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No.2 お茶漬けの味
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裕人の母親の話。
確かに裕人にしたら、犯人も許せないだろうが、母親のことも許せないんだろうと思った。
それが原因で女性恐怖症?って言うか女が怖くて。
傷を癒すのに、きっと時間がかかるんだろうな。
それでもさ、いつかは好きになった女が出来れば良いけどさ。
俺はそんなことを思いながら、後どれくらい、裕人をそばに置いておけるのか考えた。
18になったら、五島組の正式な構成員になるのだろうか。
だけど、それを俺が考えるのは、おかしなことなんだけどさ。
でも裕人には、五島組長の下で幸せになってもらいたいって思うんだよね。
次の日からも、裕人は素直に通ってきていた。
昨日あんな話をさせちまって、気まずいと思っていたのは俺だけだったようだ。
この店に通い始めて、だいぶ逞しくなってきたな。
この店だけでの裕人しか知らないが、世間をだいぶ知ってきたような気がする。
「お前、成長期?ここに初めて来た時よりだいぶ大きくなってね?」
隣に立つ裕人に言ってみた。
「そっすね。ズボンが短くなってる気がする」
俺は裕人の足元を見た。
うん。見事にツンツルテン。
「新しいズボン買ってやるよ」
「良いっすよ!もったいない。これぐらいなら全然いけるっす」
裕人は笑いながら言う。
「でも目線が変わったの気のせいじゃなかったんすね。最近、至さんが小さく見えてたんで、変だとは思ったけど」
「うっせーよ!黙れ」
俺はむかっとして恥ずかしくなった。
伊織は最初からデカかったから気にならなかったが、裕人は気がついたら、俺よりかなりデカくなったから気になる。
「って言うか、至さん、童顔だし、そのうち俺の方が年上に見えたり」
ふふふと裕人が笑う。
「ばーか。お前が俺より年上に見えるようになる頃には、今みたいに会えなくなってんだろ」
俺はそう言って笑う。
そう。
いつかはこの店に来なくなる。
寂しいけど仕方ねぇ。
裕人は五島組の人間だ。
「…………寂しいこと言わないでください。まだここに来れる間は、会えなくなるなんて言わないでください」
静かな声だった。
低い静かな声に、俺はフッと笑った。
「ああ、そうだな。当分、先だな」
そう言うのが、変だが精一杯だった。
確かに裕人にしたら、犯人も許せないだろうが、母親のことも許せないんだろうと思った。
それが原因で女性恐怖症?って言うか女が怖くて。
傷を癒すのに、きっと時間がかかるんだろうな。
それでもさ、いつかは好きになった女が出来れば良いけどさ。
俺はそんなことを思いながら、後どれくらい、裕人をそばに置いておけるのか考えた。
18になったら、五島組の正式な構成員になるのだろうか。
だけど、それを俺が考えるのは、おかしなことなんだけどさ。
でも裕人には、五島組長の下で幸せになってもらいたいって思うんだよね。
次の日からも、裕人は素直に通ってきていた。
昨日あんな話をさせちまって、気まずいと思っていたのは俺だけだったようだ。
この店に通い始めて、だいぶ逞しくなってきたな。
この店だけでの裕人しか知らないが、世間をだいぶ知ってきたような気がする。
「お前、成長期?ここに初めて来た時よりだいぶ大きくなってね?」
隣に立つ裕人に言ってみた。
「そっすね。ズボンが短くなってる気がする」
俺は裕人の足元を見た。
うん。見事にツンツルテン。
「新しいズボン買ってやるよ」
「良いっすよ!もったいない。これぐらいなら全然いけるっす」
裕人は笑いながら言う。
「でも目線が変わったの気のせいじゃなかったんすね。最近、至さんが小さく見えてたんで、変だとは思ったけど」
「うっせーよ!黙れ」
俺はむかっとして恥ずかしくなった。
伊織は最初からデカかったから気にならなかったが、裕人は気がついたら、俺よりかなりデカくなったから気になる。
「って言うか、至さん、童顔だし、そのうち俺の方が年上に見えたり」
ふふふと裕人が笑う。
「ばーか。お前が俺より年上に見えるようになる頃には、今みたいに会えなくなってんだろ」
俺はそう言って笑う。
そう。
いつかはこの店に来なくなる。
寂しいけど仕方ねぇ。
裕人は五島組の人間だ。
「…………寂しいこと言わないでください。まだここに来れる間は、会えなくなるなんて言わないでください」
静かな声だった。
低い静かな声に、俺はフッと笑った。
「ああ、そうだな。当分、先だな」
そう言うのが、変だが精一杯だった。
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