2 / 27
本編
1
しおりを挟む
「今日はね、この前先生が教えてくれた野球ってのやったんだよ。そしたらびっくりだ、腰が曲がっちまった。でもな、曲がった腰で打った球が、ドーンとフェンスを超えてってな!」
もう200歳は有に超えた尻尾が二股の狐の爺さんが、うつ伏せになっている布団の上で武勇伝を語る。
「爺さんの打った球は、キャッチャーって奴の後ろのフェンスを超えてった」
二股狐の孫のコンが語ると、爺さんは真っ赤になって黙った。
「あはは。当たっただけすげーじゃん!ほらよ、爺さん。腰ベルト巻き終わったから、しばらくは大人しくしとけ」
「ありがとうよ、先生。今夜家に帰る前に、娘の店寄って飯食ってってくれ」
「ああ。ご馳走なるわ」
俺は診察カバンを閉じると、二股狐の爺さんの家を出た。
「先生!これ、あっちの世界で貰ったビー玉。やっぱり聡太に返して」
コンが走り寄って来て、屈んだ俺の手のひらに青いマーブルのビー玉を1つ乗せた。
「聡太がくれたやつだろ?友達の証って。貰っておいてやれよ」
俺の言葉にコンは寂しそうな顔をする。
「だってもう会えないもん。持ってたら余計に辛くなる。先生から返して!頼んだからなッ!」
コンはそう言って家の中に入っていってしまった。
俺は無理矢理預けられたビー玉を見つめる。
あやかし達が住むこの世界と俺が住む人間の世界。
人間とあやかしは本来交流を持ってはいけない。
俺だけが特別に自由に行き来が出来る。
もう200歳は有に超えた尻尾が二股の狐の爺さんが、うつ伏せになっている布団の上で武勇伝を語る。
「爺さんの打った球は、キャッチャーって奴の後ろのフェンスを超えてった」
二股狐の孫のコンが語ると、爺さんは真っ赤になって黙った。
「あはは。当たっただけすげーじゃん!ほらよ、爺さん。腰ベルト巻き終わったから、しばらくは大人しくしとけ」
「ありがとうよ、先生。今夜家に帰る前に、娘の店寄って飯食ってってくれ」
「ああ。ご馳走なるわ」
俺は診察カバンを閉じると、二股狐の爺さんの家を出た。
「先生!これ、あっちの世界で貰ったビー玉。やっぱり聡太に返して」
コンが走り寄って来て、屈んだ俺の手のひらに青いマーブルのビー玉を1つ乗せた。
「聡太がくれたやつだろ?友達の証って。貰っておいてやれよ」
俺の言葉にコンは寂しそうな顔をする。
「だってもう会えないもん。持ってたら余計に辛くなる。先生から返して!頼んだからなッ!」
コンはそう言って家の中に入っていってしまった。
俺は無理矢理預けられたビー玉を見つめる。
あやかし達が住むこの世界と俺が住む人間の世界。
人間とあやかしは本来交流を持ってはいけない。
俺だけが特別に自由に行き来が出来る。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あやかし旅籠 ちょっぴり不思議なお宿の広報担当になりました
水縞しま
キャラ文芸
旧題:あやかし旅籠~にぎやか動画とほっこり山菜ごはん~
第6回キャラ文芸大賞【奨励賞】作品です。
◇◇◇◇
廃墟系動画クリエーターとして生計を立てる私、御崎小夏(みさきこなつ)はある日、撮影で訪れた廃村でめずらしいものを見つける。つやつやとした草で編まれたそれは、強い力が宿る茅の輪だった。茅の輪に触れたことで、あやかしの姿が見えるようになってしまい……!
廃村で出会った糸引き女(おっとり美形男性)が営む旅籠屋は、どうやら経営が傾いているらしい。私は山菜料理をごちそうになったお礼も兼ねて、旅籠「紬屋」のCM制作を決意する。CMの効果はすぐにあらわれお客さんが来てくれたのだけど、客のひとりである三つ目小僧にねだられて、あやかし専門チャンネルを開設することに。
デパコスを愛するイマドキ女子の雪女、枕を返すことに執念を燃やす枕返し、お遍路さんスタイルの小豆婆。個性豊かなあやかしを撮影する日々は思いのほか楽しい。けれど、私には廃墟を撮影し続けている理由があって……。
愛が重い美形あやかし×少しクールなにんげん女子のお話。
ほっこりおいしい山菜レシピもあります。
【NL】花姫様を司る。※R-15
コウサカチヅル
キャラ文芸
神社の跡取りとして生まれた美しい青年と、その地を護る愛らしい女神の、許されざる物語。
✿✿✿✿✿
シリアスときどきギャグの現代ファンタジー短編作品です。基本的に愛が重すぎる男性主人公の視点でお話は展開してゆきます。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです(*´ω`)💖
✿✿✿✿✿
※こちらの作品は『カクヨム』様にも投稿させていただいております。
白い彼女は夜目が利く
とらお。
キャラ文芸
真夏の夜、涼しい風が吹くその場所で、彼女を見つけた。
何の変哲もない男子高校生、神埼仄は小学生の頃一目惚れした少女を忘れられずにいた。
そんなある日、一人の少女がクラスに転校してくる。
その少女は昔一目惚れしたその少女とそっくりで……。
それからだった。
彼の身の回りでおかしなことが起こり始めたのは。
◆ ◇ ◆ ◇
怪異に恋する現代和風ファンタジー。
貴方はそれでも、彼女を好きだと言えますか?
毎週水・土曜日、20時更新予定!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
好きすぎて、壊れるまで抱きたい。
すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。
「はぁ・・はぁ・・・」
「ちょっと待ってろよ?」
息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。
「どこいった?」
また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。
「幽霊だったりして・・・。」
そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。
だめだと思っていても・・・想いは加速していく。
俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。
※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。
※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。
※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。
いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。
ブラックベリーの霊能学
猫宮乾
キャラ文芸
新南津市には、古くから名門とされる霊能力者の一族がいる。それが、玲瓏院一族で、その次男である大学生の僕(紬)は、「さすがは名だたる天才だ。除霊も完璧」と言われている、というお話。※周囲には天才霊能力者と誤解されている大学生の日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる