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第二部 上映中
Scene 21.
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公園からバスを乗り継ぎ、美杉の墓標がある霊園へと無事に到着するも、この一帯の雰囲気が余りにもおかしいことに、言い知れぬ不安と疑問が募っていた。
なんとも言えない重苦しい空気が辺り一帯を支配し、先が薄っすらと見える程度の深くも濃い霧に包まれているからだ。
雨上がりであれば、霧がかかると言ったことも、あって然りかも知れん。
だがしかし。この何かが居るようなクソ重たい嫌な空気っつーのは説明のしようがない。
それにだ。ここに来るまで誰一人として擦れ違う人が居ないってのも、どう考えても絶対的におかしい。
おまけに霧の中で微かに見える時計台の針すらも止まっているときた。
俺の腕にある電波時計も一緒に確認するが、時計台同様に止まったままだ。
「本気でメガギガテラヤバい日なのかもな。こんなことなら……スコップも持参しておけば良かったか」
そう。俺は墓参りの鉄板セットな線香とお供えの花束、あとは極普通のジャンプ傘しか持って来ていない。
大体、土木用スコップなんてもんは、墓参りに持って来るようなもんじゃない。
俺にしても、今や国家権力に組みする者だからな。万一にも墓荒らしと間違われたりしたら、それこそ目も当てられない大惨事だっつーの。
波風は立てないようにと配慮して、渋々、置いて来たのが、少しばかり裏目に出そうな予感がする。
美杉の墓標に向かいつつも、内心、焦る俺だった――。
「やはり危険を知らせる何ぞな兆候か、これは? まさかとは思うが……なぁ」
ポケットから役立たずだったスマホを取り出し、今は同僚でもある俺の旧友に連絡をつけようと試みる。
思った通り、無駄になるのだった。
実は今日はタクシーで出るつもりだった。
車の手配をしようと電話をかけるも、混線か何かで雑音が多く上手く通じなかった。
今もそんな感じ。同じように雑音が酷い。
相変わらず混線しているらしく、女性の声が混じって聴こえてくるってんだから中々にホラーだよ。
そして俺は、そこで何を思ったのか。
スマホの音量を最大にしてみる……のだが。
『ヲ兄……チャン――ヲ……兄チャン――ヲ兄チャ……ン――ダ……メ――』
酷く掠れた弱々しい声で、そんな言葉が雑音に混じって聴こえてくるときた。
「これはあかん。ヤバいわ、うん」
もしも夜中に出た電話で、こんなもん聞かされた日には、確実に一人でトイレにも行けず、何よりSAN直がゴリゴリ削られてのピンチまぢピンチに陥ってまうの必至。
だがしかし。こんな状況は得体の知れない気色悪さ炸裂の邦画なホラー映画を、散々、観慣れてる俺に取っちゃ、恐怖心を煽る演出にすらなりゃしないっての。
「阿呆らし。こりゃあ……悪夢に何処かで取り込まれたっぽいかな、俺」
持っているジャンプ傘を武器に見立てて油断なく構え、周囲の警戒は怠らず、美杉の墓標のある場所へと慎重に向かう。
原因自体は俺の知るところでは全くないのだが、俺の身に起こっていること自体には、おおよその予想はつく。
再び、悪夢の輪廻に囚われている、のだと。
「ちっ。痛くないところをみると、まぢにそれで確定だな……」
試しに自分の手を抓ってみたがが、全く痛みを感じない。
過去にもそうだったように、悪夢の輪廻に囚われている間は、夢の中での体験に近く――。
何故か肉体的な痛みだけが欠如するのだ。
「――さて、どうするよ俺。墓から這い出るゾンビ擬き何ぞに囲まれでもしたら、対処のしようもねぇっぽいぞ、これ。SAN値ピンチまぢピンチってな」
戻るにしても進むにしても、シームレスで厄介極まりない状況下におかれていることに頭痛が痛くなる。
「そうだとすると、あれは一体、何になるんだろうな」
足元に持ってきた墓参りセットなどをそっと置き、ジャンプ傘を上段構えにして一気に警戒心を底上げする。
俺が油断なく見据えた先――。
美杉の墓標の前に、一人の女性らしき人物が佇んでいたからだった。
――――――――――
気になる続きはCM広告のあと直ぐっ!
チャンネルはそのままっ!(笑)
なんとも言えない重苦しい空気が辺り一帯を支配し、先が薄っすらと見える程度の深くも濃い霧に包まれているからだ。
雨上がりであれば、霧がかかると言ったことも、あって然りかも知れん。
だがしかし。この何かが居るようなクソ重たい嫌な空気っつーのは説明のしようがない。
それにだ。ここに来るまで誰一人として擦れ違う人が居ないってのも、どう考えても絶対的におかしい。
おまけに霧の中で微かに見える時計台の針すらも止まっているときた。
俺の腕にある電波時計も一緒に確認するが、時計台同様に止まったままだ。
「本気でメガギガテラヤバい日なのかもな。こんなことなら……スコップも持参しておけば良かったか」
そう。俺は墓参りの鉄板セットな線香とお供えの花束、あとは極普通のジャンプ傘しか持って来ていない。
大体、土木用スコップなんてもんは、墓参りに持って来るようなもんじゃない。
俺にしても、今や国家権力に組みする者だからな。万一にも墓荒らしと間違われたりしたら、それこそ目も当てられない大惨事だっつーの。
波風は立てないようにと配慮して、渋々、置いて来たのが、少しばかり裏目に出そうな予感がする。
美杉の墓標に向かいつつも、内心、焦る俺だった――。
「やはり危険を知らせる何ぞな兆候か、これは? まさかとは思うが……なぁ」
ポケットから役立たずだったスマホを取り出し、今は同僚でもある俺の旧友に連絡をつけようと試みる。
思った通り、無駄になるのだった。
実は今日はタクシーで出るつもりだった。
車の手配をしようと電話をかけるも、混線か何かで雑音が多く上手く通じなかった。
今もそんな感じ。同じように雑音が酷い。
相変わらず混線しているらしく、女性の声が混じって聴こえてくるってんだから中々にホラーだよ。
そして俺は、そこで何を思ったのか。
スマホの音量を最大にしてみる……のだが。
『ヲ兄……チャン――ヲ……兄チャン――ヲ兄チャ……ン――ダ……メ――』
酷く掠れた弱々しい声で、そんな言葉が雑音に混じって聴こえてくるときた。
「これはあかん。ヤバいわ、うん」
もしも夜中に出た電話で、こんなもん聞かされた日には、確実に一人でトイレにも行けず、何よりSAN直がゴリゴリ削られてのピンチまぢピンチに陥ってまうの必至。
だがしかし。こんな状況は得体の知れない気色悪さ炸裂の邦画なホラー映画を、散々、観慣れてる俺に取っちゃ、恐怖心を煽る演出にすらなりゃしないっての。
「阿呆らし。こりゃあ……悪夢に何処かで取り込まれたっぽいかな、俺」
持っているジャンプ傘を武器に見立てて油断なく構え、周囲の警戒は怠らず、美杉の墓標のある場所へと慎重に向かう。
原因自体は俺の知るところでは全くないのだが、俺の身に起こっていること自体には、おおよその予想はつく。
再び、悪夢の輪廻に囚われている、のだと。
「ちっ。痛くないところをみると、まぢにそれで確定だな……」
試しに自分の手を抓ってみたがが、全く痛みを感じない。
過去にもそうだったように、悪夢の輪廻に囚われている間は、夢の中での体験に近く――。
何故か肉体的な痛みだけが欠如するのだ。
「――さて、どうするよ俺。墓から這い出るゾンビ擬き何ぞに囲まれでもしたら、対処のしようもねぇっぽいぞ、これ。SAN値ピンチまぢピンチってな」
戻るにしても進むにしても、シームレスで厄介極まりない状況下におかれていることに頭痛が痛くなる。
「そうだとすると、あれは一体、何になるんだろうな」
足元に持ってきた墓参りセットなどをそっと置き、ジャンプ傘を上段構えにして一気に警戒心を底上げする。
俺が油断なく見据えた先――。
美杉の墓標の前に、一人の女性らしき人物が佇んでいたからだった。
――――――――――
気になる続きはCM広告のあと直ぐっ!
チャンネルはそのままっ!(笑)
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