大惨事だからな。

「無問題。音波探知切替――有効。水深及び水温、並びに水質計測開始――」

 俺家族の心配を他所に、例の電波メカ口調で抑揚なく告げて行動を開始するアイ。
 温泉の岩場付近まで近寄ると、徐に手を湯に浸した。

「――Unbelievaそんなことまでできるbleなのよ⁉︎」

 当然のアイの行動に驚いたのか、或いは俺の指示したことを難なく熟せることに驚いたのかは俺の知るところでは全くないが、目を見開き素っ頓狂な声を上げるアリサだった。

「アイ。急に電波演技、ナニ?」

 頭の後ろに手を組んで、検証中のアイの隣まで歩み寄ると、ちょっとだけ心配したような微妙な表情になって隣に蹲み込んだ未来。

「回答――って、うん。こっちのがアイは調子出るっぽいから戻そうかなって」

「さよか、有能電波メカアピール乙」

 電波メカ口調を中断してそんな未来に答える真剣なアイを見やって納得したのか、徐に立ち上がるとサラッと何ぞ宣って、油断なく温泉を見張りアイをも見護った。

「貴女……お父さんに似過ぎ――って、当たり前よね、記憶継承してるんだし。うっかり言っちゃったよ。だから、ごめん! 今のなしなし!」

 アイの直ぐ隣に来た婆ちゃんも、電波メカ口調は初めて見るので、見たまんまな感想を告げるも合点が言ったようで直ぐに改める。
 未来と同じく温泉側を注視しつつもアイを見護った。

「アイちゃん、Fantasyやっぱり万能過ぎなのよ?」

「アイサン スゴイ! ワタシ モ ヤッテ ミヨウカナ……」

 そんな三人の後ろに歩み寄って声を掛けるアリサとクモヨも同様に、ナニが起きても直ぐ対処可能な位置取りのまま何ぞ宣った。

「貴女……やめときなさいって」

「そのできる秘書的な泣き黒子な美人の容姿で、アイの真似で抑揚なく宣うのは洒落になんないとボクは思う。衣装が軍服に鞭を打ち、蔑む風に宣ったらさ、その筋の変態マニアにはウケが良すぎて悦に溺れるに違いないからね」

「グンプク? ――パパ ヨウイ シテクダサイ」

 結局、アイの側で護るように皆が集まるも、おちゃらけた態度はいつも通り。
 見護る目線は外さず体勢も崩さず、会話だけでやんややんやと騒ぎ出す始末。

「あらあら」

 俺の隣の最妃についても同様。
 ナニが起きても五人を完全にカバーできる位置に歩み出て行き、右手は腰の俺的ウィップに添えて相槌を打っている。

「そのコアな内容、ナニ? 未来は阿呆の子か? ――と言いつつもソレも良いな、うん。更にザマスなアンダーリムな眼鏡だったら……おお、ゾクっとくるかもだな……」

 そんな状況なので、ナニも持たざる俺は未来宣う戯言に対して、安心して突っ込んでやれると言うモノだよ。


 ホント、俺家族ってヤツは。
 全くいつも通りで歪みねーのな、スゲーのな、うん。


「義兄さん、喧しいのよ?」

「貴方……干すわよ?」

「――え⁉︎ 冗談だからな、冗談! はっはっは」

 チッ、油断しすぎた!
 ツッコンだあとで考えてたことが、意図せず声になって漏れてたか。
 今後は気付かれんように、極秘で慎重に動かねば、な。
 相手は人外の血を引く残念な天才に、外宇宙液状複製記録体ときた。
 本気だと解ったら確実に干されるな……俺、テラヤバい。

「パパ、目が笑ってない。――今、真剣に検討してたでしょ? いけないんだ、いけないんだー!」

 くっ……ニュ◯タイプも居たんだったな。
 全てお見通しかよ!
 こーゆーの、結構、好きっぽいから、味方だと思ってたのに……。

「あらあら」

 アイが一生懸命に仕事を熟してる間、相変わらずマイペースで緊張感皆無な態度に見せ掛けて、やんややんやの大騒ぎだったり。

 しかし、ナニかが起きても良いように、きっちりアイのカバーをそれとなく熟す辺りがやっぱり凄い俺家族だと思うわ。


 良いのかそんなで?


 ――の対象者は、今回は俺だけだな……って、俺は良いんだよ!




 ―――――――――― つづく。
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