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本編

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楽しい毎日はあっという間に過ぎて行ったが、俺は学校が終わるのが待ち遠しくて仕方なかった。


 明日の土曜日と日曜日はずっと銀狼と遊べる!
 お母さんに車を出してもらって海にでも連れてってやろうかな!


ワクワクしながら考える週末。
その時、俺は悲しいことを思い出してしまった。


 そうだ。
 銀狼は日曜日までしかここにいられないんだ。
 月曜日には、もう銀狼はいないんだ。
 嫌だ!
 銀狼と離れたくないよ!


俺は、ランドセルの肩ベルトをぎゅっと掴み急いで家に向かった。
家に着くと玄関にランドセルを置き、家の隣の親父の病院に向かった。

「お父さん!お父さん!」

「あら、悠仁君おかえり。広大先生はまだ診察中だから中に入ったらダメよ」

病院の看護師に止められて、俺は仕方なく家に帰った。

「あら、さっき玄関の音が聞こえたって銀狼が言ってたのに、なかなか来ないからどこに行ったのかと思ったじゃない」

お袋のすみれが銀狼とボールで遊んでいた。

「お父さんのところに行った。でもまだ診察中だからダメだって」

「どうしたの?どこか痛い?」

お袋が俺の心配をすると、銀狼も俺のそばにやって来た。

「悠仁。どこか痛いか?大丈夫か?」

銀狼も心配そうに俺を見つめる。

「俺、お父さんにお願いしに行こうと思ったの。銀狼をこのままうちに住まわせたいって。なんで帰さないとダメなの?俺、銀狼とずっと一緒にいたいよ!」

堪えきれず俺はボロボロと泣き始めた。
銀狼も悲しくなってクゥンと鼻を鳴らしてくれる。

「悠仁。銀狼はまだ子供なのよ。悠仁だってお父さんとお母さんと離れて暮らしたら寂しいでしょ?」

「……寂しくない」

俺の返事にお袋は顔を引き攣らせる。

「もうッ!そう言う時は寂しいって言うのッ!」

「だって銀狼と離れる方が寂しいもん!ねぇ、お願いだから、もう少し銀狼をこっちで預かるのはダメなの?銀狼は?銀狼は家族のところに帰りたい?」

必死な顔の俺に、銀狼は首を振る。

「俺ももっと悠仁と一緒にいたいよ。でも、広大先生と約束したから。掟も守らないと」

銀狼はシュンとなって体を丸くしてしまった。

「銀狼だって悠仁と離れるのは寂しいけど我慢してるのよ。お父さんとの約束、あんたもちゃんと守るのよ」

お袋が言う事はよく分かっている。
それでも俺はただ無言で丸くなった銀狼を撫で続けた。
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