田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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31ずるい・お誘い

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「おーい、田辺!」

目の前から、手を振りながら遥加が走り寄ってくる。
田辺は目を合わせないように遥加とすれ違う。

「って、オイッ!眼中に入れろッ!」

慌てる遥加。

「だが、断る」

冷静な田辺。

「あ!田辺!」

諭の声に田辺は直ぐに振り向き諭を見る。

「お昼一緒に食べるぅ?」

駆け寄る諭。

「良いですよ」

諭には優しい眼差しの田辺。

「オイコラッ!少しは俺にも優しくしろッ!」

ムッとしながら遥加が言うと、諭が遥加を見る。

「じゃあ、友部君も一緒にお昼食べる?」

にっこり笑って言う諭。
遥加はプリンセス姿の諭を思い出して赤面する。

「はい!是非ッ!俺、内名先輩とも仲良くしたいって思ってたんです!」

ご機嫌な遥加を見て田辺はイラつく。

「あうッ!いってぇ!」

田辺に、思いっきりケツを蹴り上げられて遥加は前のめりになる。

「なんだよ!何すんだよ!」

「用事があるなら10秒で済ませろ」

超絶不機嫌な顔の田辺。

「飲み会の」

「はい、終了。行きましょう、諭先輩」

遥加を残して田辺は諭を連れて行く。
諭は苦笑いで遥加に手を振る。

「ったくよぉ!付き合い悪ぃ!」

背後で遥加が吠えているが、田辺は一切無視をした。
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