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ミノケモヨダツ、何カガ、訪ル――。
Creepy.14 何カハ、告ル――。
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壁を背にして座ったまま眠れない一夜を過ごし、無事に朝を迎える。
背中を壁に押しつけているにも関わらず、得体の知れない何かを挟むことなく、ごく自然に寄り掛かることができた。
そのおかげで奇しくも、背後に居る何かに物理的干渉は意味をなさないと理解した。
だがしかし。壁にピッタリ凭れかかっているにも関わらず、全く変わらない背後からの嫌過ぎる気配は未だ消えていない。
なんか良く解らない寒気がして、背筋に冷たい気配を感じ、誰かに見られている――そんな嫌な気配と言うか感じが、未だ俺に纏わりつく。
更に全身に鳥肌が立ち、息苦しさを覚える妙な圧迫感に加え、今回は異様に右肩までもが重いときた。
(くっそ……どんだけ。電波な俺で良かったわ。こんなの一般人だったらSAN値直葬確実だったぞ)
俺自身に危害は加えられていないが、部屋の様子を見やる限り、それ以外はどうやらお構いなしのようだ。
コタツが横転させられてやがった。
(ポルターガイストまで引き起こすとはな……。目覚めるとコタツが横転してました。なんて言っても、誰も信じんてはくれんのだろうけど)
背後に居る何かに怯えてても先に進まない。
意を決して重い腰をあげる。
(コタツだけで済んで良――まぁそうだろうな。そんなわけねぇよな、うん)
諦めるように額に手を当て、げんなりと言いかけて止めた。
何故なら、凭れ掛かっていた壁いっぱいに、意味不明な無数の手形をべったりと残してくれていやがったからだ。
「血塗れの手形でない分だけ随分とマシだけども……恐怖心でも煽って精神面から追い込む気かよ。あまり虐めてくれるなっての」
そうとは言え、怖いものは怖いんだけど。
「まぁ……俺の浅知恵って言うか、庶民の工夫を舐めんなよ……」
ポケットにある林檎印のスマホを徐に取り出した。
例の渦を未然に防ぐ意味で、体温を測るアプリがスマホに入っている。
そいつを起動し、部屋を隅から隅までゆっくりと検温してみる。
霊の居る場所は他に比べて温度が下がると、聴いたことがあるからだ。
「――無理か。そりゃそうだ。ま、映ったら映ったで怖いだけだしな……」
そんな苦笑いをしつつ、起動している検温アプリ――サーモグラフィーを、自分の顔と背後に向けて翳してみた。
「こんな浅知恵、誰も聴いてなくて良……かっ……た……な――ええっ⁉︎」
だがしかし。素っ頓狂な声をあげて青褪めてしまった。
(居たよ、居た……まぢにいらっしゃったよ……)
お化けのような解り易い人の形を形成してこそいないのだが、俺の背後――丁度、右肩付近にサーモグラフィーが反応して、最も冷たいことを指し示す濃紺で表示され、ゆらゆらと揺蕩っている。
心霊写真っぽく背後の何かが撮影できればと、一応、そのまま写してみるも、結果は青褪めて引き攣った最悪な顔の俺が一人写るだけ。
俺が霊のようだ。
(気の所為だと絶対に笑えん。やっぱ疲れた――それは字が違う。憑かれたと解釈すべき事案だな……右肩も重いし。なんとかするには見つければ良いだったか――って、一体、何をだよ……)
ヒントが漠然としていて何も思い浮かばない。
せめて固有名詞がついていたなら、どうにかできたかもしれない。
「俺の背後に居るであろう何かさん。俺は何を見つければ宜しいのでしょうか? 差し支えなければ、無知な俺に知らせて頂けませんか? できれば穏便に。そこ、実に重要なんで」
藁をも掴む思いで背後に向かって語りかけるも、返事云々は当然の如く御座いません。
ま、返事されたらされたで、なまら怖いだけなんだけども。
(何も知らない第三者が目撃したら、俺はただの痛い電波なおやぢだな。しっかし……まぢでどうするよ……)
革張りな社長椅子へとへたり込むように腰掛けると、背凭れに深く身体を預けた俺は、天井を見上げてネットの情報を鑑みるのだった。
(ここで何が起きたのか……まずは大家さんに詳しく聴くか。それが“ ミツケテ ”の意味を知る、最も近道やも知れんのな……)
――――――――――
得体の知れない――何か。
それは常に俺の背後に居る――。
背中を壁に押しつけているにも関わらず、得体の知れない何かを挟むことなく、ごく自然に寄り掛かることができた。
そのおかげで奇しくも、背後に居る何かに物理的干渉は意味をなさないと理解した。
だがしかし。壁にピッタリ凭れかかっているにも関わらず、全く変わらない背後からの嫌過ぎる気配は未だ消えていない。
なんか良く解らない寒気がして、背筋に冷たい気配を感じ、誰かに見られている――そんな嫌な気配と言うか感じが、未だ俺に纏わりつく。
更に全身に鳥肌が立ち、息苦しさを覚える妙な圧迫感に加え、今回は異様に右肩までもが重いときた。
(くっそ……どんだけ。電波な俺で良かったわ。こんなの一般人だったらSAN値直葬確実だったぞ)
俺自身に危害は加えられていないが、部屋の様子を見やる限り、それ以外はどうやらお構いなしのようだ。
コタツが横転させられてやがった。
(ポルターガイストまで引き起こすとはな……。目覚めるとコタツが横転してました。なんて言っても、誰も信じんてはくれんのだろうけど)
背後に居る何かに怯えてても先に進まない。
意を決して重い腰をあげる。
(コタツだけで済んで良――まぁそうだろうな。そんなわけねぇよな、うん)
諦めるように額に手を当て、げんなりと言いかけて止めた。
何故なら、凭れ掛かっていた壁いっぱいに、意味不明な無数の手形をべったりと残してくれていやがったからだ。
「血塗れの手形でない分だけ随分とマシだけども……恐怖心でも煽って精神面から追い込む気かよ。あまり虐めてくれるなっての」
そうとは言え、怖いものは怖いんだけど。
「まぁ……俺の浅知恵って言うか、庶民の工夫を舐めんなよ……」
ポケットにある林檎印のスマホを徐に取り出した。
例の渦を未然に防ぐ意味で、体温を測るアプリがスマホに入っている。
そいつを起動し、部屋を隅から隅までゆっくりと検温してみる。
霊の居る場所は他に比べて温度が下がると、聴いたことがあるからだ。
「――無理か。そりゃそうだ。ま、映ったら映ったで怖いだけだしな……」
そんな苦笑いをしつつ、起動している検温アプリ――サーモグラフィーを、自分の顔と背後に向けて翳してみた。
「こんな浅知恵、誰も聴いてなくて良……かっ……た……な――ええっ⁉︎」
だがしかし。素っ頓狂な声をあげて青褪めてしまった。
(居たよ、居た……まぢにいらっしゃったよ……)
お化けのような解り易い人の形を形成してこそいないのだが、俺の背後――丁度、右肩付近にサーモグラフィーが反応して、最も冷たいことを指し示す濃紺で表示され、ゆらゆらと揺蕩っている。
心霊写真っぽく背後の何かが撮影できればと、一応、そのまま写してみるも、結果は青褪めて引き攣った最悪な顔の俺が一人写るだけ。
俺が霊のようだ。
(気の所為だと絶対に笑えん。やっぱ疲れた――それは字が違う。憑かれたと解釈すべき事案だな……右肩も重いし。なんとかするには見つければ良いだったか――って、一体、何をだよ……)
ヒントが漠然としていて何も思い浮かばない。
せめて固有名詞がついていたなら、どうにかできたかもしれない。
「俺の背後に居るであろう何かさん。俺は何を見つければ宜しいのでしょうか? 差し支えなければ、無知な俺に知らせて頂けませんか? できれば穏便に。そこ、実に重要なんで」
藁をも掴む思いで背後に向かって語りかけるも、返事云々は当然の如く御座いません。
ま、返事されたらされたで、なまら怖いだけなんだけども。
(何も知らない第三者が目撃したら、俺はただの痛い電波なおやぢだな。しっかし……まぢでどうするよ……)
革張りな社長椅子へとへたり込むように腰掛けると、背凭れに深く身体を預けた俺は、天井を見上げてネットの情報を鑑みるのだった。
(ここで何が起きたのか……まずは大家さんに詳しく聴くか。それが“ ミツケテ ”の意味を知る、最も近道やも知れんのな……)
――――――――――
得体の知れない――何か。
それは常に俺の背後に居る――。
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