田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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12ずるい・好きです

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田辺の腕枕で横になっている諭。
どうすれば良いのか分からず諭の頭の中はプチパニックだった。

「田辺…………なんか言えよ」

「ん?何がですか?」

田辺は諭を見つめる。

「だって、ずっと黙ってるからさッ!」

ムッとしながら諭は言う。

「んー。抱き枕」

ムギューと諭を抱きしめる田辺。

「俺は、抱き枕じゃねーしッ!」

強く抱きしめられて焦る諭。

「抱き枕より抱きやすいです」

色っぽい目で田辺は言って、諭の頬を指先で触る。

「んッ!擽ってぇ」

諭は田辺の顔が近くて益々ドキドキする。

「すっぽり入る。俺の腕の中にぴったり」

「そう言うこと、言われると嬉しいし、安心する」

ん?と言う顔で田辺は諭を見る。

「田辺のそばに居ていいんだって思うからだよッ!」

照れる諭に田辺は微笑む。

「居なくちゃダメでしょ?ここは諭先輩の場所だし」

再びムギュッと田辺は抱きしめる。

「田辺のそう言うところ、本当に好き。俺を大事にしてくれてるって分かるもん。だーい好き」

少しずつ諭の緊張も解けて、素直に田辺に包まれる。
全て委ねたくなっていた。
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