田辺君はずるいから

五嶋樒榴

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6ずるい・晩ご飯

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外食ばかりは不健康だと諭が言ったせいで、再びコンビニでばったり会った田辺は諭に飯を作ってくれとおねだりする。

「食材は俺が準備しますから」

「それは良いけどさ、彼女に作ってもらえば?」

「今、彼女いないんで」

へ?と諭は思った。

「こないだ、その、バイト終わったら来るって言ってた彼女は?」

「諭先輩が帰った後にうち来て、なんか勝手に怒りだして、そのまま終わりました」

別れた理由が分からなくて諭はポカンとする。

「俺が自分が思っていた男じゃなかったから、付き合うのが嫌になったんじゃないっすか?」

別に気にもせずに田辺は言う。
それでも傷心してるかと諭は気になる。

「俺、長続きしないんで、別に気にしてませんよ」

「な、なんで、俺にそう言うこと言うの?別に、俺は!」

「だって、諭先輩の方が、気にしてるっぽい顔してるから」

クスッと笑って田辺は言う。
このたまに見せてくれる笑顔に、諭はキュンとなる。


は!
何、俺、こいつの笑顔にキュンてなった!
なんでこいつにキュンてなる!
同じ男にときめくとかありえねー!


「……………夕飯、いつ作りに行けば良いよ?」

気持ちを切り替えて諭は尋ねる。

「諭先輩が暇な時で良いっすよ。言ってくれれば材料買ってくるし」

「じゃあ、明日の夕飯作ってやるよ。炊飯器あんの?」

「一応。あ、米は無いんで買っておきます」

「わーった。飯は炊いておけ。材料は俺が買って行くよ」

「はい」

田辺がにっこり笑うと、諭は恥ずかしくてドキドキした。
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