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quattro
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工は真幸の要望通りに、共に六本木のクリスマスイルミネーションに訪れていた。
「いつもどっかしらのパーティでどんちゃん騒ぎで終わってたが、こう言うのも良いもんだな」
物珍しそうに真幸は笑いながら言う。工は直ぐ後ろについている。
「お前は?クリスマスデートってあるのか?」
ニヤついて真幸は尋ねる。工は首を振った。
「そうだよな。男同士でクリスマスデートもねぇか」
今日の真幸は上機嫌の様に見えてどこか寂しげだと工は思った。
自分では役不足だと分かっている。
別に工と、クリスマスイブを楽しみたいと真幸が思っているとは思っていない。
真幸の心の隙間を、ただ埋めるだけの存在だと工も分かっている。
「なんかさ、孤独なんてどうでも良いって思ってた。だけどさ、一度でも温もりを知っちまうと、寒さに勝てなくなるな。これが寂しいってやつか?」
儚げに見える、綺麗な顔の真幸を見ているだけで工の心はざわつく。
この人を温めてあげたい。
この人の望む事は全て叶えてやりたい。
だけど、俺には無理だ。
俺の心の中に乙也がいる様に、この人の心の中には……………。
工は真幸の問いにフッと優しく笑った。
「きっと、そうだと思います。たまには寂しいって思うのも良いのでは?頭は弱音を吐かない人だから」
工がそう言うと真幸はあははと笑う。
「やっぱりお前と来て良かったよ。くだらねぇ事考えなくて済む」
真幸はイルミネーションを見つめた。
「しかし寒いな。あったけー物飲みたくなった」
真幸がそう言ったときだった。工のスマホが鳴る。
工は誰からかと着信を見ると真春だった。
確認してそのままポケットに戻して無視をする。
「出なくて良いのか?」
「大丈夫です」
また鳴る。
工は確認すると次は直ぐに切った。
そしてまた鳴る。
もう音を消す。
「ストーカーか?」
相手が真春だと分かってわざと真幸は言う。
「スマホ貸せ」
真幸が右手を工に伸ばした。
工はロックを解除して真幸に渡す。
真幸は無言で電話をかけた。
『工!今、どこ?』
嬉しそうな真春の声が聞こえてきて、真幸はフッと笑う。
「どこ?じゃねーんだよ。しつけー電話してくじゃねぇ」
電話の声が真幸だったので真春は固まった。
『なんで工の携帯から?工は一緒なんですか?』
真春の問いに真幸は工を見つめる。
「工の所有者は俺だ。工の全ては俺のモンなんだよ。横からちょっかいを出すな」
真幸の威圧的な声に真春は怯む。真幸はプツッと切ると工にスマホを返す。
「行くぞ」
真幸に工は大人しく後に続いた。
何も言う事はなかった。
自分は真幸の物だと認められたのが嬉しい。
真春は真幸との通話を終え、工がやはり真幸と一緒にいることに嫉妬していた。
しかも工からの電話に真幸が出た事がたまらなく嫌だった。
屋敷に戻ると真春は無言で車から降り、自分の部屋に駆け込んだ。
どこかで期待していた自分が滑稽だった。
工に家にいて欲しかった。
分かってる。
分かってた。
あいつが俺を受け入れないのは。
でも、どこかで、クリスマスだからって、馬鹿みたいに意識して、何かがあるんじゃないかって。
あるわけないじゃん!
真幸と一緒なんだから。
真春は枕に顔を埋めて愚かな自分を笑った。
どんなに拒否されているか分かっても、真幸から工を奪いたかった。
いつか大笑いした工の笑顔を思い出してキュンと切なくなる。
子供扱いしかしない工に真春は夢中になっている。
あの大きな身体に包まれたい。
工に大事にされたい。
工を大事にしたい。
俺を受け入れて。
男しか愛せないなら、俺を愛して。
工になら、何されても良い。
寝ても覚めても工のことばかりだなと真春はため息をつく。
工が真幸にシていることを想像もできないほどに。
「いつもどっかしらのパーティでどんちゃん騒ぎで終わってたが、こう言うのも良いもんだな」
物珍しそうに真幸は笑いながら言う。工は直ぐ後ろについている。
「お前は?クリスマスデートってあるのか?」
ニヤついて真幸は尋ねる。工は首を振った。
「そうだよな。男同士でクリスマスデートもねぇか」
今日の真幸は上機嫌の様に見えてどこか寂しげだと工は思った。
自分では役不足だと分かっている。
別に工と、クリスマスイブを楽しみたいと真幸が思っているとは思っていない。
真幸の心の隙間を、ただ埋めるだけの存在だと工も分かっている。
「なんかさ、孤独なんてどうでも良いって思ってた。だけどさ、一度でも温もりを知っちまうと、寒さに勝てなくなるな。これが寂しいってやつか?」
儚げに見える、綺麗な顔の真幸を見ているだけで工の心はざわつく。
この人を温めてあげたい。
この人の望む事は全て叶えてやりたい。
だけど、俺には無理だ。
俺の心の中に乙也がいる様に、この人の心の中には……………。
工は真幸の問いにフッと優しく笑った。
「きっと、そうだと思います。たまには寂しいって思うのも良いのでは?頭は弱音を吐かない人だから」
工がそう言うと真幸はあははと笑う。
「やっぱりお前と来て良かったよ。くだらねぇ事考えなくて済む」
真幸はイルミネーションを見つめた。
「しかし寒いな。あったけー物飲みたくなった」
真幸がそう言ったときだった。工のスマホが鳴る。
工は誰からかと着信を見ると真春だった。
確認してそのままポケットに戻して無視をする。
「出なくて良いのか?」
「大丈夫です」
また鳴る。
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そしてまた鳴る。
もう音を消す。
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「スマホ貸せ」
真幸が右手を工に伸ばした。
工はロックを解除して真幸に渡す。
真幸は無言で電話をかけた。
『工!今、どこ?』
嬉しそうな真春の声が聞こえてきて、真幸はフッと笑う。
「どこ?じゃねーんだよ。しつけー電話してくじゃねぇ」
電話の声が真幸だったので真春は固まった。
『なんで工の携帯から?工は一緒なんですか?』
真春の問いに真幸は工を見つめる。
「工の所有者は俺だ。工の全ては俺のモンなんだよ。横からちょっかいを出すな」
真幸の威圧的な声に真春は怯む。真幸はプツッと切ると工にスマホを返す。
「行くぞ」
真幸に工は大人しく後に続いた。
何も言う事はなかった。
自分は真幸の物だと認められたのが嬉しい。
真春は真幸との通話を終え、工がやはり真幸と一緒にいることに嫉妬していた。
しかも工からの電話に真幸が出た事がたまらなく嫌だった。
屋敷に戻ると真春は無言で車から降り、自分の部屋に駆け込んだ。
どこかで期待していた自分が滑稽だった。
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分かってる。
分かってた。
あいつが俺を受け入れないのは。
でも、どこかで、クリスマスだからって、馬鹿みたいに意識して、何かがあるんじゃないかって。
あるわけないじゃん!
真幸と一緒なんだから。
真春は枕に顔を埋めて愚かな自分を笑った。
どんなに拒否されているか分かっても、真幸から工を奪いたかった。
いつか大笑いした工の笑顔を思い出してキュンと切なくなる。
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工に大事にされたい。
工を大事にしたい。
俺を受け入れて。
男しか愛せないなら、俺を愛して。
工になら、何されても良い。
寝ても覚めても工のことばかりだなと真春はため息をつく。
工が真幸にシていることを想像もできないほどに。
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