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第一部 現代編――。

第一二話 【第一部・最終話】動かざること山の如し? だがしかし、事態は往々にして動く――。

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「――姫君には辛い話になるけども……祖国が滅ぼされ、転移門を奪われたと仮定しようか」

 件の話しを纏めに入る俺は、少し苦い表情で言葉を紡ぐ。

「向こうは転移し放題。だけど俺達は、向こうから召喚されなければ渡れないときた」

 そう。あっちとこっちへは、自由に行き来できない。ご都合主義の創作物じゃないんだから。

『私も転移門の遠隔操作は、世界結界に阻まれできかねます』

 俺の隣に立つミサにしても同様。
 あくまでもこっちの世界におけるハウスキーパー牢獄管理人。ただの管理者でしかない。

「八方、手塞がりじゃのう……」「御意」

 顎に手をやり首を傾げて答えるマリーも、幼女姿には不釣り合いの顰めっ面。それに相槌を打つ下衆徒君。

 あっちとこっちが自由に行き来できるくらいなら罰にはならない。それが自由にできたのならば、こっちで貧乏生活を送る必要がないわけで。

「幸い、転移門で繋げることができるのが、この界隈のみと限定しているのが救いだけどね」

 それが幸いだった。世界広しと言えど、空間を繋げることができるのは、こちらで言うところの龍脈や風水的に、摩訶不思議な謎パワーがあるこの界隈だけなのだ。
 お陰で俺が巻き込まれ、数年もの間、地獄の日々を送る羽目になったと言うんだから。

「マリーに下衆徒君の枷による制限が、未だ有効ってのが辛いところか……」

「うむ、難儀な問題じゃの。妾の制限さえなければ、転移門なんぞ簡単に繋げてやるところなんじゃが……」「御意」

 あながち嘘でもなく。それさえなければ割と簡単に片付く問題。
 神具をフル装備した救世主時代の俺と同格、正しく異界最強のマリアンヌと、魔に連なるゲシュタルトなら。

『マリー様、枷により、その叡智が没収されている以上、どうにもできかねます。この身を犠牲にしてでも、お役に立てれば良かったのですが……』

 自由に枷を解く権限を持ち得ていたならば。或いはエネルギーの代わりにでもなればと、ミサも落胆を隠せない。

「ミサ。滅多なことを申すでない。そちは充分に役立っておる。こっちの世界で暮らすのも、存外、楽しいと思えるほどにはな? そもそもそちが居らねば主が寂しかろう?」

『マリア様……』

 ミサの隣にとっとことやってきたマリーは、そっと手を取り優しく告げた。

「御意」

 ただ俯いて相槌を打つに留める下衆徒君。

「下衆徒君――」「御意――」

 さっきから壊れた玩具のように、御意御意と単に繰り返す下衆徒君に、怒りの鉄拳ならぬ脳天チョップを軽く打ちかました。

 だがしかし。それでも俯いたままじっとして、微動だにしない下衆徒君。

「そんな醜悪な禿げた中年姿でもなっ! 変わらず愛してくれる? くれてるよな? まぁ、そんな姫君に関することなんだぞっ! 他人事みたく御意御意御意御意言ってないで、少しは真面目に考えて意見を出せっつーのっ!」

 現状を打破する意見を寄越せと、下衆徒君に叱咤するも――。

『アーネスト様……白目剥いて、涎垂らして、既に意識が飛んでます』

「主よ……些か容赦なくないか?」

「軽く脳天チョップしただけなんだけど、俺? 加減を間違えたか?」


 微動だに。だな。
 

「こっちからは手出しができない以上、ただ待つしか方法はないのか……」

 下衆徒君を殴った手を摩りつつ、そう呟いた瞬間だった。

「なぬっ⁉︎」「えっ⁉︎」『なにっ⁉︎』


 禿げた中年のおっさんたる下衆徒君が、何処とはあえて言わないけども、いきなり眩しいくらいに輝き出した――。


 ◇◇◇


(何が起きた……)

 頬に当たるやたら清々しい微風。
 暖かくも柔らかい、まるで春の陽だまりに佇んでいるような――。

「――えっ⁉︎ なんでだ⁉︎」

 意味が解らず自分の頬を両手で叩く。
 そして目が飛び出すほど見開き、驚きの表情で見ているその場所は――。



 「彼の国……だと⁉︎」



 ――――――――――
 悪戯はまだまだ続く。
 第二部となって、なまら激しく(笑)

 ここまでお読み下さり有り難う御座います。
 随分と悩んだんですが、「ナイチチ」とか「真野真央」とかな感じにします。
 続きは別枠の新規怪文書として晒していくので、宜しければまた是非お付き合い下さいませ。_φ(・_・
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