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cinque

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真春はもう春休みに入っていたが、工と会う口実を作るためにバイトを始めていた。その送り迎えを工にさせていた。

「真春さんの大学で、六本木の鴉って聞いたことありますか?」

工から話しかけることがほぼないので、話しかけられて真春はびっくりして工を見る。

「六本木の鴉?何かのお店?」

見当違いの返事に、真春は知らないんだと理解した。

「いえ。ドラッグの一種です」

ドラッグと聞いて、真春はピクッとする。

「どうしたの?急にそんなこと聞くとか」

不審がって真春は尋ねる。

「俺と真春さんが出会った場所を覚えてますか?」

自分の質問を無視さてれ真春はムッとしたが、工の問いに素直に頷く。

「覚えてるよ。新宿のあの場所」

「あの時俺は、組のシマの様子を見に行ってたんですよ。最近は半グレ集団がやりたい放題やってはシマを荒らすもんでね」

工が何を言いたいのか真春は理解できない。
どう聞いても、自分との出会いの思い出話ではない事は理解した。

「その半グレ集団、愚嵐怒って奴らですが、六本木の鴉と言うドラッグを資金源にしているようなんです」

これで質問の意図が繋がるのかと真春は思った。

「六本木の鴉と言うのは、高校生、大学生を中心に広まってます。それを今、頭が潰そうとしてるんですが、なかなか使用者と接触ができません。真春さんに協力してもらいたいと思って」

工が協力して欲しいと言うなんて、珍しすぎて真春は嬉しくなる。

「協力するよ!何をすればいいの?」

嬉しそうに真春は言う。工はため息をつく。
停車できる場所に車を止めると、後部座席の封筒を手に取る。

「はしゃがないでください。遊びじゃないんです。このリストの中で知っている名前はありますか?もし親しい友達がいたら、六本木の鴉を知っているか聞いてみてください。もし接触したがる人物がいたら報告してください。勝手な判断はしないでください」

工は説明をすると真春に封筒から出したリストを渡した。
真春用に、東京、神奈川、千葉、埼玉に住所のある、年齢は18歳から22歳の男女の氏名が載っているリストだった。
真春が知っている名前があれば、そこから招待をしてもらおうと言う考えだった。
真春は工に頼まれたのも嬉しかったが、探偵みたいでワクワクしてきた。

「ワクワクしない」

工に釘を刺されて真春は照れ笑いをする。

「六本木の鴉を購入するにはサイトを利用するんですが、そのサイトは招待制なんです。どうやって招待されているのかが知りたいんです。それさえ分かれば任務終了です」

淡々と工は語る。

「分かったよ!リストを今夜から目を通すね!もしヒットしてもドラッグじゃそう易々と話してくれる人がいるかわかんないけど」 

どうしようか考えながら真春は言う。

「とにかく深入りは禁物です。数日探って何も情報を得られなければ終了します。良いですね?」

真春は頷く。少しでも工の役に立って、工に喜んで欲しかった。

「深入りしないと言う約束を破ったら、もう送り迎えは終了です」

「そんな!」

咄嗟に真春は言う。

「約束を破る気ですか?」

工が厳しい顔で睨みながら聞くと真春はしょんぼりする。

「だって、工の欲しい情報でしょ?少しぐらい危険でも情報を集めたい」

真春の言葉に、工はこれだから嫌だったんだと心の中で思った。

「何も情報が得られなくても良いです。約束は守ってください。守ってくれたら、一日中お付き合いしますから」

ご褒美があると聞くと、真春は目を輝かせた。

「分かった!約束もちゃんと守る!だから工もちゃんと約束守ってよ!」

嬉しそうな真春を見ると工はため息しか出ない。
でもそうでも言わないと真春が暴走しそうで怖かった。
嬉しそうにリストを眺める真春の横顔を見ながら、工は頭痛までしてきた。
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