上 下
8 / 21
第一部 中二病とオタク。

八痛 結果、暗黒騎士に俺はなる。

しおりを挟む
 真野氏に仕える執事さんより差し出された、暗黒騎士とかなんとかな中二病くっさい名称の武具一式。

 あらゆる角度から、何処からどのようにどう見ても、ただの変態然としたコント御用達の全身タイツにしか思えない。

 これを着て香ばしいポーズからの『推して参る』とか『暗黒騎士、推参』とかな台詞を吐かしても、ただ痛いだけだと俺は思う。

 だがしかし。
 過去に体感したことのない、退っ引きならない有無を言わさぬ恐ろしい威圧に屈し、誠に遺憾ながらこの場で着用させらるハメに。


 つまり、同級生たる超絶美少女にガン見されながら、素っパからの生着替えになる。


 俺は良い仕事をなさる靄、或いは影、はたまた光る、更には謎のバンクシーンで誤魔化されるなどと言った青少年に配慮もない過酷な条件、状況下で、堂々と犬まるだし。
 変態然とした着衣へと、絶賛、お召し替えナウに御座います……とほほ。


 一体、誰得なんですか?


「アンタ、キモオタクで有名なクセに、意外にも良い身体……細マッチョなのね?」

 真野氏。男子高校生の生着替えに、再び指チョンで恥じらう。
 だが視線は釘付け。逸らす気も皆無。

「真野氏。ある日、突然、何のチート技能も貰えず異界に飛ばされ、我が身一つで魔物が彷徨くうろつく死地に赴く――そんな退っ引きならない過酷な緊急事態に備えて、日々の鍛錬を欠かさないようにしてますので」

 不敵にメガネ、クイッ! っと。

「――あのさ? その理由はどうかと思うわよ? 私を中二病って、散々、馬鹿にしてくれちゃってるけどさ、アンタの方がよっぽどそれじゃなくない?……全く」

 溜息を吐きつつ額に手を当て呆れる素振りをするも、視線は下目遣いでガン見。

「真野氏。飢えた野獣のような鋭い目で、喰い入るようにガン見しないで下さい。せめてチラ見で」

 暗黒騎士の装備黒い全身タイツを半分ほど着込んだところで、メガネ、クイッ! っと。

「ごめん――じゃなくてっ⁉︎ ちょっと、失礼よねっ⁉︎ 私の方に向けて堂々と見せつけてくれちゃってるアンタの所為でしょうがっ⁉︎ 嫌でも……見ちゃうってのっ⁉︎」

 真野氏。微妙にオコです。
 ちょっと頬が赤らんでの絶妙にえっち臭いオコです。

「着替え場所も用意せず、この場で即座に着替えろと仰せの真野氏が悪いのでは? なので細やかな嫌がらせでもと思いまして」

 意味不明に暗黒騎士もじもじ君をさせられるんだから、それくらいはやんないと。

「別にアンタの裸なんか見ても、なんとも思わないし。興味もないし。さっさと着替えてよねっ!」

 真野氏、そう言いつつ未だガン見でオコです。
 微妙にツンデレっぽくオコです。

「真野氏。辱められる俺は、メガネ、クイッ! からの『一思いに、くっ……殺せっ!』と、苦悶の表情で吐き捨てた方が良いですかね?」

 言葉の通りに有言実行してからのメガネ、クイ! と。

「なんでよっ⁉︎ メガネ、クイッ! は要らないでしょっ⁉︎ キモオタ男子のくっ殺は誰得なのよっ⁉︎」

「――さぁ?」「アンタね……」


 そんなやり取りを経て、俺は見事に暗黒騎士もじもじ君となった――。


 流石の俺も、この退っ引きならない恥ずかしい姿に些かSAN値正気度ピンチ、まぢピンチです。


 もう帰っても良いですか?



 ――――――――――
 これだから中二病ってやつは。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

魔王症女まの☆まお・痛 〜真野真央は魔王である?〜 ――って、またかよ⁉︎ 何処かで聴いた表題っぽいのニコイチってどーなんよ? ∑(゚Д゚)

されど電波おやぢは妄想を騙る
キャラ文芸
 下校時間になり、帰宅しようと教室でいそいそと身支度を整えている俺。  そこに気配なく湧い――ゲフンゲフン。現れて卑しいニヤリをブチかます、学校一の超絶美少女。  そんなカースト最上位な御方と接点を持ってしまったが為に、オタクな俺は再び中二病疾患に付き合されるハメとなる。  教室の中心で毒電波を吐く美少女と俺の、現実ではあり得ない摩訶不思議な冒険が――再び始まる?  否、もう帰らせてもらって良いでしょうか?

暁に散る前に

はじめアキラ
キャラ文芸
厳しい試験を突破して、帝とその妃たちに仕える女官の座を手にした没落貴族の娘、映。 女官になれば、帝に見初められて妃になり、女ながらに絶大な権力を手にすることができる。自らの家である宋家の汚名返上にも繋がるはず。映は映子という名を与えられ、後宮での生活に胸を躍らせていた。 ところがいざ始まってみれば、最も美しく最もワガママな第一妃、蓮花付きの女官に任命されてしまい、毎日その自由奔放すぎる振る舞いに振り回される日々。 絶対こんな人と仲良くなれっこない!と思っていた映子だったが、やがて彼女が思いがけない優しい一面に気づくようになり、舞の舞台をきっかけに少しずつ距離を縮めていくことになる。 やがて、第一妃とされていた蓮花の正体が実は男性であるという秘密を知ってしまい……。 女官と女装の妃。二人は禁断の恋に落ちていくことになる。

僕と幼馴染と死神と――この世に未練を残す者、そして救われない者。

されど電波おやぢは妄想を騙る
ホラー
 学校の帰り道に巻き込まれた悲惨な事故。  幼馴染の死を目の当たりにした僕は、自責の念と後悔の念に埋もれていた――。  だがしかし。  そこに現れる奇妙な存在――死神。  交換条件を持ち掛けられた僕は、それを了承するか思案し、結局は承諾することになる。  そして真っ赤な色以外を失い、閉ざされた僕の世界に新たな色を描き、物語を紡いでいくこととなった――。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

何処でも居ない人

されど電波おやぢは妄想を騙る
ホラー
 いつからだろう。  僕が他人から見えなくなったのは。  あ、見えなくなったって言うのは正しくないか。  透明人間とかとは違うんだから。  何せ鏡にもちゃんと姿が映るんだし。  ある日、突然。  何処でも居ない人にされちゃった――それが僕だ。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...