すいぎょのまぢわり

五嶋樒榴

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第三話

5

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突然乱入してきた臨の弟の音は、臨と違って凛々しい顔つきのイケメンで、中学3年生だがもう身長も170以上はあった。

「部活はスポーツしてんの?」

一哉が尋ねると音は頷く。

「サッカー」

「へぇ。高校は九蘭?」

「ううん。本校に行くよ。そこまで頭良くないし、サッカー続けたいし」

一哉と音が仲良く話しているのが臨はつまらない。

「音。何か用だったの?」

臨が間に割って入る。

「母さんが臨に友達が来てるって言うから、家に連れてくるの初めてだし見に来た」

ニカッと笑って音は言う。

「そう言う言い方、失礼だろッ」

ムキになって臨は言う。

「あ、別に俺は気にしないよ」

一哉が音をフォローするのが余計に臨は面白くない。

「自分の部屋に帰れよ」

臨が音を邪魔にして部屋から出そうとする。

「どうせこれからゲームするんだろ?俺もやりたい」

無遠慮な弟に腹を立てながらも、一哉が嫌な顔一つせずに音の相手もしてくれるので、臨は余計に一哉に好感を持った。

「ごめんね、図々しくて」

家の外に出て一哉を見送りながら臨は言う。

「ぜーんぜん。楽しかったし。臨の部屋にも入れたしな。執事が居たのはびっくりしたけど」

世の中には、本物の金持ちがいるんだと一哉は驚いた。

「…………今度、一哉の家に遊びに行って良い?」

音に邪魔をされるのが嫌だった。

「いいけど、臨んちと違ってマンションだし狭いから驚くなよ」

クスクス笑いながら一哉は言う。

「別に、驚かないしッ。一哉の部屋、見たいし」

照れながら臨は言う。

「りょーかい。綺麗にしておくよ。いつくる?」

「いつでも!」

笑顔で臨が言うと一哉も嬉しそうに笑う。

「じゃあ、明日ヒマなら来いよ」

一哉が誘うと臨は頷く。

「明日行くッ。楽しみにしてよッと」

ワクワクしながら臨が言うと、臨の純粋さに一哉は新鮮な気持ちになる。
臨が生粋の世間知らずのおぼっちゃまだと分かり、臨を守りたいと思ってしまった自分の感情も納得できた。
ただ、さっき音が入ってこなかったら、自分が臨にしそうになったことを思い出すと恥ずかしくなる。

「今日は帰るな。また明日ね」

一哉はそう言うと右手を上げた。
臨も顔の横でバイバイと手を振る。
なんとなく気恥ずかしい気持ちのまま、臨は一哉を見送った。
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