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●愛したのが始まり●
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真実を知った事は辛かったが、少しずつ落ち着いて来た静真は、実の兄である健のことを考えた。
「兄さんも俺が弟だと知っているの?」
弘は頷いた。
「実はお前が東京へ行った後に健君に、静真に会いたいので話して欲しいと頼まれたんだが断ってしまった。お前が東京へ行った寂しさから、お前がもっと離れていくのが怖くて、お前に嫌われたくなくて、やっぱり会わせたくないと思ってしまった。その時まだ俺達は、お前に話す心構えが出来ていなかった」
それは、健が静真と協力して糸坂に復讐をしようと決めた時だった。
「健君には本当にすまないと思っている。もうお前に全てを話したんだ。健君にも連絡をするよ」
項垂れる弘に静真は首を振った。
「連絡はいい。俺からするから」
弘は安堵と寂しさに頷くことしかできない。
「もう何も遠慮する事はない。健君に兄弟として会ってやってくれ」
弘と裕子の気持ちが痛いほど分かって、静真はただ微笑むしか出来なかった。
「父さん、母さん。本当のこと話してくれてありがとう。正直ショックだったけど、俺は父さん達の子供で本当に良かったと思ってる。この先も、ずっと俺の両親でいてください」
静真は深々と頭を下げた。
弘達に言ったことに嘘偽りはない。
今自分が幸せに生活できるのは、紛れもなく弘達のお陰だと本当に思っているからだった。
「兄さんも俺が弟だと知っているの?」
弘は頷いた。
「実はお前が東京へ行った後に健君に、静真に会いたいので話して欲しいと頼まれたんだが断ってしまった。お前が東京へ行った寂しさから、お前がもっと離れていくのが怖くて、お前に嫌われたくなくて、やっぱり会わせたくないと思ってしまった。その時まだ俺達は、お前に話す心構えが出来ていなかった」
それは、健が静真と協力して糸坂に復讐をしようと決めた時だった。
「健君には本当にすまないと思っている。もうお前に全てを話したんだ。健君にも連絡をするよ」
項垂れる弘に静真は首を振った。
「連絡はいい。俺からするから」
弘は安堵と寂しさに頷くことしかできない。
「もう何も遠慮する事はない。健君に兄弟として会ってやってくれ」
弘と裕子の気持ちが痛いほど分かって、静真はただ微笑むしか出来なかった。
「父さん、母さん。本当のこと話してくれてありがとう。正直ショックだったけど、俺は父さん達の子供で本当に良かったと思ってる。この先も、ずっと俺の両親でいてください」
静真は深々と頭を下げた。
弘達に言ったことに嘘偽りはない。
今自分が幸せに生活できるのは、紛れもなく弘達のお陰だと本当に思っているからだった。
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