140 / 206
●愛したのが始まり●
4-7
しおりを挟む
糸坂は悪あがきの様に健を睨みつける。
「これがお前の復讐か」
「そうだね。あんたから全てを奪う事。もう家にも帰れないね。あんたと別れた後、俺は直ぐに警察に連絡する。警察は直ぐにあんたの自宅へ駆けつけるだろうね」
もう2度と、糸坂を祥子の元へは帰さないし、会わせることもさせないつもりだった。
「……逃げても無駄だと言うことか」
流石に観念したのか、糸坂は悔しそうに項垂れる。
健から逃げる事は出来ない。
武器が何もない以上、健を力で押さえつけないことぐらい糸坂でも分かっている。
弥之を殺した21年前とは違って、健に力でも勝てるわけがなかった。
「スマホを出せ」
健が右手を糸坂に差し出す。
健が言っている事が糸坂には理解できない。
「なぜお前に渡さなくちゃいけないんだ?」
「2度と家族に連絡できない様にだよ。最後くらい父親らしい事をして、21年前の罪を娘に償え」
「娘に何を償えと言うんだ?何も俺の役に立たなかった役立たずの娘だ!誘拐なんて生ぬるい事をするより、いっそ殺してしまえば良かったよ!」
糸坂の言葉に、流石の健も冷静ではいられなくなった。
糸坂の胸ぐらを掴み、左頬を殴った。
「……やっぱりあんたは外道だ」
健は糸坂のスマホを無理矢理奪うと、庭園の岩に思いっきり投げつけた。
「お前!何しやがる!」
糸坂は慌てて庭園に降りてスマホを手に取るが、もう画面も割れて電源が落ちていた。
糸坂の真っ黒なスマホの画面を見て健はほくそ笑む。
「これで誰にも助けを求められないな。これからは追い詰められる恐怖に怯えるがいい」
もうこれ以上一緒にいては何をするか自分でも自信がなくなり、健は糸坂を置いて料亭を出ると顧問弁護士に電話を掛けた。
「今、糸坂と別れました。今夜の会話もボイスレコーダーに録ってます。後のことは、よろしくお願いします」
そして健の依頼により、楜沢家の顧問弁護士は後日、21年前の弥之の再捜査の為に告訴した。
「これがお前の復讐か」
「そうだね。あんたから全てを奪う事。もう家にも帰れないね。あんたと別れた後、俺は直ぐに警察に連絡する。警察は直ぐにあんたの自宅へ駆けつけるだろうね」
もう2度と、糸坂を祥子の元へは帰さないし、会わせることもさせないつもりだった。
「……逃げても無駄だと言うことか」
流石に観念したのか、糸坂は悔しそうに項垂れる。
健から逃げる事は出来ない。
武器が何もない以上、健を力で押さえつけないことぐらい糸坂でも分かっている。
弥之を殺した21年前とは違って、健に力でも勝てるわけがなかった。
「スマホを出せ」
健が右手を糸坂に差し出す。
健が言っている事が糸坂には理解できない。
「なぜお前に渡さなくちゃいけないんだ?」
「2度と家族に連絡できない様にだよ。最後くらい父親らしい事をして、21年前の罪を娘に償え」
「娘に何を償えと言うんだ?何も俺の役に立たなかった役立たずの娘だ!誘拐なんて生ぬるい事をするより、いっそ殺してしまえば良かったよ!」
糸坂の言葉に、流石の健も冷静ではいられなくなった。
糸坂の胸ぐらを掴み、左頬を殴った。
「……やっぱりあんたは外道だ」
健は糸坂のスマホを無理矢理奪うと、庭園の岩に思いっきり投げつけた。
「お前!何しやがる!」
糸坂は慌てて庭園に降りてスマホを手に取るが、もう画面も割れて電源が落ちていた。
糸坂の真っ黒なスマホの画面を見て健はほくそ笑む。
「これで誰にも助けを求められないな。これからは追い詰められる恐怖に怯えるがいい」
もうこれ以上一緒にいては何をするか自分でも自信がなくなり、健は糸坂を置いて料亭を出ると顧問弁護士に電話を掛けた。
「今、糸坂と別れました。今夜の会話もボイスレコーダーに録ってます。後のことは、よろしくお願いします」
そして健の依頼により、楜沢家の顧問弁護士は後日、21年前の弥之の再捜査の為に告訴した。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
月影館の呪い
葉羽
ミステリー
高校2年生の神藤葉羽(しんどう はね)は、名門の一軒家に住み、学業成績は常にトップ。推理小説を愛し、暇さえあれば本を読みふける彼の日常は、ある日、幼馴染の望月彩由美(もちづき あゆみ)からの一通の招待状によって一変する。彩由美の親戚が管理する「月影館」で、家族にまつわる不気味な事件が起きたというのだ。
彼女の無邪気な笑顔に背中を押され、葉羽は月影館へと足を運ぶ。しかし、館に到着すると、彼を待ち受けていたのは、過去の悲劇と不気味な現象、そして不可解な暗号の数々だった。兄弟が失踪した事件、村に伝わる「月影の呪い」、さらには日記に隠された暗号が、葉羽と彩由美を恐怖の渦へと引きずり込む。
果たして、葉羽はこの謎を解き明かし、彩由美を守ることができるのか? 二人の絆と、月影館の真実が交錯する中、彼らは恐ろしい結末に直面する。
双極の鏡
葉羽
ミステリー
神藤葉羽は、高校2年生にして天才的な頭脳を持つ少年。彼は推理小説を読み漁る日々を送っていたが、ある日、幼馴染の望月彩由美からの突然の依頼を受ける。彼女の友人が密室で発見された死体となり、周囲は不可解な状況に包まれていた。葉羽は、彼女の優しさに惹かれつつも、事件の真相を解明することに心血を注ぐ。
事件の背後には、視覚的な錯覚を利用した巧妙なトリックが隠されており、密室の真実を解き明かすために葉羽は思考を巡らせる。彼と彩由美の絆が深まる中、恐怖と謎が交錯する不気味な空間で、彼は人間の心の闇にも触れることになる。果たして、葉羽は真実を見抜くことができるのか。
密室島の輪舞曲
葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。
洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
おさかなの髪飾り
北川 悠
ミステリー
ある夫婦が殺された。妻は刺殺、夫の死因は不明
物語は10年前、ある殺人事件の目撃から始まる
なぜその夫婦は殺されなければならなかったのか?
夫婦には合計4億の生命保険が掛けられていた
保険金殺人なのか? それとも怨恨か?
果たしてその真実とは……
県警本部の巡査部長と新人キャリアが事件を解明していく物語です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる