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クラブケーキオランデーズソース・ビターピールの香り

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スマホが鳴って、広重はドキンとした。
手に取ると相手は亮だった。

「もしもし」

『俺だけど。今日、会社戻ってから疲れてたから』

広重はどんな会話をして良いか分からなかった。

「ごめん、心配かけて」

『オーシャンで何かあった?村瀬さんと犬神さんのことで、引っかかってるんだろ?』

亮には嘘がつけないと思った。
ただ、告白して、フラれたとは言いたくなかった。

「大丈夫だよ。それより、ごめん。亮の気持ち、中途半端にして。俺のこと、好きになんかなるなよ」

『……………好きって気持ちは、どうしようもないじゃん。それに俺はお前が俺を好きになるって分かってるし』

亮の言葉に広重は笑う。

「その自信、どっから来るんだよ、まったく」

『迷惑か?迷惑なら、諦める』

ズルいなと広重は思った。
迷惑だなんて正直思ってない。
ただ、応えられない自分がどうすれば良いのか分からない。


ズルいのは俺だ。
なんではっきり言えない?
迷惑だって言えば終わるのに、前みたいに、亮を嫌いになれない。
仕事だけのギスギスした関係ではなくなってしまったから。


「俺、犬神さんに告った。もちろんフラれたけど。でも、後悔はしてないし、チャンスがあれば付き合いたい。そんな俺を亮は好きって言えるの?」

結局広重は亮に告白した。
自分の気持ちをはっきり伝えようと思った。

『うん、好きだよ。だって、お前の気持ち分かるし。お前が犬神さんを諦められないように、俺も諦められない。ずっと好きだったから余計に諦めたくない』

亮の素直な言葉に、広重は言い返す言葉が見つからない。

『でも、本当に迷惑なら言って。俺の気持ち重いとか、鬱陶しいなら。ちゃんと言ってくれないと俺も分からないから』

亮の言葉に広重は考え込んだ。
確かに亮の気持ちは重い。
待っていられても辛い。
でもそれを言えるほど広重は強くなかった。
ズルいと分かっていながら、良い子でいたかった。

「どうして良いか分かんないよ。俺、今みたく亮と仲良くしたいって気持ちもある。でも、お前の気持ちは受け入れられない。どうして良いか分かんないんだよ。ただの友達でいたいのに」

本心だった。
友達ではいたい。
でもそれを亮が受け入れられるかは、亮の問題だった。

『やっぱり、そう簡単には気持ちって整理できないよな』

亮は広重とのキスを思い出していた。
全てはあの時から始まった。
でも、広重が好きな相手は、他の男。

『なあ。犬神さんを抱きたい?』

亮の質問に広重はドキドキした。

「……………正直分からない」

『じゃあ、俺のことは?抱いてみたい?』

「な、何、言ってんだよ!そんなこと思ったら、俺、マジ最低なやつじゃん!」

広重の答えに亮はなんとなくホッとした。
抱きたくないと言われなかったのが嬉しかった。

『最低でも良い。俺はお前に抱かれたい』

亮の言葉に広重はドキドキが止まらない。

「そんなことできないよ!」

『分かってる。でも、広重が欲しい。ごめん、我慢できないの俺だったわ』

広重はもうなんて言って良いかわからない。
亮を刺激してしまったと思った。

『まだ拒否されなくて良かった。また明日、会えるの楽しみにするよ。好きだよ』

亮が可愛く思えてきて広重はドキドキした。
いつから自分は男にときめくようになったんだと不思議だった。
村瀬と貴彦の関係を知って、自分の中に眠っていた、なにかを目覚めさせられた気がした。
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