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第十三話
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ベッドに腰掛けて茉理は向葵を見つめる。
「向葵君は、どうして俺が好きなの?女の子にだって十分モテるでしょ?」
どうして自分の周りは、女の子に不自由しないのに、男を好きになるのか茉理には理解できなかった。
「そうですね。確かに何人も告白してくれたし、付き合ったりもしました」
そりゃモテると分かっているが、自慢か。と茉理はちょっとムッとする。
「それなら俺を好きになるって変だよ。俺は男だよ?」
「分かってます。でも柳井先輩と付き合えるなら、俺も可能性はゼロじゃないと思った」
その理屈が茉理には理解できない。
茉理は今までのことを思い出して、フとある事に気がついた。
絢斗を敵視する向葵。絢斗を排除したいはずなのに、なぜ絢斗にこだわるのか。
向葵は茉理ではなく、絢斗を見ているような気がしてきた。
「………………もしかしてさぁ。向葵君て、絢斗に憧れって言うかなんていうか、そんな感情持ってない?」
茉理の言葉に向葵は茉理をジッと見つめる。
「なんかさ、向葵君が、無理して絢斗に張り合ってるようにしか見えないんだよね」
茉理の言葉に向葵は笑う。
「意外と鋭いんでびっくりですよ」
向葵は小声で呟く。
「だって分かるもん。向葵君が俺に好意って言うか、恋愛感情ないの」
茉理が言うと向葵は笑う。
「確かに、茉理先輩は可愛いです。守ってあげたいって思ったのは本当です。でも、俺は茉理先輩とキスしたいとかエッチしたいとか思わない」
向葵が本心を語る。
「ずっと柳井先輩を目標にしてきました。でも柳井先輩は茉理先輩しか眼中なくって。どうして男なんて好きになるんだってスッゲー腹も立ちました」
茉理は笑って誤魔化すしかできない。
「ずっと2人を見てきて、茉理先輩の事分かってきて、柳井先輩が好きになる理由も分かってきました。でも、俺の中でやっぱりなんか許せなくて。だったら、茉理先輩を俺のものにして、柳井先輩の目を覚まそうと思った」
「くっだらねーな」
絢斗の声がして、茉理と向葵はその声の方を見た。
「お前が俺に対抗心あんのは分かってた。って言っても茉理の事でな。でも何?本当は俺のファンだったって事?さっきの話、本当は俺を見ていたのに、俺が茉理を好きだったからムカついて茉理に手を出そうとした訳?」
ズケズケと言う絢斗を茉理は睨む。
「そう言う言い方酷いじゃん!憧れの先輩が、その、男が好きだって言うのが、ショックだったんだよ!」
茉理がムキになって言う。
「それ、お前が言うな。お前は俺の恋人なんだから」
絢斗の言葉に、確かに自分が言ってはいけないと思った。
勝手に向葵の気持ちを、当事者が代弁することではないと思った。
「素直じゃねーな。俺と仲良くしたいならそう言えば良いじゃん。あ、さっきの親の再婚話とか、本当は俺に優しくされたかったの?」
ニヤニヤして絢斗は言う。
再婚話?と茉理はなんのことだか分からない。
向葵は真っ赤になって悔しそうに絢斗を睨む。
絢斗と2人きりなった時、本心を吐露した事を言われて恥ずかしい。
「別に優しくなんてッ!さっきのは、つい言っちゃっただけでッ!って言うか、仲良くしたいですよ!柳井先輩は俺の憧れで目標ですから!」
急に素直になって絢斗は拍子抜けする。
茉理はその光景を見てクスクス笑う。
「なんだよ。急に素直になって気色わりぃ」
恥ずかしがって絢斗が言うと、茉理が絢斗と向葵の手を取って無理矢理握手させる。
「お、おいッ!」
焦る絢斗。
「はい!仲直り!」
天真爛漫は茉理の笑顔に、絢斗も向葵も何も言えなくなってしまった。
「向葵君は、どうして俺が好きなの?女の子にだって十分モテるでしょ?」
どうして自分の周りは、女の子に不自由しないのに、男を好きになるのか茉理には理解できなかった。
「そうですね。確かに何人も告白してくれたし、付き合ったりもしました」
そりゃモテると分かっているが、自慢か。と茉理はちょっとムッとする。
「それなら俺を好きになるって変だよ。俺は男だよ?」
「分かってます。でも柳井先輩と付き合えるなら、俺も可能性はゼロじゃないと思った」
その理屈が茉理には理解できない。
茉理は今までのことを思い出して、フとある事に気がついた。
絢斗を敵視する向葵。絢斗を排除したいはずなのに、なぜ絢斗にこだわるのか。
向葵は茉理ではなく、絢斗を見ているような気がしてきた。
「………………もしかしてさぁ。向葵君て、絢斗に憧れって言うかなんていうか、そんな感情持ってない?」
茉理の言葉に向葵は茉理をジッと見つめる。
「なんかさ、向葵君が、無理して絢斗に張り合ってるようにしか見えないんだよね」
茉理の言葉に向葵は笑う。
「意外と鋭いんでびっくりですよ」
向葵は小声で呟く。
「だって分かるもん。向葵君が俺に好意って言うか、恋愛感情ないの」
茉理が言うと向葵は笑う。
「確かに、茉理先輩は可愛いです。守ってあげたいって思ったのは本当です。でも、俺は茉理先輩とキスしたいとかエッチしたいとか思わない」
向葵が本心を語る。
「ずっと柳井先輩を目標にしてきました。でも柳井先輩は茉理先輩しか眼中なくって。どうして男なんて好きになるんだってスッゲー腹も立ちました」
茉理は笑って誤魔化すしかできない。
「ずっと2人を見てきて、茉理先輩の事分かってきて、柳井先輩が好きになる理由も分かってきました。でも、俺の中でやっぱりなんか許せなくて。だったら、茉理先輩を俺のものにして、柳井先輩の目を覚まそうと思った」
「くっだらねーな」
絢斗の声がして、茉理と向葵はその声の方を見た。
「お前が俺に対抗心あんのは分かってた。って言っても茉理の事でな。でも何?本当は俺のファンだったって事?さっきの話、本当は俺を見ていたのに、俺が茉理を好きだったからムカついて茉理に手を出そうとした訳?」
ズケズケと言う絢斗を茉理は睨む。
「そう言う言い方酷いじゃん!憧れの先輩が、その、男が好きだって言うのが、ショックだったんだよ!」
茉理がムキになって言う。
「それ、お前が言うな。お前は俺の恋人なんだから」
絢斗の言葉に、確かに自分が言ってはいけないと思った。
勝手に向葵の気持ちを、当事者が代弁することではないと思った。
「素直じゃねーな。俺と仲良くしたいならそう言えば良いじゃん。あ、さっきの親の再婚話とか、本当は俺に優しくされたかったの?」
ニヤニヤして絢斗は言う。
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「別に優しくなんてッ!さっきのは、つい言っちゃっただけでッ!って言うか、仲良くしたいですよ!柳井先輩は俺の憧れで目標ですから!」
急に素直になって絢斗は拍子抜けする。
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「なんだよ。急に素直になって気色わりぃ」
恥ずかしがって絢斗が言うと、茉理が絢斗と向葵の手を取って無理矢理握手させる。
「お、おいッ!」
焦る絢斗。
「はい!仲直り!」
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