すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第十四話

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次の日、茉理と絢斗は、1限が終わった休み時間に一哉の教室に行った。
一哉の姿を探すが、まだ一哉の姿はなかった。
臨は来ていたので、とりあえず茉理と絢斗はホッとした。

「臨。大丈夫?」

「茉理。うん。昨日茉理達が来てくれて落ち着いたら熱も下がったから。でも、一哉が来てないんだ。電話しても出てくれなくて。担任に理由聞いたけど、病欠だとしか教えてくれなくて」

本当に一体何があったのか。
こんな事は初めてなので茉理達は不安になった。
昨日、臨の家の帰りに、念のために一哉の家に行ってみたが、誰も出て来なかったので、茉理と絢斗は諦めて帰ったのだった。

「今日の帰り、一哉の家に行ってみるか」

流石の絢斗も心配になったようで、もう一度一哉の家に行く事になった。

「僕も行くッ!」

1番心配している臨も言う。
授業が終わるのが長く感じ、それぞれが早く一哉の家に行きたくて仕方なかった。

「誰もいないか。って言うか、こんなに休んでて、親は心配じゃねーの?」

絢斗がインターホンを鳴らしても誰も出てこないのでつぶやく。
流石にこの状況はおかしいと3人は思う。

「一哉の親って何時に帰ってくるかな」

茉理が絢斗を見て言う。

「さぁな。ねーちゃんもいるけど、ほとんど家に帰ってきてないって言ってたからな」

その情報は臨も知っている。

「仕方ない。もう少しここで待つか」

一哉のマンションの玄関の前で、3人は待つ事にした。
夏が過ぎたせいか、6時を過ぎると真っ暗になった。
いつまで経っても誰も帰ってこないので、流石に絢斗は今日は帰るかと思った時だった。

「何してんの?」

一哉の声に、3人はそっちを向く。
一哉が母親と一緒に3人の目の前に現れた。

「一哉!何してんのはこっちのセリフだよ!電話しても電源落ちてるし!」

怒鳴るように茉理が言う。

「あー。そうか。休んでたから心配して来てくれたんか。悪い」

「一哉。みんなに上がってもらったら?」

一哉の母親はそう言って玄関を開ける。

「みんな、心配かけてごめんね。今日、退院して来たものだから」

一哉の母親の言葉に3人は驚く。
健康優良児の一哉が入院していたと知り、驚きが隠せない。

「なんの病気だったの!」

臨が一哉の腕を握る。

「盲腸。今日、やっと退院できたよ」

一哉は笑顔で臨に言うが、その顔は辛そうだった。

「おばさん、俺と茉理は帰りますね。一哉が休んでた理由も分かったし」

絢斗は一哉と臨を2人きりにしようと考えた。

「学校、いつから来れんの?」

絢斗が一哉に尋ねる。

「明日から行ける」

一哉が答えると、茉理も絢斗もホッとした。

「じゃあ一哉、臨。また明日ね」

茉理と絢斗は気を利かせて、一哉の家を後にした。
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