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第一部 中二病とオタク。

十四痛 真野氏。魔王力を発揮する。

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「明らかに現実的でない部屋を見せても、一向に納得しないのであれば、私に秘められた真の魔王力を解放するしかない……か」

 真野氏。漫画ちっくな影を顔に落としてからの、意味深で微妙に中二病っぽい台詞でのキリリです。とても決意に満ち溢れた、謎の凛々しいキリリです。

「えっと、真野氏。遂に左腕に封印された――」

「全然違うわよっ! 随分前にアンタが勝手に言ってただけよねっ! そうやってボケかましてると良いわ! 後悔する間もなく消し飛べば良いのよ!」

 真野氏。病的なまでに虚なキリリでの器用なオコです。目が一切笑っていない、ちょっとだけ怖い虚ろなキリリでの器用なオコです。

「――そう言えばそうでした。では、魔王力とはなんぞです?」

 怪訝そうにメガネ、クイッ! っと。

「右の目に宿る魔王の力――魔眼を発動させてあげる」

 真野氏。遂に中二病くっさい台詞の代名詞、魔眼とほざきました。クリッとした睫毛の長いとっても綺麗な瞳なのにも関わらず魔眼とほざきました。


 魔眼は痛いです。メンタルに響く痛さです。
 それほどに魔眼は居た堪れなくなる痛さです。


「この封印されし魔眼を現実世界で解放すれば、アンタの言う退っ引きならない大惨事になるの必至だけどね。私ももう我慢の限界。世界が滅ぼうがアンタが消し飛ぼうが、最早、知ったこっちゃないわ」

 なんでしょう……さっきまでの痛い微少女然とした雰囲気がまるで皆無のギロリです。よくあるジト目どころか、殺意あるギロリで激オコ通り越してます。

「ヤバイよヤバイ! まぢヤバイ! どんだけヤバいかって言うと、地球がヤバい!」

 何処から湧い――ゲフンゲフン。入ってきた先ほどの執事さんも、大概に錯乱してのオロです。何処かで聴いた台詞をニコイチでの激オロです。

「えっと……真野氏。本気で中二病を病み進む気が満々なのです? 目指す先はヤンデレ?」

 メガネ、ズリ! とズレた顔で恐る恐る尋ねてみる、と。

「刮目せよ、そこな下種! 世界の終わりを告げし深淵の業火を宿す我が禁断の魔眼、冥土の土産にとくと見よ! はっはっは、はっはっは、はーっははは!」

 真野氏。ガン無視で遂に披露しました中二病。
 なまら痛いそれ。激しく痛いそれ。
 いつの間にやら瞳孔が縦に細い魔獣――ゲフンゲフン。猫のような金眼のカラコンを装着してナルってます。大袈裟な態度で、笑いの三段活用までもきっちり披露して激ナルってます。

「メイドさんを土産にくれるとは……流石です」

 場の雰囲気を変えようと、メガネ、クイッ! と、駄洒落ってもガン無視です。

 そのまま更に痛い前口上が続きます。

「混沌を呼び覚まし破滅を導く、我の暗黒物質が世界を飲み込み、最――」

 真野氏。右目を手で覆いつつも指の隙間から瞑った目がチラ見える絶妙な所作から、流れるように左腕で自分を愛おしく抱きしめ悩ましく身を捩り、更には脚を曲がってはいけないおかしな方向に曲げての、実に漫画ちっくで中二病くっさい香ばしいポーズを披露しつつ口上を述べ、その手には暗黒物質ダークマターなる怪しげな塊を握っておいでです。

「――おうふ⁉︎」


 魔眼と言いつつうんちダークマター握ってます。明らかにうんちダークマター握ってます。俺の脳内で“ わんだばー、わんだばー ”と警報がけたたましく鳴り響きます。背筋が凍りつく悪寒がはしってのメガネ、ズルッ⁉︎ と。


「お待ち下さい!」「真野氏。Wait待て!」

 咄嗟にそれを遮った執事さん。
 なんとな~く堪え難し痛さに居た堪れなくなって、俺も執事さんに加勢し抑止する。

「もう要らないのよっ! 人生に疲れたのよっ! 現実世界なんて綺麗になくなれば良いのよっ! むっきぃ~っ!」

 床に押さえ込まれる真野氏。いつもと様子の違う退っ引きならない癇癪発動でのオコです。大暴れで非常にヤバい激オコです。


 か、かくなるうえは――。



 ――――――――――
 これだから中二病ってやつは。
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