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sette

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水帆と貴一はその後も六本木の鴉の分析を行い、どの様な副作用が発症するかを実験しながら進めていた。
検証結果が集まり、水帆は警察庁時代の親しい知り合いに六本木の鴉の実物とデータを渡した。

「これの入手経路は詮索しないで欲しい。ただ、先日俺が警察庁へ提出した合成麻薬と全く同じ物だ。これが成分分析結果。知り合いの情報屋から聞いたんだが、愚嵐怒ってグループがさばいている様だ」

入手経路も情報屋も、もちろん疾風である。

「全く。お前はなんでそう都合よくなんでも引きが強いんだかね」

笑いながら知り合いの男は言う。

「さあ。色々持ってんじゃね?」

水帆も笑う。

「愚嵐怒の件は、警視庁の組対も押さえてはいるんだが、その薬を売買していたと思われるサイトはもう閉鎖していて、アジトを今、血眼に探し回っていると警視庁の知り合いからは聞いている」

やることがおせーよ。と思いながら水帆は笑う。
ただサイトがもう閉鎖してるなら現物の入手経路も詮索されようがないと思った。
水帆が女子高生の劇症肝炎の薬害を、謎の合成麻薬として警察に報告だけしていたら混迷していただろう。愚嵐怒に行き着いていても証拠品が無ければ検挙はできない。
疾風が六本木の鴉を水帆に持ち込んだおかげで最悪のケースを防げたことになる。
実物の六本木の鴉が警察の手に渡ったことにより、材料の入手経路を辿れば、愚嵐怒へ繋がるのも時間の問題だと思った。
伊織の耳にも、ミノルが警視庁のパソコン内の捜査記録から入手した情報で、六本木の鴉が警察とマトリの捜査網に入ったと知り、疾風に送って正解だったと思う。

「順調に行ってる感じだな」

『だね。タイミングよく、別件の合成麻薬絡みの解剖案件があったからね』

電話の相手はミノル。
ミノルが水帆が行った病理解剖を知っていると言うとは、それも全て警察から抜き取った情報だった。

「それも六本木の鴉が原因だったから、きっと奴は自分の元に送られたブツと一致して小躍りしたんだろうな」

写真でしか見たことのない疾風を、楽しそうに伊織は浮かべる。

「つーか、サイト強制閉鎖させたのお前だろ?」

ミノルが、愚嵐怒が作ったサイトにウイルスを仕込んで消した事を言っている。

『なんのこと?』

笑いながらミノルは言う。
恐らく、警察に六本木の鴉の使用者の情報が流れないように、ミノルがしたと分かっている。

「白状しろよ。あまりにも都合よくサイトが閉鎖されたからな」

伊織が問い詰めるとミノルはふふふと笑う。

『愚嵐怒があのサイトの管理者だと言う情報だけ分かれば、警察はそれで十分だろ。死人が分かっているだけでふたり出たんだ。今頃六本木の鴉を使った奴は怯えてんだろうな。誰だって死にたくないだろ?公になる前に病院に行く時間をくれてやったんだ』

こう言うところはミノルは人間味があると、伊織が機械的じゃないミノルに信頼を寄せる要因だった。 

「後はどこまで愚嵐怒を解体できるかだな。蜥蜴の尻尾切りだと思うが」

愚嵐怒は元々組織であって組織でないグループ故、リーダーと言われる木村が捕まっても、存在そのものが謎に包まれている八神は捕まらないだろうと伊織は思っている。

『それは警察の仕事でしょ。さて、俺の仕事は終わりだよ。もう寝る』

伊織の返事を聞かずにミノルは電話を切った。伊織はスマホを見つめて苦笑した。
その数日、伊織の読み通り愚嵐怒の裏のリーダー八神以外の、リーダーの木村と幹部達が逮捕された。
ただ自分たちは、正体の分からない人物から指示され六本木の鴉を捌いていたと供述する。
もちろんその真偽はこの先の捜査によるが、木村自身、八神のことを分かっていない以上、どこまで追えるかは謎だった。

「リーダーを捕まえても、八神が捕まらない以上、本当の意味での愚嵐怒の解散にはならんね」 

真幸のオフィスに来ている伊織に真幸は言う。

「ただ、しばらくは活動も縮小されんだろ。後の叩きは政龍組の腕の見せ所だろ?」

ふふふと笑って伊織が言うと、真幸は煙草を咥えて火をつける。

「まぁな。でもジュリも喜んでただろ?見返りは何なの?」

興味本位で真幸は尋ねる。

「さぁな。出世払いらしーよ」

伊織が戯けて言うと、そんな物期待してねーくせにと真幸は鼻で笑う。
伊織は今回の解決の一役に、疾風も噛んでいることを真幸に告げられない。
真幸が壊れた時のことを、その原因が自分だと分かっているからだ。
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