田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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29ずるい・餌付け

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田辺が満足し切るまで抱き潰され、生まれたての仔鹿状態の諭のために、夕飯は田辺がピザをデリバリーした。

「少し激しすぎましたね。って甘え過ぎじゃないっすか?」

シャワーで身体も髪も洗ってもらい、髪をドライヤーで乾かしてもらう諭。

「だって、本当に力入らねぇんだもん。お土産だってまだちゃんと渡してなかった」

「あ、干物は冷蔵庫に入れましたよ」

諭の実家は海の近くで、干物も有名だったりする。

「ちっさいなぁ」

髪を乾かしながら田辺が呟く。

「ん?何が?」

「頭も小さいですよね。それなのに目がデカいから、リスみたいに見えるんだな」

「なにそれ」

諭は笑う。

「普通、動物に例えるなら、猫とか犬じゃないの?田辺、変わってる」

クスクス笑い続ける諭。

「俺、リスが好きなんですよ」

田辺は懐かしそうに話し始める。

「小学生の時、カナディアンロッキーで見た野生のリスが可愛かったんですよね。ちっちゃくて、スレンダーで、目がクリって感じで。連れて帰ってきたいってマジに思った。無理だったけど」

「それが俺に似てた?」

田辺は優しい顔で笑って諭の髪にキスする。

「はい。だから、諭先輩が余計に好きになったのかも」

今日はいつになく素直な田辺。
諭もそれに甘えたくなった。

「ねぇ」

「はい?」

「ピザ来たら、田辺が食べさせて」

「なんですか?それ」

「あーん。って俺に食べさせて」

ニコニコしておねだりする諭。
田辺は、リスに餌付けする自分が思い浮かんで吹き出しそうになった。
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