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序章
00. いきなりの解雇通達――その後ボッチで旅をする。
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「ロゥリィ、もうお前とはやっていけない。今日限りでお前には……パーティを抜けてもらうことになった」
「ロゥ……本当に済まない。リーダーを責めないでくれ。これは我々の総意だ。ロゥがいてくれて大いに助かったのは事実。こんな結果になってしまったこと、申し訳ない」
「残念だけど……私も同じ意見。ごめんね……ロゥ君」
一つの依頼を無事に終えて戻ってきて、夜の酒場で報酬の分配をしている最中のことだった。
今までの数年間、お世話になっていた仲間達から、突如、言い渡された――解雇。
「な⁉︎ どうして⁉︎ ボクが――」
仲間の為に身体を張って、一生懸命にここまで頑張ってきたボクは納得がいかない。
だから必死に食い下がろうとする。
「別段、お前に落ち度は全くないんだ……。もしもあるとすれば……オレ達の方なんだ……」
弟分として今まで大事にしてくれた、兄にも等しい優しいリーダーが、眉根を寄せた苦しそうな顰めっ面で机に突っ伏し、言い難そうに力なく呟く。
「だったらどうして⁉︎ ボクが解雇になる理由が、尚更、解らないよ!」
ボクの何かが悪くて迷惑を掛けたとかの理由なら、解雇になっても止むなしと受け入れる。
でも、落ち度もなく違うと言うのなら、解雇を言い渡す自分達に非があると言うのなら――一体、何故?
「お前は気づいてないから言ってやるが、阿呆ほど強過ぎるんだよっ! 常識外れを通り越した規格外な異常さなんだよっ! ――もうオレ達の全員がついていけないんだっ! こんな着いていくだけの冒険を続けてたら、冒険者たる俺達がダメになるっ! それに……最悪、命がいくつあっても足りないんだっ!」
卓を悔しそうに叩きつけ、力なく突っ伏したリーダーは、解雇の理由をそう告げる。
「――は?」
そんな風に言われたボクは、ただ目を丸くして唖然とするだけだった――。
◇◇◇
「ボクが強すぎるってか。幼女然としたボクが大人を差し置いてそれは――確かに辛いよな……」
言わんとすることが理解できるボクは、数年間、お世話になった仲間に頭を下げて別れを告げ、そっと酒場をあとにした。
夜も更け星灯が淡く照らす中、間借りしている宿屋へとトボトボと歩いて帰る道すがら。
「へへへ……こんな所に一人で危ないぞう? ――って、変なおじさんに酷い目に遭わされちゃうぞう……へへへ」
野盗と見間違えそうな汚くも酒くっさいおっさんが数人ほど、そんなボクに群がって言い寄ってきた。
「良いとこのお嬢ちゃんかな? 危ない目に遭うといけないから、おじさん達がお家まで連れて行ってあげようね……ひひひ」
深々と被っていたボクの頭巾を、不意に捲りあげるおっさん。
「おひょー⁉︎ こりゃビックリ⁉︎ 可愛い子ちゃんじゃねーの⁉︎ おじさんビックリだ⁉︎」
曝されるボクの顔を覗き込んでくる。
「こりゃあ……楽し――なんでもない。お嬢ちゃん、早く帰ろうねぇ……ひひひ」
一人のおっさんが、ボクの肩を抱き寄せようとした。
だけどそうはいかないんだな、これが。
素早く身を躱し距離を取る。
「おやおや~? なんで避けるのかな~?」
「意外にすばしっこい……お前ら、囲め」
数人のおっさんらが、下卑た薄ら笑いを隠しもせず取り囲んでくる。
どうやらボクを女だと勘違いなさっているようなので、正すと同時にお仕置きしてやることにした。
「お生憎さま。ボクは男だ。そして――君達よりも遥か高みに居る冒険者……らしいよ」
そう告げたあとの刹那。瞬きするほんの僅か一瞬の出来事だった。
「「「な⁉︎」」」
取り囲んでいた全てのおっさんらが、その瞬間に吹き飛んで街道へと無造作に転がった。
酒くっさいおっさんらが呻いたり嘔吐したりとまさに地獄絵図と化した。
「ボクがこんな目に遭うのは……全てアイツらの所為だ……呪ってやろうか」
再び頭巾を深く被り直し、宿屋へとトボトボ向かうボクは、こうなった元凶を思い出し、愚痴っぽくも悪態を吐いていた。
「突然の解雇、下卑たおっさんの絡み……これも業の試練の一つなんかな」
この世界に飛ばされた日のことを、深く思い返した。
それは忘れもしない、数年前のある日に起きた……こうなる元凶となった昔のこと。
俺が終わってボクが始まった、その時の出来事だった――。
―――――――――― つづく。
「ロゥ……本当に済まない。リーダーを責めないでくれ。これは我々の総意だ。ロゥがいてくれて大いに助かったのは事実。こんな結果になってしまったこと、申し訳ない」
「残念だけど……私も同じ意見。ごめんね……ロゥ君」
一つの依頼を無事に終えて戻ってきて、夜の酒場で報酬の分配をしている最中のことだった。
今までの数年間、お世話になっていた仲間達から、突如、言い渡された――解雇。
「な⁉︎ どうして⁉︎ ボクが――」
仲間の為に身体を張って、一生懸命にここまで頑張ってきたボクは納得がいかない。
だから必死に食い下がろうとする。
「別段、お前に落ち度は全くないんだ……。もしもあるとすれば……オレ達の方なんだ……」
弟分として今まで大事にしてくれた、兄にも等しい優しいリーダーが、眉根を寄せた苦しそうな顰めっ面で机に突っ伏し、言い難そうに力なく呟く。
「だったらどうして⁉︎ ボクが解雇になる理由が、尚更、解らないよ!」
ボクの何かが悪くて迷惑を掛けたとかの理由なら、解雇になっても止むなしと受け入れる。
でも、落ち度もなく違うと言うのなら、解雇を言い渡す自分達に非があると言うのなら――一体、何故?
「お前は気づいてないから言ってやるが、阿呆ほど強過ぎるんだよっ! 常識外れを通り越した規格外な異常さなんだよっ! ――もうオレ達の全員がついていけないんだっ! こんな着いていくだけの冒険を続けてたら、冒険者たる俺達がダメになるっ! それに……最悪、命がいくつあっても足りないんだっ!」
卓を悔しそうに叩きつけ、力なく突っ伏したリーダーは、解雇の理由をそう告げる。
「――は?」
そんな風に言われたボクは、ただ目を丸くして唖然とするだけだった――。
◇◇◇
「ボクが強すぎるってか。幼女然としたボクが大人を差し置いてそれは――確かに辛いよな……」
言わんとすることが理解できるボクは、数年間、お世話になった仲間に頭を下げて別れを告げ、そっと酒場をあとにした。
夜も更け星灯が淡く照らす中、間借りしている宿屋へとトボトボと歩いて帰る道すがら。
「へへへ……こんな所に一人で危ないぞう? ――って、変なおじさんに酷い目に遭わされちゃうぞう……へへへ」
野盗と見間違えそうな汚くも酒くっさいおっさんが数人ほど、そんなボクに群がって言い寄ってきた。
「良いとこのお嬢ちゃんかな? 危ない目に遭うといけないから、おじさん達がお家まで連れて行ってあげようね……ひひひ」
深々と被っていたボクの頭巾を、不意に捲りあげるおっさん。
「おひょー⁉︎ こりゃビックリ⁉︎ 可愛い子ちゃんじゃねーの⁉︎ おじさんビックリだ⁉︎」
曝されるボクの顔を覗き込んでくる。
「こりゃあ……楽し――なんでもない。お嬢ちゃん、早く帰ろうねぇ……ひひひ」
一人のおっさんが、ボクの肩を抱き寄せようとした。
だけどそうはいかないんだな、これが。
素早く身を躱し距離を取る。
「おやおや~? なんで避けるのかな~?」
「意外にすばしっこい……お前ら、囲め」
数人のおっさんらが、下卑た薄ら笑いを隠しもせず取り囲んでくる。
どうやらボクを女だと勘違いなさっているようなので、正すと同時にお仕置きしてやることにした。
「お生憎さま。ボクは男だ。そして――君達よりも遥か高みに居る冒険者……らしいよ」
そう告げたあとの刹那。瞬きするほんの僅か一瞬の出来事だった。
「「「な⁉︎」」」
取り囲んでいた全てのおっさんらが、その瞬間に吹き飛んで街道へと無造作に転がった。
酒くっさいおっさんらが呻いたり嘔吐したりとまさに地獄絵図と化した。
「ボクがこんな目に遭うのは……全てアイツらの所為だ……呪ってやろうか」
再び頭巾を深く被り直し、宿屋へとトボトボ向かうボクは、こうなった元凶を思い出し、愚痴っぽくも悪態を吐いていた。
「突然の解雇、下卑たおっさんの絡み……これも業の試練の一つなんかな」
この世界に飛ばされた日のことを、深く思い返した。
それは忘れもしない、数年前のある日に起きた……こうなる元凶となった昔のこと。
俺が終わってボクが始まった、その時の出来事だった――。
―――――――――― つづく。
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