167 / 206
●100万分の1●
2-6
しおりを挟む
大知が健のオフィスにやって来て、今まで調べた資料を全て健に渡すと、健はファイルに目を通し、惟晴の現在の写真をジッと見つめた。
「何となく父に似ている。母のことも知っている人なんだな」
「水島惟晴さんと言って、弥之さんの従兄弟にあたる。雛絵さんが家庭教師もしていたと言うので、正直、この人が、お前の父親だと思って先日実際に会って来た」
知らぬ間に、そんな事までしてくれていたのかと健は大知を見つめた。
ただ、ファイルには、健の父親とは断定しかねる。と大知の筆跡で記載されていた。
「……でも、違ったと言うことか?」
「本人は自分は違うと言っていた。弥之さんと従兄弟同士だから似ていても不思議はないだろうけどね。でも健に信じてもらえないなら、DNA鑑定をしても良いと言ってくれた」
親子鑑定かと健は考えた。
確かにきちんと検査をしなければなんとでも言える事だ。
「でもお前の印象から、違うと思ったんだな?」
「ああ。だがどうしても確証を得たいなら、直接会って鑑定をお願いしてみてはどうだ?水島さんはお前や静真君に会いたいと言ってくれている」
健はフッとため息をついた。
「水島家の人間を俺は信用していない」
苦々しい顔で健は吐き捨てる。
「何かあったのか?」
「父の兄だと言う人とやっと電話で話せたが、父や俺達を排除したい感じだったよ。ま、こっちも親族だなんてもう思ってないがね」
健からも排除と言う言葉を聞いて、惟晴の言ったことは正しかったのだと大知は思った。
「そうだったのか。だが、水島惟晴さんはどちらかと言えば弥之さんを慕っている感じだった。自分が知る限りの弥之さんと雛絵さんの話を聞かせたいと言っていたよ」
「そうか」
会ってDNAまで提供してくれると言うのだから、大知を信じて会っても良いのかと健も柔軟に考える。
「お前の目で、きちんと水島さんと向き合ったほうがいいと思う」
いつまでも悩み続けるなら、1つずつ現実を見ていかなければならない。
その為に、大知にも協力してもらっているのだ。
「そうだな。あ、やはり父の両親はAB型だった。この人が違うなら、一体母は誰と……」
大知のファイルを閉じ、健は腕組みをして深く息を吐いた。
「何となく父に似ている。母のことも知っている人なんだな」
「水島惟晴さんと言って、弥之さんの従兄弟にあたる。雛絵さんが家庭教師もしていたと言うので、正直、この人が、お前の父親だと思って先日実際に会って来た」
知らぬ間に、そんな事までしてくれていたのかと健は大知を見つめた。
ただ、ファイルには、健の父親とは断定しかねる。と大知の筆跡で記載されていた。
「……でも、違ったと言うことか?」
「本人は自分は違うと言っていた。弥之さんと従兄弟同士だから似ていても不思議はないだろうけどね。でも健に信じてもらえないなら、DNA鑑定をしても良いと言ってくれた」
親子鑑定かと健は考えた。
確かにきちんと検査をしなければなんとでも言える事だ。
「でもお前の印象から、違うと思ったんだな?」
「ああ。だがどうしても確証を得たいなら、直接会って鑑定をお願いしてみてはどうだ?水島さんはお前や静真君に会いたいと言ってくれている」
健はフッとため息をついた。
「水島家の人間を俺は信用していない」
苦々しい顔で健は吐き捨てる。
「何かあったのか?」
「父の兄だと言う人とやっと電話で話せたが、父や俺達を排除したい感じだったよ。ま、こっちも親族だなんてもう思ってないがね」
健からも排除と言う言葉を聞いて、惟晴の言ったことは正しかったのだと大知は思った。
「そうだったのか。だが、水島惟晴さんはどちらかと言えば弥之さんを慕っている感じだった。自分が知る限りの弥之さんと雛絵さんの話を聞かせたいと言っていたよ」
「そうか」
会ってDNAまで提供してくれると言うのだから、大知を信じて会っても良いのかと健も柔軟に考える。
「お前の目で、きちんと水島さんと向き合ったほうがいいと思う」
いつまでも悩み続けるなら、1つずつ現実を見ていかなければならない。
その為に、大知にも協力してもらっているのだ。
「そうだな。あ、やはり父の両親はAB型だった。この人が違うなら、一体母は誰と……」
大知のファイルを閉じ、健は腕組みをして深く息を吐いた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
月影館の呪い
葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽(しんどう はね)は、名門の一軒家に住み、学業成績は常にトップ。推理小説を愛し、暇さえあれば本を読みふける彼の日常は、ある日、幼馴染の望月彩由美(もちづき あゆみ)からの一通の招待状によって一変する。彩由美の親戚が管理する「月影館」で、家族にまつわる不気味な事件が起きたというのだ。
彼女の無邪気な笑顔に背中を押され、葉羽は月影館へと足を運ぶ。しかし、館に到着すると、彼を待ち受けていたのは、過去の悲劇と不気味な現象、そして不可解な暗号の数々だった。兄弟が失踪した事件、村に伝わる「月影の呪い」、さらには日記に隠された暗号が、葉羽と彩由美を恐怖の渦へと引きずり込む。
果たして、葉羽はこの謎を解き明かし、彩由美を守ることができるのか? 二人の絆と、月影館の真実が交錯する中、彼らは恐ろしい結末に直面する。
密室島の輪舞曲
葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。
洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。
双極の鏡
葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。
事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる