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本編

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「今日はね、この前先生が教えてくれた野球ってのやったんだよ。そしたらびっくりだ、腰が曲がっちまった。でもな、曲がった腰で打った球が、ドーンとフェンスを超えてってな!」

もう200歳は有に超えた尻尾が二股の狐の爺さんが、うつ伏せになっている布団の上で武勇伝を語る。

「爺さんの打った球は、キャッチャーって奴の後ろのフェンスを超えてった」

二股狐の孫のコンが語ると、爺さんは真っ赤になって黙った。

「あはは。当たっただけすげーじゃん!ほらよ、爺さん。腰ベルト巻き終わったから、しばらくは大人しくしとけ」

「ありがとうよ、先生。今夜家に帰る前に、娘の店寄って飯食ってってくれ」

「ああ。ご馳走なるわ」

俺は診察カバンを閉じると、二股狐の爺さんの家を出た。

「先生!これ、あっちの世界で貰ったビー玉。やっぱり聡太に返して」

コンが走り寄って来て、屈んだ俺の手のひらに青いマーブルのビー玉を1つ乗せた。

「聡太がくれたやつだろ?友達の証って。貰っておいてやれよ」

俺の言葉にコンは寂しそうな顔をする。

「だってもう会えないもん。持ってたら余計に辛くなる。先生から返して!頼んだからなッ!」

コンはそう言って家の中に入っていってしまった。
俺は無理矢理預けられたビー玉を見つめる。
あやかし達が住むこの世界と俺が住む人間の世界。
人間とあやかしは本来交流を持ってはいけない。
俺だけが特別に自由に行き来が出来る。
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