インシデント～楜沢健の非日常〜

●目には目を歯には歯を●

1-3

家に帰った聡太は、どうすれば良いのかもう考えられなくなって来た。
聡太の両親や兄の純也は、まさか聡太が学校でいじめに遭っているとは気が付いていない。
聡太は何とか隠し通せていた。


　嫌だ。
　明日、学校に行きたくない。
　あいつらの前で、松下を襲うなんて無理だ。
　もう、学校なんて辞めたいッ！


追い詰められている聡太は、それでも両親にも兄にも相談できなかった。
知られるのが怖い。恥ずかしい。
今までは、後少しだと自分だけが耐えれば良いと思っていたが、博恵にまで被害が被るのはどうしても避けたかった。


　どうしよう。
　どうすれば良い？
　もう、学校を辞めた方がいいのか？


聡太は高校を卒業したら、専門学校に行くことになっている。
後数ヶ月で重夫達とも別れられる。
自分の人生を、中途半端に終わらせていいのか。
不登校になって卒業出来なかったらどうしようかと不安が募る。

「聡太、風呂入れよ」

先に風呂に入った純也が聡太の部屋の前で声を掛けた。

「聡太？」

返事がないので、寝ているのかと純也は聡太の部屋のドアを開けた。