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第一部 現代編――。
第八話 枷は突然に。
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「そういやマリー。この間のスク水写真さ、凄い勢いで注文が入ってたぞ?」
数日前に撮った、マリー本人だけが恥ずかしい極真っ当な写真をネットに晒し、生写真の個人売買を試してみた。
それが殊の外大好評で注文が殺到し、驚くほどの大金が一瞬で舞い込んだ。
「妾じゃからな? 小童の幼い容姿とはいえ、衆目が目を奪われるのは当然じゃっ! ただ下衆い衆目の卑しい目に晒されておるってのが、どうにも気色悪いんじゃがの?」
床に寝っ転がって短い脚をパタパタしつつ、俺の林檎印のタブレットで読書中のマリー。
「マリーの犠牲――ゲフン。おかげで家賃と電気代が賄えるよ。次も頼むわ――って、さっきから何を真剣に見てんだ?」
「ん? この小汚い部屋から自由に出られぬゆえ、暇潰しがてらこの世界の文芸とやらを嗜んでおった。妾とは追放された理由がちと違うが、『ゆーちゅーばー』なる者が伝説の人になっていく様が実に面白うての?」
どうやら小説投稿サイトを見ていた模様。
「妾の世界は主も知っておるように、羊皮紙に暗号のような汚い手書きじゃ。見辛くてかなわん。その点、この『たぶれっと』なる物は色鮮やかで見易く、使い勝手も洗練されておって便利で実に良い。最早、これは妾の物じゃっ!」
いや、唯一のそれを占有されると、俺が非常に困るんだが?
でもまぁ、そうだろうな。俺も向こうに転移させられてまなしは、カルチャーギャップに色々と言うか、散々、苦労させられたし……。
それにしても今流行りのゆーちゅーばー、か……お、良いことを思いついた!
天才、現るって閃き! これは、神託!
「なぁ、マリー――」「嫌じゃ!」
不適切な笑顔になった俺が言い掛けた途端、被せ気味に拒否って後退るマリー。
「尋ねる前に断わらな――」「絶対に嫌じゃっ!」
不適切な笑顔のまま俺がそっと手を伸ばすと、マリーは一瞬で壁際にへばりつく。
「ご、誤解のないように言うけど。写真があれだけ好評だったんならさ、動画配信してみたらもっと良いかなって……」
不適切な笑顔を改めて、唐突に閃いた資金調達の具体案をマリーに話してみるも。
「やはり主は妾を辱めることしか思いつかんのじゃなっ⁉︎ 破廉恥極まる格好や姿勢をさせる気、満々、なんじゃろっ! 嫌じゃっ! 絶対にい・や・じゃっ!」
耳にした途端に真っ青になって、へばりついた壁に沿って徐々に距離を取って逃げ出した。
逃げても無駄だゆーに。理由なくここからは出られないんだから……ふっふっふ。
「マリアお嬢様。動画配信なされば恩を返せるところか、至高の逸品であるアイスクリームも食べ放題に御座います。当然ながら、毎日の食事も豪華絢爛になることも間違いなしに御座います――はぁはぁ――そう。これは致し方なきことに御座います――はぁはぁ」
反対側から下衆いおっさんの醜い顔を歪ませて、マリーを懐柔しようと試みる下衆徒君。
天才ならぬ、変態、現るだった。
「下衆っ! ならば何故にそんな下衆い顔で身悶えておるのじゃっ⁉︎ あまつさえ、その手に持っておる如何わしい物は何じゃっ⁉︎ 最早、妾が辱められる嫌な未来しか想像できぬわっ! その卑しい顔も生理的に受け付けぬっ! よ、寄るでないっ! 妾が穢れるっ! 孕むっ!」
俺よりも下衆徒君に身の危険を感じたのか、俺に飛び付き背後に隠れ、必死に抗議するマリー。
やっぱ弄ると可愛いな。
「おっふ。流石はマリアお嬢様。私めの思惑を最も易々と簡単かつ正確に直ぐ様一瞬で見事に見破るとは――」
クックックッと下衆い笑いを携え歪みきった下衆いおっさん顔は、流石の俺もちょっと受けつけない。
そんな自称、真摯な変態紳士の下衆徒君が、しれっと手にしていた如何わしい物とは?
時間を吸い取る魔導具と、薄く卑猥な競技選手が纏う衣。
更に如何わしい道具もちゃっかり用意する周到さ。
見目麗しい美幼女にそれは、紳士諸兄に対しての破壊力が実に半端ない。
中々にドSだな……って、何処から出した? なんで持ってんだ? いつ買った?
「下衆徒君はマリーに何をさせようとしてんのかな? 流石にそれは――うん、アリかな?」
下衆徒君を直視したら俺がヤバいので軽く視線を逸らし、背中に隠れるマリーをひょいと掴んで肉盾にする。
「ま、待つのじゃ~っ⁉︎ わ、妾があまりにも不憫じゃ~っ⁉︎ お、お主らは悪魔かっ⁉︎ 魔王かっ⁉︎」
幼い手足を必死にバタつかせ、なんとか逃れようと抵抗するマリー。
その時だった――。
『――サバト様。お愉しみ中、申し訳御座いません。たった今、漂流者がこの付近に流れ着いたとの通達を受信致しました。ゆえにマリア様と下衆徒様。取り急ぎ、枷の任を遂行するように申し上げます』
充電中のミサがすくっと立ち上がり、いきなりそんな事を言い出した。
「――えっ⁉︎ 漂流者だってっ⁉︎ 何処っ⁉︎」
羽交い締めで抱きかかえていたマリーを解放し、ミサに問う俺。
『四丁目の工事現場付近に御座います。意識があるのか、対象は現在も移動中に御座います』
目を瞑り周囲の状況把握に務め、知り得た情報を皆に開示するミサ。
「わ、妾の出番じゃなっ! 助か――ほれ、何をしておる、早ようせぬかっ!」
ない胸を撫で下ろし腰に手をやり、ミサに指を突きつけて封印解除を要求。
さっきまでの蒼褪めた表情を一転し、高慢ちきな態度で指示するマリーだった。
「おっふ。残念では御座いますが、優先すべきは枷。……誠に遺憾では御座いますが……誠に……」
項垂れる下衆徒君。君は本当に下衆だな。
「要らぬ。保護だけであるならば妾だけで事足りよる。貴様は妾に働いた狼藉を暫し反省しておれ」
「おっふ」
「保護対象は人か? 亜人、或いは――」
問題はここ。
来たのか、流されたのか、だ。
もしも人や亜人が術式などを用いて渡ってきた場合は、気絶程度か混乱ぐらいで済み、直ぐには動けないものの、比較的安全に世界を越えてやって来る。
だがしかし。意図せず流されてきた者であった場合、例外なく瀕死に陥ることになってしまう。
それは世界を隔てる壁――世界結界を越える際、伸し掛かる排除力に耐えられないからだ。
最悪は命を落とす羽目に陥る――だから保護する訳。
直ぐに移動している状況から察するに、世界結界を突き破れるほどに強大な力を持つ者、或いはそれ相応の魔物と予想される。
それは、絶対に放置してはならない類いの招かれざる者――ってのが、普通なんだけど。
『――彼の国の姫君のように御座います』
「「「――はっ⁉︎」」」
ミサの告げた言葉に、三人とも素っ頓狂な声を上げて固まった――。
――――――――――
悪戯はまだまだ続く。(笑)
数日前に撮った、マリー本人だけが恥ずかしい極真っ当な写真をネットに晒し、生写真の個人売買を試してみた。
それが殊の外大好評で注文が殺到し、驚くほどの大金が一瞬で舞い込んだ。
「妾じゃからな? 小童の幼い容姿とはいえ、衆目が目を奪われるのは当然じゃっ! ただ下衆い衆目の卑しい目に晒されておるってのが、どうにも気色悪いんじゃがの?」
床に寝っ転がって短い脚をパタパタしつつ、俺の林檎印のタブレットで読書中のマリー。
「マリーの犠牲――ゲフン。おかげで家賃と電気代が賄えるよ。次も頼むわ――って、さっきから何を真剣に見てんだ?」
「ん? この小汚い部屋から自由に出られぬゆえ、暇潰しがてらこの世界の文芸とやらを嗜んでおった。妾とは追放された理由がちと違うが、『ゆーちゅーばー』なる者が伝説の人になっていく様が実に面白うての?」
どうやら小説投稿サイトを見ていた模様。
「妾の世界は主も知っておるように、羊皮紙に暗号のような汚い手書きじゃ。見辛くてかなわん。その点、この『たぶれっと』なる物は色鮮やかで見易く、使い勝手も洗練されておって便利で実に良い。最早、これは妾の物じゃっ!」
いや、唯一のそれを占有されると、俺が非常に困るんだが?
でもまぁ、そうだろうな。俺も向こうに転移させられてまなしは、カルチャーギャップに色々と言うか、散々、苦労させられたし……。
それにしても今流行りのゆーちゅーばー、か……お、良いことを思いついた!
天才、現るって閃き! これは、神託!
「なぁ、マリー――」「嫌じゃ!」
不適切な笑顔になった俺が言い掛けた途端、被せ気味に拒否って後退るマリー。
「尋ねる前に断わらな――」「絶対に嫌じゃっ!」
不適切な笑顔のまま俺がそっと手を伸ばすと、マリーは一瞬で壁際にへばりつく。
「ご、誤解のないように言うけど。写真があれだけ好評だったんならさ、動画配信してみたらもっと良いかなって……」
不適切な笑顔を改めて、唐突に閃いた資金調達の具体案をマリーに話してみるも。
「やはり主は妾を辱めることしか思いつかんのじゃなっ⁉︎ 破廉恥極まる格好や姿勢をさせる気、満々、なんじゃろっ! 嫌じゃっ! 絶対にい・や・じゃっ!」
耳にした途端に真っ青になって、へばりついた壁に沿って徐々に距離を取って逃げ出した。
逃げても無駄だゆーに。理由なくここからは出られないんだから……ふっふっふ。
「マリアお嬢様。動画配信なされば恩を返せるところか、至高の逸品であるアイスクリームも食べ放題に御座います。当然ながら、毎日の食事も豪華絢爛になることも間違いなしに御座います――はぁはぁ――そう。これは致し方なきことに御座います――はぁはぁ」
反対側から下衆いおっさんの醜い顔を歪ませて、マリーを懐柔しようと試みる下衆徒君。
天才ならぬ、変態、現るだった。
「下衆っ! ならば何故にそんな下衆い顔で身悶えておるのじゃっ⁉︎ あまつさえ、その手に持っておる如何わしい物は何じゃっ⁉︎ 最早、妾が辱められる嫌な未来しか想像できぬわっ! その卑しい顔も生理的に受け付けぬっ! よ、寄るでないっ! 妾が穢れるっ! 孕むっ!」
俺よりも下衆徒君に身の危険を感じたのか、俺に飛び付き背後に隠れ、必死に抗議するマリー。
やっぱ弄ると可愛いな。
「おっふ。流石はマリアお嬢様。私めの思惑を最も易々と簡単かつ正確に直ぐ様一瞬で見事に見破るとは――」
クックックッと下衆い笑いを携え歪みきった下衆いおっさん顔は、流石の俺もちょっと受けつけない。
そんな自称、真摯な変態紳士の下衆徒君が、しれっと手にしていた如何わしい物とは?
時間を吸い取る魔導具と、薄く卑猥な競技選手が纏う衣。
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見目麗しい美幼女にそれは、紳士諸兄に対しての破壊力が実に半端ない。
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「下衆徒君はマリーに何をさせようとしてんのかな? 流石にそれは――うん、アリかな?」
下衆徒君を直視したら俺がヤバいので軽く視線を逸らし、背中に隠れるマリーをひょいと掴んで肉盾にする。
「ま、待つのじゃ~っ⁉︎ わ、妾があまりにも不憫じゃ~っ⁉︎ お、お主らは悪魔かっ⁉︎ 魔王かっ⁉︎」
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「「「――はっ⁉︎」」」
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