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●人生の墓場●

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大知は懇意にしている、警視庁捜査一課の管理官、神城一成かみしろかずなりと、河川敷の公園で会っていた。
お互い離れたベンチに座り、事件の事を大知は神城に尋ねた。

「21年前の事件なもんで、残っている資料からしかもう詳細は分からん。被疑者死亡の事件だったし、罪状も横領と未成年者略取で、被害者の赤ん坊は無事に救出されていたからな」

ビルがあった新宿の所轄の警察署の事件だったために、警視庁のデータベースでは調べるにも限界があった。

「健の話では、ビルは、水島弥之が共同経営をしていた会社の所有だったそうだけど、もうその当時から廃ビルだったと聞いている」

同じ不動産業界の葵がそのビルの登記簿を取って調べ、当時の管理会社を調べたものの、外部から侵入できる場所はなく、全て内鍵が掛かっていたと証言していた。
それは、警察の調書と一致している。

「あのビルに入れるのは、管理会社が保管している鍵か、会社に保管している鍵を使うしかなかったそうだが、水島の所持品にそのビルの鍵はなかったそうだ。だが警察の調書では、水島が外階段からビルの中に侵入したと記している」
 
神城は、それが納得がいかない。
自殺する為に侵入したはずなのに、なぜ鍵を持っていなかったのにビルに入れたのか。

「だとしたら、どうやって屋上まで?鍵を持っていた糸坂が水島を呼び出して殺害したのでは?」

それしか考えられないと大知は思った。

「もちろん、自殺と他殺で捜査はされたが、その当時糸坂にはアリバイがあった。ただそのアリバイを崩すための、屋上に糸坂がいたと言う目撃証言は取れなかった。糸坂は、水島が自分でビルに入って投身自殺したんだと主張している。まさに、死人に口なしだ」

大知は当時の捜査状況がわからず、苦虫を噛み潰したような顔になる。
事件だけを考えれば、弥之に自殺する動機は確かにある。
ただ警察の捜査に、何か抜け落ちていたことがあったのではないかと思った。
しかしそれを想像だけで、大知は神城に言うことはできない。

「何か決定的な証拠を見つけない限り、この事件に進展はない」

神城の言うことは分かっている。
ただ21年も前の事件で、今更目撃情報を見つけるのは不可能に近かった。

「証拠か……あの夜、何があったんだ」

大知は、事件当時の目撃者を探すしかないかと、不可能でもやるしかないかと決めた。
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