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●アンビバレント●

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健のオフィスに大知がやって来た。

「飯豊賢一郎の事件の詳細だ」

健は大知が持ってきたファイルを受け取ると早速開く。

「……なるほどね」

一通り目を通して、賢一郎が現在、少年刑務所に収監されている理由が分かった。

「しかし、毎度こんなディープな内容をどうやって調べている?」

頼んでおきながら健は感心しながら尋ねる。

「企業秘密」

大知はニヤリと笑う。
大知の顔の広さに健は、こいつだけは敵に回したくないと思った。

「高槻って医者が鑑定医として賢一郎を担当していたんだな。こう言うものって、本当にたった数ヶ月で判断が付けられるものなのか?」

健は精神鑑定を信用していない。

「高槻は少年犯罪の第一人者だと言う話だ」

大知は健の質問に全て答えられるほど、賢一郎の事件を全て頭の中に記憶させていた。大知自身、この事件に興味があったのだ。
大知が調べた賢一郎の内容は、両親を殺害後に逮捕。警察からの取り調べが続いたのち、検察へ送致。その後検察での取り調べが終わり家庭裁判所へ送致されたが、その頃から失声症として、家庭裁判所とのやりとりは全て筆談で行い、警察で供述した通り、両親は自分が殺したと認めていた。
鑑定医の高槻は、賢一郎の失声症は両親を失ったことへのストレスと見解。
その後精神的に落ち着いたのか賢一郎の声は戻り、鑑定留置での鑑定結果で、賢一郎に精神障害は無いものと判定された。
家裁の少年審判は事件の重大性から、犯行当時16歳だった賢一郎の身柄を検察庁に逆送した。
1995年の刑法の一部改正により、刑法200条の尊属殺(両親、祖父母など、親等上位の者を殺害する事。殺人罪よりも罪は重く、死刑または無期懲役)は削除されていたため、賢一郎は検察から殺人罪で起訴された。
その後の裁判での判決に控訴はせず刑は確定し、懲役12年の実刑が言い渡され、少年刑務所に入所する事になったのだった。
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